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渡部玲

ビューティライター

Akira Watanabe 渡部玲

女性誌の編集部、編集プロダクションに勤務した後に独立。現在は、フリーランスのエディター、ライターとして活動。

新しいリップカラー「BENI」に見る、これからの美

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古より日本人の美意識を刺激し続ける、日本特有の伝統色=大和色に着想を得て誕生した、「BENI」シリーズがメイクアップブランド「フシカ(fucica)」から今春、誕生した。
「フシカ」は風姿花伝にちなんで付けられた名が表するように、メイクアップから日本人の魅力を開花させることを探究するブランドだ。2016年のデビュー以来、メイクアップアーティストや舞踊家、着付け師などさまざまなクリエーターと共に独自の"色"と"質感"を提案し、プロダクトを通して自分らしさを大切にすることを伝えてきた。
 コロナ禍が続く中、コスメやメイクアップが担う役割は、以前とは違ってきたように感じる。情勢が激しく変化し続ける今、口紅のブランドやシリーズが続々と誕生。「BENI」も「フシカ」のリブランディング第一弾として発表したリップカラーのシリーズで、2021年3月にデビューした。今回は、そのサステナブルでホリスティックの洗練された「BENI」プロダクトを生んだブランドディレクターのYUKOさんと、製造を担当した日東電化工業 ヘルスケア事業部 CEO 茂田正和さんにプロダクトに込めた思いを訊く。


――今春、新たに誕生した「BENI」シリーズは、YUKOさんの作られたメイクアップブランド「フシカ」のリブランディングの第一弾だそうですが、まずは、YUKOさんにブランドについてお聞かせいただきたいです

YUKO・fucicaブランドディレクター(以下、YUKO) 「日本人の肌の色に馴染みやすい色を展開することで、メイクアップを楽しんでもらいたいと考え、2016年に発表したメイクアップブランドです。キーカラーであり、ブランドのベースにも据えた深緋(こきひ)色は、朱赤のように発色する緋色で、最初に作ったアイシャドーで展開させました。プロダクトのラインアップは他にチーク、リップグロス、アイライナー、それから熊の筆のリップブラシです。カラーメイクアップのブランドにしたのは、顔に色が入ることで楽しい気分にしてくれるものでもあると考えているためです。
ブランドのデビューした2016年、私は28、29歳で、振り返るとブランドは私そのものだったのだろうと思います。色やアイテムは、その当時の私が思い描いていたことでした。そんな思いがきっかけでメイクアップブランドを作りました。伝統色である大和色の赤を主体にしたブランドであるのは、デビュー時から変わっていません。「BENI」は、そのブランド理念を生かした新シリーズで、まずは8色のリップカラーからスタートさせました」

――コロナ禍にある今、このタイミングでリップカラーを発表されることは大きな決断だったように感じるのですが

YUKO 「理由はいくつかあるのですが、「フシカ」のスタートから5年が経ち、一歩踏み出したいと考えたことに由るところが大きいです。とはいえ、このコロナ禍です、以前のように化粧をしたいと思える環境ではなくなった中で、それもリップカラーのシリーズを発表しようとしているのですから、迷いがないといえば嘘になります。しかし、発表することにしました。化粧するという行為に、自分の中に眠る女性性のようなものや、自分を奮い立たせる力があると信じているから。昨今では少しずつ市井の、人の意識は変わって来ているのを感じます。そして、化粧することの大切さを改めて思い知らされている方はきっと少なくないのではないでしょうか」

――新シリーズのリップカラーは、真鍮を用いたパッケージの美しさに目を奪われます

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YUKO 「金属表面の錆を防ぐ処理を施すめっき業として長い歴史を持つ、日東電化工業にパッケージとリップカラーの処方をお願いしました。このプロジェクトを通して、信頼できる仲間に囲まれていると思えたことも大きな歓びでしたし、リップカラーを作ることを決定づけてもくれました。多くの人がストレスを感じているであろう今、紅をさすという行為で自分の表情に色を与えることで元気にしてくれるものと考えます。そんなホリスティックな要素をも持たせたリップカラーを、新シリーズ「フシカ」リブランディングの起点にしました」

