
©加藤孝
文化出版局の発行する絵本「がまくんとかえるくん」シリーズ(アーノルド・ローベル 作、三木卓 訳)は、数々の児童文学賞を受賞し、小学校の教科書にも掲載されている大人も子供も楽しめる名作。天真爛漫ながまくんといつも冷静沈着なかえるくんの、対照的だけど仲良しなふたりが繰り広げる何気ない日常が描かれる。
この絵本シリーズを原作としたミュージカルは、2003年にブロードウェイで初上演され、アメリカの演劇界で最も権威のあるとされるトニー賞で3部門にノミネートされた。
以降、日本でも繰り返し上演されてきた本作を、ふぉ〜ゆ〜の越岡裕貴(こしおかゆうき)、松崎祐介(まつざきゆうすけ)のW主演で8年ぶりに上演し、好評を得ている。
5月31日(土)春日井市民会館での愛知公演に始まったこの『A Year with FROG and TOAD~がまくんとかえるくん』は、6月22日(日)にサンシャイン劇場での東京公演で千秋楽を迎えた。

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ミュージカルでは、開幕前に4羽のとりさんたちが客席まで降りてきておしゃべりを始め、一気に観客を動物たちの世界へと誘い込む。そして、舞台上に現れた2台のベッドに眠る、がまくんとかえるくんが冬眠から目覚めるところから物語がはじまる。
ふたりでガーデニングをしてみたり、手紙を書いたり、クッキーをつくったり、凧あげに挑戦したり、クリスマスに暖炉の前でホットチョコレートを飲むなど、春夏秋冬を通して日々の生活を楽しむ様子が演じられる。
原作から選りすぐったストーリーを踏襲しつつも、実力派キャストによってコミカルに味付けされた会話劇に会場はたびたび笑い声と拍手に包まれた。
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動物たちを表現する個性豊かな衣装にも注目だ。フリンジやレースをふんだんに使って翼を表現した「とりさん」、全体にギャザーが入った光沢のあるトップスとパンツで皮膚の質感をだし、パッチワークの甲羅を乗せた「かめさん」など、キャラクターたちはカラフルでかわいらしい衣装を纏っていた。
なかでも、主演の越岡さんと松崎さんのお気に入りの衣装は、劇中で2度登場するリバーシブルの上着。前半で二人が着ていたパジャマは、後半では裏返してジャケットとして再登場する。がまくんはブラウン、かえるくんはグリーンで統一された、季節の移ろいが感じられるコーディネートの変化が見どころの一つだった。

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終演後に行われたアフタートークにて、演出家の元吉庸泰(もとよしつねやす)は、「僕ら毎日一生懸命生きていかなきゃならないことが、外の世界だと多いと思うんですけど、がまくんとかえるくんのように、ここにいるだけでいい。存在するだけでいい。世界が大きく変わっていく中で、それだけで褒められるというか、許されるような世界観がつくれてたらいいな」と語った。
不朽の名作の再上演が期待される。
絵本シリーズはこちら

『A Year with FROG and TOAD~がまくんとかえるくん』
WEB:https://musical-frogandtoad.jp/