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𠮷田恵輔×岸井ゆきの 映画『神は見返りを求める』から始まる、
”承認欲求”についての尽きない話

私が怖いなと感じるのは、載せるための行動をすること。生活の上にSNSがあるんじゃなくて、SNSの投稿のために生活をするようになってしまうという。──岸井ゆきの

俺は、監督やってなかったらめっちゃSNSをやってたと思う。──𠮷田恵輔

映画『神は見返りを求める』より

――田母神が暴露系YouTuberの「God T.」化するシーン等、部屋のぐちゃぐちゃな背景や衣装も非常に効いていました。

岸井:「Hawaii」キャップもいいですよね。

𠮷田:あれ、実は作ってもらっているんですよ。「覆面の上にキャップをかぶるんだけど、できれば『Hawaii』って書いてあってほしい」と頼んだら、衣装部がデザインしてくれて。何でそれをかぶってるのかわからないけどいつも「Hawaii」キャップをかぶっている奴が襲い掛かってきたらめちゃくちゃ怖いなと思って(笑)。

――田母神とゆりちゃん、もっというと本作の根底には「承認欲求」がありますよね。田母神はゆりちゃんに対する承認欲求で、ゆりちゃんは他者に対する承認欲求が肥大化していく。これは何も映画の中に限ったものではないと思いますが、おふたりは承認欲求が加速している現状をどう感じていますか?

𠮷田:正直言うと、危険だとは思います。「いいね」の数だけその人に価値があるように見えちゃうけど、本当の価値はそこにはない。それにとらわれることによって人を陥れる道具にもなるし、比べあって競争して何か残ったっけ?と思ってしまう。あくまでお遊びの延長にとどめておいたほうがいいし、のめり込むのは危ないなと思っています。ビジネスにつながってるならまた別だけど。

 マウントを取り合ったり、「いいね」がないから自分は底辺だ、みたいにつなげる必要がないと思うし危険だと感じるから、俺はSNSをやりません。

映画『神は見返りを求める』より

――ゆりちゃんは「承認欲求おばけ」でもありますが、大なり小なり皆がそういう部分を持っているところが恐ろしいですよね。

岸井:承認欲求はあってもいいと思いますけど、いまの時代は「それがすべて」「それが人生」みたいな感じがします。𠮷田監督の言うとおり、それで本当の価値は測れないですよね。私はInstagramだけやっていますが、そこに載せるものは自分の中のほんの一部もいいところですし、それがすべてになれば「インスタに載せるためにタピオカ飲みに行く」みたいに逆転してしまう。その行動が、私はちょっとホラーだなと感じますが、現状はそれがまかり通っているんですよね。

𠮷田:でも俺は、監督やってなかったらめっちゃSNSをやってたと思う。

岸井:え⁉

𠮷田:要は、俺は承認欲求というか「自分が生きてきた証」を映画に乗せて1本の作品にしているから、SNSをやる必要がないんだよね。昔、俺はトラックの運ちゃん(運転手)だったんだけど、それを続けてたら「友だちとこういうことをした」「旅行に行った」「現政権のここがおかしい」みたいなことを頻繁に書いていたと思う。

 ただ自分はそれを今、全部映画で言えちゃうし、満たされているからやらない。俺にとって、SNSは映画より弱いんだよね。「言いたくて映画を作ってる」ところはあるから、SNSを頻繁に更新する人の気持ちは理解できる気がする。

岸井:でもそれは、自分の人生や生活があってのことだと思うんです。私が怖いなと感じるのは、載せるための行動をすること。生活の上にSNSがあるんじゃなくて、SNSの投稿のために生活をするようになってしまうという。

𠮷田:俺はやると思う。

岸井:やっちゃうんですか⁉

𠮷田:「これ映えるな」と思ったら撮りに行くだろうし、なんなら「この服先週と一緒だな」って写真撮る前にわざわざ着替えたりするね。

岸井:なるほど……。

𠮷田:でもゆきのも、役者やってなかったらSNSがっつりやってたんじゃない?

岸井:やってるとは思いますけど「これ載せたいから撮りに行く」みたいなのはしないと思います。

𠮷田:でもさ、「映画観ました」って投稿するときに、映画館でポスターの写真が一番よく撮れそうなところを探すじゃん。それと同じだよ。

岸井:自分と一緒に撮るってことですか⁉

𠮷田:撮るよ! 俺だったら間違いなく撮る。

岸井:本当ですか……。

𠮷田:YouTubeもやると思う。映画監督にはなれなかったけど、映画には詳しいわけじゃん。映画系YouTuberになって、別アカで「SYOさんより俺の方が話うまいのに」「僕はいいと思いません」とか下げコメントする……(笑)。

岸井:怖いです!

――やめて……(笑)。

岸井:𠮷田監督は映画監督になれてよかったですね……(笑)。

――本当に(笑)。ただ、やる/やらないは置いておいて、きっと誰しもに少なからずそういう部分はあるんでしょうね。

𠮷田:そうだと思う。それが、誰でも簡単にスマホ一個でできる世の中になっただけだよね。それこそ平安時代にスマホがあってもみんなやっていたと思うし、承認欲求はどの時代の人も持っていたはず。

岸井:でも私、mixiが流行る前、高校に入学する前に「前略プロフィール」で「同じ高校の人カキコ(書き込み)してください」みたいな使い方を見た時点で怖くなっちゃった事があったんです。高校入学する前に掲示板で仲良くし始めて、会ったらなんか違う……みたいなことが多発していたのもあり、そのあとのmixiも怖くてやらなかったです。でも周りはみんなやっていて、「あの頃はみんなmixiやってたよねー!」みたいな話についていけなくてちょっと寂しい思いはしています(笑)。

𠮷田:mixiって“足あと”(自分のページを訪問したユーザーが閲覧できる機能)が残っちゃうでしょ? 可愛い子のページを見て「𠮷田さん2日に一回来てるんだけど」みたいに思われるのが恥ずかしいからできなかった(笑)。ページを覗きたい欲求はめちゃくちゃあるのに……。

岸井:自分のことを知られるのはいいんですか?

𠮷田:基本的にはNGかな。

岸井:私もそうですね。自分のことを知られるのが嫌なんです。

𠮷田:例えばいまも、自分の作品のPR以外の取材は全部断ってる。公開作がないときに「監督という人間として取材」という依頼が来ても「宣伝と絡めてください」と伝えてる。なんかね、「お前ごときが何偉そうに言ってるんだよ」ともう一人の俺が滅茶苦茶ディスってくるんだよ。「お前みたいなカスがSNSをやるだぁ? このウンコ野郎!」って(笑)。

岸井:ごめんなさい!ってなるんですね(笑)。でも、わかります。私も「私ごときがすみません」という感覚はあります。

NEXT:映画に携わる二人の、「エゴサ」とYouTubeは?

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