【From パリ支局】2019年春夏パリコレクションで見るモードの動き

―文化出版局パリ支局より、イベントや展覧会、ショップなどパリで日々見つけたものを発信。

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シャネルの2019年春夏コレクションより。©CHANEL


9月24日から3月2日まで、2019年春夏パリコレクションが開催された。公式スケジュールに参加したブランドは、ショーとプレゼンテーションを合わせると113。2年前に比べるとプレゼンテーションの数はほぼ変わらないが、ショーは90から78へと大きく減少している。とはいえ、今回はセリーヌ、クレージュ、ミュグレー、セドリック シャルリエ、エステバン コルタザーがカレンダーに復帰し、初日にグッチが特別枠でショーをするなど、話題に事欠かないシーズンだった。

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2年半ぶりにパリのランウェーに戻ってきたセドリック シャルリエ(CÉDRIC CHARLIER)のコレクション。ショーはベルギー大使館で行われ、マニッシュなタッチやアシンメトリーの遊びを見せるグラフィカルなシルエットが並んだ。


中でも特に注目を集めたのが、エディ・スリマンによる新生セリーヌだ。コレクションはパリのナイトライフをテーマに、コールドウェイブなどのミュージックシーンからもインスピレーションを得ている。エディ流のユースでグラムールな世界だが、これまでに前クリエイティブ・ディレクタ―のフィービー・ファイロが築いたブランドイメージを全て刷新するもので、ショー後には賛否両論のコメントが飛び交うことに。

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セリーヌ(CELINE)はアンヴァリッドに作られた特設会場で、96点のウィメンズとメンズの合同ショーを発表。メンズモデルのルックは全てユニセックスで、ウィメンズとしても着用できるそう。


クレージュはアメリカ人デザイナーのケーシー・カドウォルダーを、ミュグレーはドイツ人デザイナーのヨランダ・ゾベルをアーティスティックディレクターに迎えて初ショーを披露。両者とも著名ブランドでキャリアを積んだデザイナーである。

一方で、ランバン、ニナ リッチ、ラコステ、ケンゾー、カルヴェンなど、フランスを代表する複数のメゾンがショーを休止。その理由はクリエイティブディレクターの交代や戦略の見直しなど様々である。

カレンダーの新旧交代がますます激しさを増している中、若手ブランドの顔ぶれの豊かさも際立っていた。新規に参入したのは、アフターホームワーク(AFTERHOMEWORK)、アントン ベランスキー(ANTON BELINSKIY)、アウェイク(A.W.A.K.E)、マルケスアルメイダ(MARQUES'ALMEIDA)、オットリンガー(OTTOLINGER)、サイモンリー(XIMONLEE)の6ブランド。彼らの多くは国際コンペティションの「アンダム・ファッションアワード」、「LVMHプライズ」、「H&M デザインアワード」などで既に頭角を現していたデザイナーだ。若手注目株のコシェ、Y/プロジェクト、アトラインもこれらコンペティションの過去の通過者で、今回も安定したクリエイション力を見せている。また、前回の初ショーで話題を呼んだマリーヌ セールとノワール ケイ ニノミヤ、2回目のプレゼンテーションとなったマメも熱い期待が寄せられたブランドだが、いずれも独自のスタイルを打ち出す力強いコレクションで好評を博した。

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世界の国々をテーマに展開されたコシェ(KOCHÉ)のコレクション。これまで同様クチュールとストリートをミックスしたスタイルだが、今回は様々な民族のタッチがプラスされた。


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Y/プロジェクト(Y/PROJECT)は、トラッドを崩して独創的なプロポーションで遊んだシルエットが多数登場。フェザーのような装飾や大振りのアクセサリーも目を引いた。


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アントナン・トロン(Antonin Tron)が手がけるアトライン(ATLEIN)は、今年の「アンダム・ファッションアワード」でグランプリを獲得。コレクションでは、大人のエレガンスを見せるミニマルでモダンなシルエットにあふれた。


