欧州の伝統技術を継承する、石田欧子の帽子展「LE COUP DU CHAPEAU」 From Paris

日本における帽子デザイナーの草分け的存在で、2014年に急逝した平田暁夫さん。その娘であり、仕事を引き継いでいる石田欧子さんの個展「LE COUP DU CHAPEAU」が、パリ中心部のギャラリーで開催された。石田さんの父、平田暁夫さんは1960年代に数々のクチュールメゾンやセレブリティの帽子を手がけていたジャン・バルテのもとで修業。その間に石田さんが生まれたので、石田さんにとってパリは第二の故郷となる。ちなみに東京・西麻布にあるアトリエでは、"ヨウジヤマモト"や"まとふ"といったコレクションブランドの帽子を手がけるほか、機能性やかぶりやすさを重視した帽子も制作している。
しかし今回の展示では、自分の意思に従って自由に創作したものを出展したそう。作品はどれも美しく華やかで、50年前のパリのエレガンスを確実に残しながらも、モダンかつ個性豊かに、みごとな造形美を見せている。それもそのはず、石田さんは帽子の本家であるパリでは消滅してしまった、木の繊維を編んだスパットリーという希少素材を用いて帽子の型を成形する工法を今でも守り抜いている。貴重な技術の継承者なのだ。彼女の作る帽子は芸術的な仕上りで、見る者を引き込む強い魅力を放っている。彩りを添えるコサージュ類も、すべて一から制作しているというから驚きである。いつかはアトリエにお邪魔して特別な一品を注文してみたい、そんな気持ちにさせてくれるすてきな展覧会だった。

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左 構築的な造形美を見せる、クリストバル・バレンシアガにオマージュをささげた帽子。極細モットル(天然草)を使用。上右 手製のコサージュをあしらった帽子は、硬いフォルムの中に優美さを漂わせる。下中 今回の個展のメインイメージともなっていた、世界初の映画監督ともいわれるジョルジュ・メリエスによる作品『月世界旅行』をイメージした帽子。現在は生産されていない、帽子用の天然草を使用。


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左 春の息吹を感じさせる華やかな作品の数々。右 帽子デザイナーの石田欧子さん。


www.hiratatelier.com

『装苑』2016年8月号掲載
text&photpgraphs : Tomoaki Shimizu
清水友顕●パリ在住。ステューディオ・ベルソー卒業後、
いくつかのブランドでの研修を経て、主にファッションを扱うジャーナリストに。
ライフワークは週末の蚤の市・古物市めぐり。レコードと古いぬいぐるみ集めが趣味。


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