伊藤万理華インタビュー
書籍「LIKEA」と展覧会三部作の最終章へ向けて思うこと

2022.12.02

壮大になりすぎて。熱を注いで消耗して、ちょっと涙が

ー印象的なエピソードはありますか?

制作のスタートは、2日間で40ルックのファッションシューティング。4月くらいにパルコさんの社内にあるワンフロアを借り切って、フォトスポットを4つ作り、衣装部屋も仕切りがなく服がいつでも全部手にとって見えるようオープンな状態にして撮影準備完了。その場でスタイリストのTEPPEIさんに即興でスタイリングを組んでもらうというチャレンジをしました。そこに自分の私服をミックスしながら。

 その過程でどんな会話が生まれるかっていうのを知りたかったから、その場で録音テープを回しました。“じゃあ次これにしようか”とか、“でもこれじゃなくてもいいか”っていうちょっとした会話なんだけど、私はそれが好きなので。なので少しだけそんな会話も入れました。後からのインタビューでは生まれない会話になるんですよね。くだらない会話も入っているけど、そこに何か発見があって。その臨場感がリアル。撮影は2日間即興で40ルック。無謀なチャレンジだったのが想像を超えて、壮大になりすぎて。ここまで熱を注いで消耗して、ちょっと涙が。

私は、お芝居の中でしか感情を出すことがなかったので、写真でこのような感情を出したのは初めてだったんです。昔、ソロ写真集をつくった時も、そういうことはあったんですけど、それ以来。だけどそれ以上の衝撃でした。最初に企画していたものよりも思いが深くなりました。

 始めは、ここ数年で出会った憧れの人たちや好きな友達とやろうと企画していたのですが、ここ数年どころか、10年だ!となりました。そして、ここ10年の中で特に自分にとってのキーパーソンは誰だろうってなった時、演出家の根本宗子さんはすごく大切な存在でした。根本さんはとても多忙なのに、仕事の合間に二人で旅行に行ったりして交友を深めました。深まりすぎました(笑)そんなことも、リアルなレポートみたいな感じで書いてくださっています。それも多分、普通の本では書けないもの。

ー特に思い出深いページを教えて下さい。

後は、この「SOMETHING GOING ON 何かが起きている 」というページですが、見ただけでは何かわからないですよね。このページができたのにはまた別のきっかけで、2年前にメンズ服のアーカイブが並ぶ友達のポップアップに行ったのですが、そこですごく感銘を受けたんです。小さなギャラリーの空間に、オーナーがいて、服と一緒に本も並んでいて。私はそのギャラリーを俯瞰していて、ジャンルレスに集まってくる人がそこで出会い、交流するこの空間が好きなんだ!と思ったんです。

SOMETHING GOING ON」というタイトルですが、まさに、何かが起きる前兆みたいな場所を作ることが自分のやりたかった事なのかもしれない!と気づきました。それで、仲良くなったオーナーの方と企画を立てて、7月に3日間だけのゲリラPOPUPを渋谷にあるkit galleryでやりました。前から、古着を自分でリメイクして、それを売ったりしてみたかったんです。シルクスクリーンでお気に入りの絨毯の写真を刷ったり、家でミシンをかけたりしました。

 この仕事をしていると、ゼロから何かを作るってなかなか難しいのですが、絶対やるんだ!って気持ちでゼロから作って物を売るんですが、私は全部売りたいということよりも、どんな人が来て、どんなものに興味を持って、誰と仲良くなって、次に何が生まれるか?という過程を見たかったんです。「SOMETHING GOING ON」のページの写真は私が撮って来た人をスナップしてコラージュしました。誌面内に説明はありませんがそんな思いで準備した重要トピックです。

オマージュにも見えるようで、全然新しい。自分だからやってもらえるコーディネート

ーファッションシューティングで撮った全40ルックの中で、特にお気に入りのルックを教えてください。

どれも好きですが、ジャンポール・ゴルチエのスリーピースにヴィヴィアン・ウエストウッドのブラウスと、ワールズエンドのブルゾンを合わせたスタイリングかな。私、ワールズエンドともすごく縁があって、母の影響でとても好きなんです。靴は私物のドクターマーチン×ヨウジヤマモトで、ネックレスは母のもの。これはここでしかできないコーディネート。オマージュにも見えるようで、全然新しいんですよ。初日にこれが完成してうお!これやばい!となりました。好きが全て詰まっています。

Direction,Styling:TEPPEI
Photography:Masaya Tanaka
Hair:Yusuke Morioka
Makeup:Asami Taguchi

スリーピーススーツ(Jean Paul GAULTIER) ブラウス(Vivienne Westwood) MA-1 ブルゾン(Worlds End) ブーツ( Dr.Martens × Yohji Yamamoto)伊藤万理華私物 ネックレス 伊藤万理華・母私物