茂田正和・日東電化工業 代表(以下、茂田) 「真鍮のパッケージは弊社のめっき部門が図面を引くことから担当し、形にしました。この"捨てないコスメ"は、当社が新たに立ち上げたサステナブルな化粧品事業の第一弾。表はマットで裏面は光沢に仕上げているのは、YUKOさんのリクエストでした。酢などの酸性のもので手入れをすることで輝きを蘇らせることができるのも真鍮の魅力の一つです。
サステナブルを考えた時、僕自身が一つの指針にしたのが伊勢神宮の式年遷宮でした。これは、20年に一度行われる神宮最大の神事で、御神体を新しい正殿に還すというもの。そのために新しい神殿を用意し、古いものを取り壊すのですが、20年に一度のこの神事があることで大工や農林業など伊勢神宮界隈の人たちに仕事が生まれているのです。人間は生きていく以上、経済活動をしなければなりません。この循環には、古くから続く日本の優れたソーシャルデザインなのだろうと思えました。
話を「BENI」に戻すと、新たにモノを作ろうとした時、生まれたアイテムが使われることで所作に変化をもたらし、心を豊かにできるものであれば、あるいはいつか自分の子に引き継げるほど丁寧に使う気持ちになったり、メンテナンスを繰り返しながら使えるならば? そういった新たな価値観が芽生えるならば? それがプロダクトを通じて提案できるサステナブルなのではないかと考えました。
モノを作ることで生まれる循環をしっかり作ることがサステナブルに繋がっていくのではないか、と僕は考えます」

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YUKO 「真鍮という素材を選んだのも、使い続けることで味が出るものだから。使い捨てていくものではなく、長く使えるものを愛で、使いこなす歓びを感じてもらいたい。さらに、使う自身をも愛して欲しい、というメッセージを込めました。自分だけの色に変化していくことも真鍮を選んだ理由です。
茂田さんもそうだろうと思うのですが、良いものをたくさん見て、吸収して自分のプロダクトに落とし込むという作業をしています。デザインとは正解のないものですが、「BENI」は感性の豊かな人たちとともに作ることで満足のいくものに仕上がったと思えます」

茂田 「真鍮とは、銅に亜鉛を混ぜた物質です。真鍮の抗菌作用はとても高く、神社の鳥居の足の部分の、雨水が跳ね返る部分に使用することで殺菌剤となって木を腐食などから守ってくれるものなのです。ただし、錆びるのが早いという特徴もあります。錆を生じにくくするために銅に亜鉛を加えたものが真鍮です。大正時代になると装飾品や家具、ドアノブなどに腐食しにくい真鍮が使われ始められました。
YUKOさんの考える「BENI」の時代観は、江戸ではなく、明治のような維新さでもなく、大正ロマンの、まだ着物を着ている人が残りながらも洋装もいる、ミクスチャーの時代観こそが彼女の捉えたかった時代だったことで、僕は真鍮を含めていくつかの素材を提案しました。軽量で変色もしないアルミ、逆に酸化する銅も考えましたが、YUKOさんは真鍮一択でしたね」

――変化する素材を選ばれたのですね

YUKO 「自分自身もそうですし、「フシカ」も世の中もそう、常に変化するものだと考えています。そして、変化することを恐れないことは素敵なこととも思います」

茂田 「「BENI」を長く使い続けていただくために、リップカラーに配合する成分にもこだわり、吟味しました。そこで、ふっくらとやわらかな唇へと導かせるもの、それも継続して使用することで叶えられる成分をセレクトしています。唇のコラーゲンやヒアルロン酸の合成を促す効果に期待できるフィトエストロゲンの一種、大豆に含まれるイソフラボンに着目しました。それもイソフラボンの含有量が一般的なものよりも多いとされる、発芽黒豆由来のダイズ種子エキスを「BENI」に採用しました。