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マリーヌ セール(MARINE SERRE)は、ダイビングスーツやサーキットユニフォームなどのスポーツウェアとリサイクルのアイディアを取り入れたコレクション。


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先シーズンに続き、インパクトあるコレクションで観客を圧倒したノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)。フリルで覆われたアーキテクチャルなピースに続き、ライダースから発展させた様々なアイテムが登場。


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マメ(MAME KUROGOUCHI)は、コンペティション「ファッション プライズ オブ トウキョウ」の支援を受け2回目のプレゼンテーションを開催。着物風ガウンなど、繊細な刺繍やプリントで彩られたコレクションは、日本画家の上村松園の絵などからインスパイアされた。


全体の流れとしてはジェンダーニュートラルや男女ミックスのコレクションが更に浸透している。前出の若手では半数のショーでメンズモデルが登場し、男女兼用のルックやメンズラインを同時に発表するブランドが増えているのである。ビッグブランドでも同様で、セリーヌやグッチをはじめ、バレンシアガ、ジバンシィ、メゾン・マルジェラなどでそうした動向を見ることができる。

2019年春夏のトレンドでは、引き続きストリートとラグジュアリーのミックスが主流だった。ワーカーやスポーツの機能に装飾性をプラスし、実用と非実用のバランスで遊んだスタイルだ。また、鮮やかなカラーにあふれたシーズンでもあり、タイダイやアニマルモチーフ、ミニマルとは対照的なリボン、フリル、フェザーなどをデコレートしたシルエットも多い。アイテムでは、マスキュリンなジャケットのバリエーションが豊富で、ボレロ丈、肩を強調したもの、オーバーサイズのものもあり、一方でフェミニンなワンショルダーのドレスやビュスチエドレスなども目を引いた。

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メゾンのDNAを汲むサンローラン(SAINT LAURENT)は、タキシードなどのメンズライクなジャケットにセクシーなインナーを合わせたマスキュリン・フェミニンのシルエットが多数。黒を基調に、レオパードプリントやパイソンのマテリアル、赤や青のビビットな差し色が目を引いた。Photo: COURTESY OF SAINT LAURENT


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ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)は、ワークウェアの要素を所々に散りばめつつ、ビーズのフリンジや大きなリボンなど、ドレッシーなデコレーションをプラス。巧みなバランスの妙技でスタイリッシュな女性像を描く。


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ロシャス(ROCHAS)はダブルのスーツやコートなどマニッシュなシルエットを見せる一方で、ワンショルダーやフェザー刺繍のフェミニンなドレスも提案。レオパードやゼブラなどのアニマルモチーフも豊富に展開され、ゴージャスな雰囲気を引き立てていた。


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エルメス(HERMÈS)は改築されたばかりのロンシャン競馬場でのショー。コレクションはメゾンのルーツである乗馬からの着想に加え、セーラー風やダイビングスーツ風アイテムなど、海のイメージでもある。鞍職人を思わせるエプロンのようなルックもあり、斬新なアイディアでいっぱい。Photo: Jean-François José


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グラン・パレに波打つビーチが現れたシャネル(CHANEL)のショー。色とりどりのツイードジャケット、カラフルなプリントのドレス、水着やデニムを纏ったモデルたちが裸足で登場し、バカンス気分たっぷり。コレクションの終盤には軽やかなリトルブラックドレスの提案も。©CHANEL


パリ・ファッションウィークは多大な経済効果を生み(経済的便益は年間で12億ユーロ/約1,550億円)、フランスにとってモードは重要な産業である。ショーの規模は全体的に縮小傾向にあるが、新進気鋭のデザイナーから老舗メゾンまでの層の厚み、クリエイションの豊かさからも、世界のファッションの首都というパリの地位はゆるぎないものだったといえそうだ。

Text: B.P.B. Paris

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