アレキサンダー・マックイーンの知られざる素顔とは?映画『マックイーン:モードの反逆児』試写会&トークイベントが文化学園で開催。モデル 冨永愛さん、ジャーナリスト 生駒芳子さんによるスペシャルトークショーの様子をお届け!

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photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)

型にはまらないデザインと高度な造形技術で洋服を仕立てるファッションデザイナーであり、見た人に強い感情を呼び起こすアーティスト、アレキサンダー・マックイーン。そんな彼の生涯とクリエイションに迫るドキュメンタリー映画『マックイーン:モードの反逆児』が明後日4月5日(金)に公開されます。発売中の装苑5月号でも特集した本作の公開を記念して、3月28日(木)、文化学園の学生に向けた学内試写会が行われました。

上映後には、17歳でニューヨークコレクションデビューし、マックイーンのコレクションにも出演された経験を持つモデルの冨永愛さんと、VOGUE、ELLEを経てジャーナリストとして活躍する生駒芳子さんのトークイベントを開催。素顔のマックイーンとは?これからのファッションデザイナーに期待することとは?最後にはファッション業界の未来を担う学生のみなさんに向けたメッセージもいただきました。その内容を一部抜粋して、お届けします。

冨永愛さん 本日は楽しみにしてきました。よろしくお願いします。

生駒芳子さん 今日はいろいろなお話をさせていただいて、みなさんのエネルギーにしていただければいいなと思います。冨永さんは映画をご覧になってどうでしたか?

冨永 私はリー(マックイーンの愛称)とは直接お会いしていますし、すごく悲しさがこみあげてきましたね。彼はやっぱり非凡なデザイナーだと思いましたし、特別な存在だったので。当時の映像もふんだんに使われていて、すごく面白いなと思いましたし、素晴らしい映画でしたよね。

生駒 私たちファッション好きには、とにかく刺さる映画でした。愛さんはパリ、ミラノ、ニューヨークと数々のショーに出ていらっしゃって、多くのデザイナーにも会っていますよね。その中で、マックイーンってどんな存在でしたか?

冨永 マックイーンと、劇中にも出てきたジョン・ガリアーノ、トム・フォードはこの時代の顔ですよね。特にマックイーンのショーはモデルたちの中でも、絶対出たい!というものでした。

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生駒 やっぱり、すごい存在だったんですね。どの点がそれほどまでに特別なのでしょうか?

冨永 リーはショーにおいても自分の世界観を表現することにすごくこだわりを持っている人でした。私はショーのトリを飾らせてもらったことがあって、その時は大きな布団のようなコートを被って、透明なトンネルの中を歩いたのですが、目の前に直径3mくらいの扇風機があったんですよ。重いコートが真横にたなびくくらいの強風の中「愛にまかせるけど、ただ一つやって欲しいポーズがある。」って。それは今でいうイナバウアーみたいなポーズなんですけど、強風の中でやると後ろに倒れそうになるのですが、必死でやりました。後にも先にもあんなヴィジョンを持ったデザイナーはいないのでは、と思います。

生駒 数々のショーに出られている愛さんのお仕事の中でも、極めて特別なショーですよね。

冨永 そうですね。そのショーのときに全身青のペイントをして、髪の毛にはエクステをつけて、それは腰くらいまでの長さ。ショーの後に、雑誌の撮影をそのまましていたんですけれど、バッグステージに戻ったら誰もいなくなっていたんです。みんな次のショーに行ってしまっていて。身体は真っ青だし、髪の毛には長いエクステがついているし、どうしたらいいんだろうって。そうしたら、設営のスタッフさんやヘアメイクじゃない方達が、エクステを取ってくれて、身体を拭くタオルとか持ってきてくれたんです。その後にリーが来て「本当ごめん。」って泣いていて、それがすごく思い出に残っています。

生駒 素敵な思い出ですね。私も一回だけマックイーンにインタビューしたことがあるんです。

冨永 そうなんですね。

生駒 ジバンシィのデザイナーに就任した直後くらいに、彼がコム デ ギャルソンが好きって知っていたので、全身コム デ ギャルソンの最新のドレスを着てロンドンのアトリエに行ったんですよ。入った途端、「わーお!コム デ ギャルソンでしょ!?」ってすごく喜んでくれて。「僕も持ってるんだよ!」って部屋の奥から自分の持ってるギャルソンのシャツをハンガーごと持ってきて、見せてくれました。さらに部屋の奥にはギャルソンの服がかけられていて、本当に好きなんだなって。ジバンシィの話を聞いたときは「パリとの行き来は大変だけどさ、でも、すごい刺激を受けていて、スタッフの人達も良い人達だから楽しいよ!」って話されてたんですよ。でも作ることが好きな人ではあるので、「やっぱりビジネスとバランスとっていくのは大変だよ。」っていうのは、そのときに仰っていましたけれど......。それが忘れられないですね。愛さんが会われたのって、その何年か後ですもんね?

冨永 そうですね、2003年です。

生駒 愛さんはファッションの世界にかかわられてから、20年になりますがファッションってこれからどうなると思うか、愛さん自身なにか感じていらっしゃることはありますか?

