【From パリ支局】コロナ下でも海外で売り上げを伸ばす有松絞りのブランド

--文化出版局パリ支局より、イベントや展覧会、ショップなど、パリで日々見つけたものを発信。

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スズサンの2021-'22年秋冬コレクションは「FAMILY(ファミリー)」がテーマ。


400年に渡り受け継がれてきた愛知の有松鳴海絞り(ありまつなるみしぼり)。その伝統工芸と現代をつなぐモノづくりに取り組むスズサン(SUZUSAN)は、有松とドイツのデュッセルドルフに拠点を置くブランドです。

切り盛りするのは、有松鳴海絞りを家業とする村瀬家の5代目で、クリエイティブディレクターの村瀬弘行さん。一時は存続の危機に瀕した伝統の染め技術ですが、インテリアからファッションまで、コンテンポラリーな製品と掛け合わせることで、新たな活路を見いだしてきました。今やラグジュアリーブランドとしての地位を確立し、国内外で高い評価を得ています。

今回は、2021-'22年秋冬パリ・ファッションウィーク期間中の展示会で、ドイツから来仏した村瀬さんにお話をうかがいましたので、新作と併せてご紹介します。

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スズサンCEO兼クリエイティブディレクターの村瀬弘行さん。


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パリで開かれたスズサンの展示会の様子。ギャラリー・ヴィヴィエンヌの一角にあるここは、半世紀前に故・高田賢三さんが最初のブティック「JUNGLE JAP(ジャングル ジャップ)」をオープンした場所です。


Q:コロナ下で、ファッションウィークのすべてがオンライン発表となり、海外からのバイヤーが見込めない状況でしたが、なぜショールームを開かれたのですか?

村瀬さん:触ることの重要性ですね。前回の展示会で、今までアナログできていた業界全体がデジタルの便利さに気づいた反面、「何かが足りない」と多くのかたが感じられたと思います。それは東京でのショールームでも同様で、オンラインでの受注もありましたが、僕たちは糸からどのように作り上げるかを話したいし、やはり感触を知っていただかないと商品のよさをわかってもらえません。今回はこのような状況下ですが、フランス、ベルギー、オーストリア、スイスなどのバイヤーさんが来てくださいました。皆さん、触られて、試着されるんです。そんなバイヤーさんがいる店のほうが、売り上げがいいのですよね。ドイツの弊社は、2019年よりも2020年のほうが、業績がよかったんです。ドイツは12月中旬からのハードロックダウンで取引店は閉まっていますが、多くのお店から納品後の追加オーダーもありました。

Q:それらの店はネット販売をしているのですか?

村瀬さん:いいえ、スズサンを扱っている店は、ほぼネット販売をしていません。地域に根付いていて、顧客のクローゼットの中やサイズもすべて知っているので、電話だけで販売できるんです。オンラインでは購入者がどのような人かわからないので、したくないそうです。

Q:フランスは売れ残り品の廃棄を禁止する法律ができ、環境に配慮した商品がますます増えています。スズサンはもともとサステイナブルの優良会社ですね。

村瀬さん:自分たちはまだまだ改善できると思っています。無駄を出さないと言いながら、在庫は溜まっていきます。ファッション界では大きな問題ですよね。在庫をセールで売り始めると1年中セールをしないといけなくなります。でもスズサンの取引店はセールをしないところが多いんです。このような時代になって「いらないものは、いらない」ということに皆が気づいたんでしょうね。今回、パリに来たのは、この時期の街の様子を見てみたいと思ったからでもあります。こんなことは人生に何度もないでしょうし。半年前はどの店もがらがらで、でも2つだけレジ待ちの人がいる店があったんですよ。それは、ユニクロとエルメスです。安かろう悪かろうは終わりで、今は品質のよさが絶対なんだと痛感しました。

Q:2021-'22年秋冬のテーマは3世代の「ファミリー」ですね。

村瀬さん:僕には98歳のおじいちゃんがいるんです。今は会いに行けませんが、大事なものはなんだろうと考えると、やはり「家族」でした。重要に感じますね。今季は鶴と亀甲の柄を取り入れました。長生きして欲しいというおじいちゃんへのメッセージです。姉と弟にもそれぞれ子供ができたんですよね。使った生地には、今治(いまばり)の渡辺パイル織物さんと一緒に作ったタオル織機で織ったものもあります。アレルギー肌にもやさしく、ベビー用品にも使われているスマイルコットンさんの生地は開発に数十年もかかったそうです。

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鶴と亀甲をモチーフにした絞り染めのニット。いずれも至福の肌触りで、愛着がわきそう。


Q:日本のいいものや伝統技術を継承していくのは、容易なことではありませんよね。若い職人さんもいらっしゃいますか?

村瀬さん:去年は18歳の男の子が高校を卒業して職人になりたいと入社し、今年4月は名古屋芸術大学の卒業生が新たに職人として加わります。ブランドを始めた12年前にまったくいなかった若い世代が増えてきていて、それは消滅の危機にあった伝統を未来につなげるというブランドの一つの夢が叶ったと感じています。今の課題は「モノを作る」という段階から「人を作る」次のステップにきています。
現状ではスズサンは組織としての確立がまだできていないと感じており、人を育てる経験のある中間層が不足していました。ですので、今は人を育てる人材を集め、意識づくりから取り組み始めています。少しずつ社内の意識の変化が形になってきていて、若手のポテンシャルも感じています。
無くなりそうだった伝統を次に伝えたい、という社会課題から生まれたブランドが、今後サステイナブルに成長するためには、お客様がいて購入してくださり、自分たちがモノを作り続けられるのだと理解することが重要だと思っています。
個人から組織、それが産地になって文化につながるというヴィジョンを共有し、作り手と使い手の幸せな関係が、スズサンというブランドを通じて創り出せたらと願っています。


【スズサン 2021-'22年秋冬コレクションより】

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村瀬弘行(むらせ・ひろゆき)
1982年名古屋市生まれ。2002年渡英。サリー美術大学を経て、ドイツのデュッセルドルフ国立芸術アカデミーを2011年に卒業。留学中の2008年に、デュッセルドルフで「suzusan e.K.(現suzusan GmbH & Co.KG)」を設立し、オリジナルブランド「スズサン」をスタート。取扱店は20か国以上にのぼり、フランスの著名ラグジュアリーブランドともコラボレーションを行う。

suzusan公式サイト:
https://www.suzusan.com

Photographs(ショールームを除く):Rebecca Höltgen

Text : B.P.B. Paris

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