ウルトラセッションですね。ほんとうにかっこよくて。それに、私が持っている服でなかなか着られなかったものを、うまくスタイリングに使って消化してもらった感じですね。今思うと何でこれ買ったんだろうっていう服さえも。集めてた甲斐があって無駄にならなくてよかった!その時欲しい!って思ったということは、ときめく何かがあって心惹かれたはずだからね。民俗調のものと、現代のものとの組み合わせも凄く昔から自分が好きだったものだし。ストリートなダッドシューズと、ヴィヴィアンを合わせるのも最高だし。自分だからやってもらえるコーディネート。TEPPEIさんらしくて、唯一無二になりました。全部好きです。ヤバいですね(笑)。

ー普段伊藤さんが服をスタイリングしたり、アイテムを選ぶ時の基準はありますか?

理由はないです。感覚がときめいたら。私『装苑』で「ときめき録」っていうコラム連載をやらせて頂いてたんですけど、あの時期から、好きなものをちゃんと深掘りするようになったんです。あのタイトルいいなって、当時から思っていて、連載が終わった今も、心が動くものとかときめくものって、凄く重要じゃん!って思っています。日常的に好きだなって思えるモノを集めることが、本当に自分を形成していると思いますね。

ー今、伊藤さんがときめくことはなんですか?

何だろう??ずっと思っている最近の夢は、自分が運営する人との交流の場を作りたいんです。場所さえ作ったら、ちょっと違う段階に行けるかなと思ったりしていて。仲間を集めて、できたらいいなと思っています。それって多分、この本を作らなかったら分からなかったかもしれません。

撮影の様子

photographs : Jun Tsuchiya(B.P.B.)

stylist:Hiromi Nakamoto

hair&make : Kana Setoyama

『 MARIKA ITO LIKE A EXHIBITION LIKEA 』

期間:2022年12月2日(金)~12月19日(月)
会場:渋谷PARCO B1F 「GALLERY X BY PARCO」(東京都渋谷区宇田川町15−1)
営業時間:11:00~21:00 ※入場は閉場時間の30分前まで
入場:700円(税込) ※小学生以下無料

WEB: https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=1111

主催:パルコ 企画制作:パルコ 協力:乃木坂46合同会社
空間設計:福田哲丸/設計施工:林武広/AD:畑ユリエ /美術演出:A.N.D. 西山藍、 NAZE、 アレキサンダージュリアン参加クリエイター
TEPPEI(スタイリスト)/田中雅也(フォトグラファー)森岡祐介(ヘアスタイリスト)/田口麻美(メイクアップアーティスト)/根本宗子(劇作家・演出家)/井口弘史(グラフィックデザイナー)/畑ユリエ(デザイナー) /ほか

会場では書籍『LIKEA』の先行販売に加え、オリジナルTシャツやトートバックなど全11種のオリジナルグッズ、アパレルブランド「BODYSONG.」コラボアイテムを販売!

書籍『LIKEA(ライカ)』

タイトル:LIKEA(ライカ)
著者:伊藤万理華
仕様:B4判変型/152頁
定価:3,300円(税込) 
発売日:2022年12月20日 ※12/2会場先行発売
ブックデザイン:坂脇慶/飛鷹宏明
発行:PARCO出版
URL: https://publishing.parco.jp
クレジット表記:©︎2022 Marika Ito

参加クリエイター
TEPPEI(スタイリスト)/田中雅也(フォトグラファー)/森岡祐介(ヘアスタイリスト)/田口麻美(メイクアップアーティスト)/根本宗子(劇作家・演出家)/SOMETHING GOING ON/CO¥OTE(漫画家)/井口弘史(グラフィックデザイナー)/田中かえ(イラストレーター) /畑ユリエ(デザイナー)

本書ステートメント
何かが生まれる瞬間に自分が少し作用していることも、 心の中では大きなことなのかもしれない。 好きの対象が一方的な憧れだけじゃなくて、 少し触っている感じ、 渦中に、 近く感じることが嬉しいし、 これからもそうありたい。


伊藤万理華(俳優)Marika Ito●1996年、神奈川県出身。2011年から乃木坂46一期生メンバーとして活動し、 17年に同グループを卒業。 現在は俳優として映画・ドラマ・舞台で活躍する一方、 PARCO展「伊藤万理華の脳内博覧会」(17)、 「HOMESICK」(20)を開催するなど、 クリエイターとしての才能を発揮。 2021年は地上波連続ドラマ初主演「お耳に合いましたら。 」(TX)に出演。 初主演映画『サマーフィルムにのって』(松本壮史監督)ではTAMA 映画賞にて最優秀新進女優賞を、 日本映画批評家大賞にて新人女優賞を受賞。 待機作に今冬公開予定の映画『そばかす』(玉田真也監督)がある。
WEB:https://itomarika.com/s/m03/?ima=4212

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