清水早苗の布をめぐるクリエイション vol.6:テキスタイルから衣服文化の奥深さを知る「HaaT」の企画展

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text:Sanae Shimizu / photographs:Sanae Shimizu, HaaT

ファッションジャーナリスト清水早苗さんによる、布づくりについて、布という素材の可能性、そして、布と人間の関係を探るシリーズ「清水早苗の布をめぐるクリエイション」。
vol.6は、テキスタイルにこだわるブランドHaaTによる展示「Heart in HaaT」について。



好評を博した昨年の東京、この5月の福岡に続き、「Heart in HaaT」テキスタイル展が、8月22日(土)まで、大阪・阪急うめだホール(阪急うめだ本店9階)にて開かれている。同展でも、ところどころ布の上に置かれた雫や水滴のようなオブジェと、幾重にも弧を描く展示から、会場は清新な空気感に包まれていた。


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HaaT(ハート)は、「テキスタイルから発想する」ブランドとして、2000年に、テキスタイルデザイナーの皆川魔鬼子氏と企画チームで立ち上げられた。ブランド名のHaaTには、3つのハートの意味が込められている。心を意味するHeaRTはメイド・イン・ジャパンを、ヒンズー語で手の意のHaaTHは、インドのクラフトマンシップを現代に伝え、そして、この2つを合わせたのが、HaaT。そのビレッジマーケットを意味するように、毎シーズン開発されるHaaTのテキスタイルには、東洋と西洋の文化が交差するような魅力に溢れた表現が見受けられる。


メイド・イン・ジャパンに焦点をあてた展示

今回は、商品の約7割を占めるというメイド・イン・ジャパン、つまり、毎シーズン日本で開発されてきたテキスタイルに焦点が当てられている。ブランドが設立された2000年から昨年の2014年秋秋冬コレクションまでのアーカイブから、厳選された服と小物、合わせて72点が、その技法とともに紹介されている。


トータルディレクター、皆川氏のコメント

「紡績、染め、織り、編みなどの技術者と私達の創意工夫のキャッチボールで素材作りをしてきました。日本での素材づくりが難しくなっている中、今一度見直してみたい。また、一緒に取り組んできた技法から生まれたテキスタイルを、感謝の気持ちを込めて、ご紹介したいと思います。」


13の技法によって構成

1つのテキスタイルにはさまざまな要素が含まれているが、わかりやすいように以下のように13の技法、− 織スカート、色、絞り、丸編、加工、ウール縮絨、横編、ジャカード織、先染、アレンジワインダー、刺繍、ストール、アクセサリー − に分かれている。


haat3150821.jpg 上左 右の写真とともに、「ストール」から。オーガニック栽培された120番という極細の超長綿糸で織られている。透けるほど繊細で肌触りがとても柔らかい。
上右 "掃除機にたまった埃の色をきれいに思った"ことから、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色を混色するという表現方法を発想。埃の色をイメージして粗びきのトップカラーを作り。ホームスパンで手織りをした。


haat4150821.jpg 西脇産地で開発された、手間のかかる経糸の交換がスムーズにできる機械、「アレンジワインダー」のセクション。糸の長さを計算してつなげることができるので、色柄が作れる。HaaTでは、つなぎ目のノット(結び目)を、表面にみせることによって、日本の伝統的な残糸のざる結びに見立てている。


haat5150821.jpg 下左 「横編」から。ナイロンものフィラメント(テグスの糸)で、円を描くように編目を増やしながら編まれている透明感が美しいベスト。
下右 「ウール縮絨」から。毛織物を収縮させてフェルト化させる縮絨は、表情に厚みがでる。織りと併用することによって、布の表面に立体感がでる上、縮絨の度合によって服のフォルムにも変化をだすことができる。HaaTでよく使われる技法の一つ。


おおらかな印象と緻密な日本の技術

デザインは、自然との対話から生まれるという皆川。モチーフには、森や木々、花や鳥などがあらわれてくる。土の香りのする、そのおおらかに感じられる作風だが、その背景には、技術・技法を熟知した皆川の力量と日本の技術者の緻密な仕事があることが伝わってきって、テキスタイルの奥深さをあらためて感じることができる企画展となっていた。
テキスタイルを学んでいる学生はもちろんのこと、ファッションに興味にある方々も何気なくまとっている布地について理解を深める良い機会となることだろう。

開催は、8月22日(土)まで。21日(金)は、午前10時から午後9時まで。最終日は、午後6時まで。入場無料。
お問合わせ:「ISSEY MIYAKE INC. PRESS ROOM」TEL 03-5454-1705


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清水早苗 Sanae Shimizu
ジャーナリスト・エディター・クリエイティブディレクター
武蔵野美術大学、文化ファッション大学院大学 非常勤講師

スタイリストを経て、ファッション雑誌の構成、カタログ制作のディレクターとして活躍。その一方で、パリ・東京コレクション、デザイナー等の取材を通して、衣服デザインに関する記事を、デザイン誌、新聞に多数寄稿。代表的な仕事として、「新・日曜美術館」(NHK)における「三宅一生展」監修(2000)。川久保玲に焦点をあてた「NHKスペシャル」では企画からインタビュー、制作まで携わる(2002)。「アンリミティッド;コム デ ギャルソン」(平凡社)編者。「プリーツ プリーズ イッセイミヤケ10周年記念」冊子(エル・ジャポン)の編集(2002)など。また、日本の繊維・ファッションの創造性を発信する情報誌の編集や展示会、セミナー等のディレクションに従事する。
最近では、大手量販店の衣服・雑貨のデザイン及びデザインディレクター。カタログ通販の創刊にあたり、商品企画、デザインディレクション、カタログ制作に携わる。2010年より2013年まで毎日ファッション大賞選考委員。

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