【From パリ支局】海を渡った「ボロ」、もうひとつのラグジュアリーのかたち

―文化出版局パリ支局より、イベントや展覧会、ショップなど、パリで日々見つけたものを発信。

「ボロ」は使い古されたぼろ切れや継ぎ接ぎだらけの衣服のことだが、今や国境を越え、欧米ではアートとして扱われるようになった。東北地方の野良着の中には国の重要有形文化財に指定されるものもあり、刺し子のテクニックや布の組合せの美しさに魅了される海外のデザイナーもいる。

その「ボロ」をシグニチャーに2年前から活動する「KUON(クオン)」は、東京に拠点を置く新進ブランドである。1月のパリ・メンズコレクション中には、「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」の受賞を経て、ショールーム「showroom.tokyo」への参加も果たした。


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パリで開催された「showroom.tokyo」での「クオン」の展示。


提案されるのは日本の「ボロ」や継承される伝統技術を駆使して作られる現代のメンズ服。希少な材料から作られる一点ものと、ある程度の量産が見込めるコレクションラインの二つのカテゴリーがある。いずれも素材が持つ、なんともいえない風合いが魅力だ。


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農作業で使われていた150年前の着物(写真上)と、「ボロ」を解体し、新たなパターンをもとに縫製されたジャケット。


「日本国内ではなく、世界をターゲットにしたブランドにしたかった」そう話すのは、法律家でもあり平行してアパレルの事業を行なう藤原新(ふじわら・あらた)さん。「自分たちの強みってなんだろうと考えた時に、例えば伝統的なものや昔のものを今の感覚にアップデートさせることに至りました。それを更に先の未来に繋げていきたいという思いもあります」


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東北地方に伝わる刺子織のジャケット。


その考えに賛同したデザイナーの石橋真一郎(いしばし・しんいちろう)さんは「まず大事なのは服としてかっこいいことだと考えています。『ボロ』は背景にあるものですが、その価値は最終的に人に伝わるものだと思う」とコメント。「このブランドの贅沢さは、時間を借りていることだと思っています。現代の服ですが、例えば100年前の古布や伝統的な技術が使われているジャケットがあって、同じようなもの作ろうとすると100年後になってしまうわけです。その"時"を借りて今着られるものを作っているというのは、ラグジュアリーと捉えられるのではないかと」


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「クオン」の創立者の藤原さん(右)と石橋さん。


ベースとなる「ボロ」は独自のルートで仕入れているが、保存状態が悪く穴があいたものなどは、岩手県に送られ職人の手で修復される。「もともと東北に伝わる文化なので、そこで修復されるほうが理にかなっていますから」と藤原さん。ブランドの理念にあるのは、大量生産ではなくサスティナビリティを軸にした商品づくり。時代を超越したモノの価値を教えてくれる服である。


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「showroom.tokyo」の展示風景。「東京ファッションアワード」の受賞ブランドが集まる。


WEB:www.kuon.tokyo
WEB:tokyo-fashion-award.jp

Text&Photographs:B.P.B. Paris

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