本来、ファッションショーはバイヤーやジャーナリストを中心に、新作を披露するための場所であったことは言うまでない。しかし、メディアを取り巻く環境が、そして伝わる速度が大きく変わった今でもショーの在り方自体は変わっていない。そして、かつての服好きは、ショーから店頭に並ぶまでの半年近くの間、雑誌を眺めながら待つことを楽しめたが、今はそうではない。
坂部氏が今回から意識したのは、現在のショーではファッションが売れないという現実に向き合うことだった。それを言い訳にするくらいなら、ショーでの服は市場を意識せず、より好きなものを、より印象として作ればいい。しかし、お披露目だけで終わらせることがないように、売れるものはプロダクツとして提案するという考え方だ。
その"売るもの"が、今回は自身がプロデュースするグランズの靴。そこで人間像を作る際、通常であれば顔などを中心に構成していく衣服を、あえて足元を中心に提案。素材には、第一織物などによる特殊なナイロンを選択、単なるスポーティブではなくフューチャーリスティックな、普段ではまぜないものをミックスした。
もともと、ショーがバイヤー向けだとすれば東京でのファッションウィークは買い付けがほぼ終わった後という時期にも問題があり、そのためいくつかのブランドがファッションウィークを待たず、9月にショーを終えている。つまり、彼らにとってのショーは、売るために見てもらうことが、その役割の大部分であるともいえる。
坂部氏が行った提案の行方は、数年のうちにわかるとして、グローバルにファッションショーの役割が変わってきたのは事実。ショーの参加をやめて売れたブランドもあれば、消えたブランドもある。今後ファッションショーで何を見せるのか。どう戦うのかを選択するのもブランドの個性になってきた。(編集部MK)