YUKO 「口紅をつけた唇は乾燥しがちなのです。リップクリームをつけた上から口紅を塗るという人が多いのはそのためだろうと思います。テクスチャーと成分の両方で、なめらかで使い心地のよいものにしたかったのです。
それから色のバリエーション。これも真鍮と同じ考え方で、ずっと使い続けられる色調、肌馴染みやテクスチャーを追求しました。そのため、季節ごとのコレクションは、今のところ考えていません。全8色の色展開は、春夏秋冬の4つのカラーグループに分類する、パーソナルカラー診断をベースにして考えました。近年、注目されている診断で、その結果を基準に選ぶこともできますし、その日のファッションや気分に合わせても楽しめる8色です。その中でも、06 kurumiは特に気に入っている透明感のある色。軽いつけ心地で、唇をほんのり色付けます。年齢を問わず使ってもらえると嬉しいです」


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赤をベースにしたリップカラーは、瑞々しいテクスチャーでほんのりと彩色する。BENI全8色(01 momohana、02 benihi、03 yuri、04 kara-kurenai、05 kohaku、06 kurumi、07 shinku、08 ume-gasane)セット(真鍮容器、レフィル1色、リムーバル)¥5,940、真鍮容器(真鍮容器、リムーバル)¥3,850、レフィル 各¥2,750 /fucica BENI

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天然毛だけで作られた熊野筆登録の紅筆。BENI ルージュ ブラシ ¥2,750 / fucica BENI



「カラーメイクアップのコスメは、それがあることで心を豊かにし、嬉しい気持ちにもしてくれるものだろうと思うのです」とYUKOさんはいう。メイクアップとは顔だけではなく、心をも彩るものなのだろうと思わせてくれた。
 新シリーズ「BENI」が、今の時代のあらゆる人に向けてメイクアップする歓びとコスメの可能性を伝える。


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fucica
ブランドディレクター
YUKO
外資系コスメブランドにて、メイクアップアドバイザーを経験した後、化粧品メーカー数社でセールスやマーケティングを学ぶ。2016年、その日本人の肌と好相性の大和色を用いるメイクブランド「fucica」を発表、現在に至る。
会う人、行く場所、着る服、それぞれのシーンや気持ちに合わせて添える色を変える「人生に百の花を」をテーマとし、それによって生じる心の変化こそがメイクの本質であるとの考えを持つ。それを多種多様な人達に自身の手がけるプロダクトを通じて伝えることを職責とする


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日東電化工業 ヘルスケア事業部
CEO
茂田正和●Masakazu SHIGETA
2000年、ひどい湿疹に悩む母親のためにスキンケア化粧品を作ったことを契機に、全国のホテルや旅館を対象とした化粧品の企画開発会社を起業。04年、父親の家業である日東電化工業のヘルスケア事業部として統合。その翌年、敏感肌向けスキンケアブランド「nesno」を発表、2016年までに5ブランドを手がけた。17年に「OSAJI」を発表し、現在に至る。
両親や祖父母に華道家、茶道家、俳人、音楽家をもつ環境によって育まれた日本の文化芸術への尊崇から、これまでもアーティスト、ミュージシャン、デザイナー、料理人とコラボレーションし、多くのプロダクトを発表。化粧品の世界最高峰の技術や安全性に基づいたmade in japanブランドと、日本人のクリエイティビティを融合させ、日本文化を深化させることを目指す。
日本皮膚科学会、 日本皮膚免疫アレルギー学会、 日本化粧品技術者会、 日本香粧品学会に各学会に所属し、こどもを紫外線から守る会およびバランスケアアソシエーションを主宰する http://nitto-ec.co.jp/hc/




fucica(UCO)
tel: 05036472728
https://www.fucica.jp/

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