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冨永 つい先日、東京のファッションウィークが終わったばかりですけれども、近年はリアルクローズの時代ですよね。

生駒 そうですね。1990年代〜2000年代、マックイーンが活躍していた頃は、もっとモ―ドってファンタジーで、日常では着られない服だって山ほどプレタポルテに出ていた気がするんですけれど。そういった服は、今はオートクチュールでしか見られなくなりました。オートクチュールは今でも実験の場になっていますよね?

冨永 そうですね。若いモデルにとっても挑戦の場になっています。

生駒 リアルクローズが悪いわけではもちろんないですが、ファッションは、ある種の賭けみたいなことをしていかないと進化していきません。私はやっぱりジャーナリストなので、次の時代を予感するクリエイティブなものを見たいなって思うんですね。

冨永 そうですよね。私はファッションはマジックだなって本当に思っています。もちろんリアルクローズも素敵ですけれど、リーを継ぐマジカルなデザイナ―が出てこないかなって、楽しみにしています。

生駒 リーの次が、この会場の中にいらっしゃるかもしれないですよね?

冨永 本当に、そうですよね。

生駒 今はビジネスセンスが問われすぎたり、あらゆる規制や制限がかかりやすい時代でもありますが、彼のようなアーティスト気質のデザイナーがのびのびクリエイションの翼を広げられるような時代がまた来たらいいなって。みなさんには、失敗を恐れず、想像の翼を縮めないでいて欲しいです。

冨永 この仕事に出会えて良かったなと思うのは、現実ではない世界に触れられた時。ですから、創造性豊かなリーみたいな人と一緒にお仕事をできたことを、光栄に思っています。恐れずにみなさんには表現をしてもらいたいですね。そして、あっと驚くものを見せてもらいたいなと思います。自分が見たことのない自分にしてくれる服ってすごく上がりますから。

生駒 みなさん目標ができましたよ。愛さんのようなトップモデルの方がワクワクするような服を作るって考えると、ちょっと目標になるかもしれないですね。

冨永 きっと、ファッション業界の人たちは、みんな待っていますよね。

生駒 ファッションの歴史を振り返ってみると、いつでも最初にアクションを起こした人って賞讃とともにバッシングも受けるんです。あのクリスチャン・ディオールだってニュールックを出したときはバッシングされたんですよ。あんな戦争で疲弊した世の中に、何十メートルも布を使ったドレスを作って、贅沢すぎる!って。けれど、それが次の時代のスタンダードになって受け入れられた。みなさんにも恐れずにチャレンジをしていただきたいし、たとえ失敗をしたとしても、また次の挑戦をしてください。学校にいらっしゃる間は、どんどん面白いことをやっていただきたいです。

冨永 私が海外に出たときは、先ほど生駒さんが仰っていたみたいに恐れがなかったんですよね。海外に出て、ニューヨーク、パリ、ミラノと回って、その若いときの恐れ知らずって、すごいパワーでした。いろんな経験と知識がある分、今のほうが怖がってしまう面があるのかなって思うんですけれど、若い今のパワーを使って、どんどん前に進んでいってもらいたいなって思います。

生駒 20代の人に「今何したらいいですか?」って聞かれたときは、失敗してください。って言っています。意図して失敗することはないけれど、恐れないで欲しいです。この映画をご覧になって感動されたと思うんですけど、次の時代の、リーになって欲しいなって、すごく思っています。

冨永 そうですね。期待しています。

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冨永さんが着ているのは、アレキサンダー・マックイーンの現デザイナー、サラ・バートンがデザインしたシェルプリントのジャケットとパンツのセットアップ。冨永さんは後任のサラ・バートンのデザインについて「リーの遺志を引き継いで、そのコレクションの中に彼女らしさもちゃんと出している感じがします。サラがすごくリーを尊敬していることが、服から伝わる。」と語っている。

冨永愛 Tominaga Ai
17 歳で NY コレクションにデビューし、一躍話題となる。以後約 10 年間にわたり、世界の第一線でトップモデルとして活躍。その後、拠点を東京に移し、モデルの他、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティなど様々な分野にも精力的に挑戦。日本人として唯一無二のキャリアを持つスーパーモデルとして、チャリティ・社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝える活動など、その活躍の場を広げている。

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生駒芳子 Ikoma Yoshiko
VOGUE、ELLE を経て、2004 年より marie claire の編集⻑を務める。 2008 年 10 月に退任。 その後ファッション雑誌の編集⻑経験を生かして、ラグジュアリー・ファッションからエコライフ、社会貢献まで広い視野でトピックを追い、発信するファッションジャーナリストとして活躍。

『マックイーン:モードの反逆児』
監督:イアン・ボノート、ピーター・エテッドギー
出演:リー・アレキサンダー・マックイーンほか
配給:キノフィルムズ
4月5日(金)より、「TOHOシネマズ 日比谷」ほかにて全国公開予定。
WEB:mcqueen-movie.jp/


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