text : Hitomi Oyama
「最近、中国のファッションが熱いらしい」と聞いたことがある人もいるはず。そう、今、隣の中国では、若手デザイナーや新しいセレクトショップがどんどん登場していて、ファッション界がとにかく賑わいを見せているのです。なかでも、上海は1891年、中国国内でも早くに紡績工場が建ったことから、中国国内の衣料品やファッションの中心地として発展してきました。
そんな上海で、2003年から開催されている「上海ファッションウィーク」は、今では世界から大注目を集めているファッションウィークの一つに成長。中国国内ブランドの知名度と影響力を高めることを目的の一つに掲げ、また、海外ブランドの中国進出の後押しにも力を注いでいます。
上海ファッションウィーク2018AWは、3月28日から4月3日に開催され、この会期に合わせ、上海市内の各地で合同展示会やショールーム、ファッションのイベントが開催されるなど、街全体がファッション一色に染まりました。
今回は、番外編としてブランドのコンセプトが明確に表現されていた展示をご紹介します。
展示「THINGs in THINGs(モノの中のモノ)」
前シーズンまで合同展示会でコレクションを発表していたデザイナーの中には、「合同展示会だとどうしても埋もれてしまう」「本当に見て欲しい人たちにより届くことを望んで」という理由から自分たちで場所を設け、展示形式でブランドのコンセプトを見せるという方法をとったファッションデザイナーもいた。3ブランド、4名の20代女性デザイナーたちだ。
デザイナー 左から、ジン・ティエンファン、ジャンジュー、パン・ユーウェイ、ヤオ・シュー
random clichés / ランダム クリシェーズ
パーソンズ美術大学大学院を修了した景天芳(ジン・ティエンファン)と国内の美術大学を卒業した潘玉瑋(パン・ユーウェイ)が2016年に設立したユニットブランドrandom clichés(ランダム クリシェーズ)。「不確定な回答から、さらなる可能性を探る」ことをブランドコンセプトに活動を進めてきた。前シーズンまでは、合同展示会で服を見せてきたが、「家具やプロダクトも服同様に人間の身近に存在するモノ。服のデザインとプロダクトや家具のデザインには共通点があるはず」ということで、今回は家具やプロダクトで見せた。「どうすれば大衆のためにデザインされたモノが自分自身のモノになるか」というテーマで、中国の家庭に必ず一つはある「IKEA」のプロダクトに手を加えることで、自分が本当に求めるプロダクトにリデザインした。例えば、朝起きて窓を開ける時、まずカーテンを開けてから窓を開ける。この行程が「面倒」なので、カーテンに袖をつけた。「ほら、こうすれば、すぐに朝の綺麗な空気を取り込めますよ」という具合。「今後は、服だけでなく、プロダクトなど幅広くデザインしていきたい」と二人は語る。
random clichés 2018SS
random clichés 2018SS
OFFPEAKERS / オフピーカーズ
Yvonne(姚舒 ヤオ・シュー)のファッションブランドOFFPEAKERS(オフピーカーズ)は、去年から本格的にスタートした。イギリスのノッティンガム・トレント大学でファッションデザイン科を専攻し、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでメンズデザイン課程を修了したヤオ。ブランドを立ち上げてから、毎月一人の人物を選び、その人のバックグラウンドを服のデザインに落とし込むプロジェクトを行ってきた。今回の展示では、取材した一人一人のその時にポケットに入っていたモノを展示。そのポケットのモノからは、その人の職業、性別、習慣や感情が想像できる。「個」としてのオリジナリティーを強調することで、ブランドのテーマと結びつけた。
OFFPEAKERS 2018AW
OFFPEAKERS 2018AW
Bachelor manner / バチェラー マナー
3ブランドのなかでも、唯一、江竹(ジャンジュー)のブランドBachelor manner(バチェラー マナー)は、すでに国内のセレクトショップで扱いがある。「パターンで遊ぶのが好き」と語る彼女は、これまで発表してきた4コレクションそれぞれをインスタレーションとして再構築した。2016AWは、上海市内で目にした強制退去後に解体されたマンションの敷地に置き去りにされていた綺麗な椅子から、新しいモノと古いモノの対比、個とある巨大な圧力の間の衝突をテーマに発表。2018SSでは、「一人旅」をテーマに発表。旅行鞄の構造を肩や袖のパターンに落とし込み、着心地の良さに合わせて調整した。2018AWは2019SSと一緒に今年の秋に発表する予定。
Bachelor manner 2018SS
Bachelor manner 2018SS