「matohu」2017 A/W TOKYO COLLECTION 「いき」の美学に挑んだ、まとふ

ganryu140204

多くのデザイナーが、ショーをメイン会場である渋谷ヒカリエのホールで行なうなか、matohu(デザイナーは、堀畑裕之と関口真希子)が選んだのは、東京・芝にある増上寺。
今回のテーマは、「いき」。難しいテーマに挑戦した、と思う。江戸時代の町人から生まれた「いき」という美意識は、服装のことだけでなく、着る人の生き方や人間性、立ち居振る舞い、ものごとの捉え方まで、幅広く含んでいるからだ。広い意味での"センスの良さ"が、どのようにショーで表現されるのか。否が応でも興味がそそられる。
霧がたち込める中、モデルが出現する、という幻想的な演出でショーは始まった。matohuを象徴する"長着"に、多色の縞柄のトップスに紫のレザーパンツ。このファーストルックに、コレクションのエッセンスが詰まっていた。経糸を4色の糸をつないだ織られた縞柄は、平行ではなく、少しづつ細くなって消えたりと、ラインが変化するという。哲学者の九鬼周造が、江戸時代中期以降に流行し縦縞模様と男女の恋が永遠に交差しない二元性を関連づけていることに着目し、「人の出会いと別れを象徴するような新しいいき」を、オリジナルの「生成消滅する縞柄」を開発し、「いき」を表現している。ほのかな色気が匂い立つ、軽やかに揺れる濃茜色の長着は、新潟・五泉(着物地の三大産地のひとつ)で織られた、草柄が浮き出ている「紋塩瀬」。他方で、柔らかな風合いのベージュの長着には、デザン化されたグレイの竹林、縞柄になぞらえて、織り込まれている。その長着から、ちらりとのぞく山吹色の裏地。表地より裏地に凝るという、いきの美学もさりげなく取り入れられている。
「いき」という、難解なテーマに取り組んだ今シーズン。研究の成果は、少々消化不良に終わってしまったようにも見えるが、現代人が忘れがちな美意識をあらためて提示したことは意義深い。デザイナーの二人にとっても、今後のクリエーションに生かされていくにちがいない。
追記:当日は雨が降ってしまったが、晴れていたら、増上寺と東京タワーを背景にショーが行なわれるはずだった。400年以上の歴史を持つ増上寺の本堂と東京タワー。デザイナーが意図していた、過去と現在が交差し、タイムスリップしたような「いき」が、もっと強く表現できたかもしれなかった。
(取材・文=清水早苗)

Brand : matohu / まとふ
Designer : Hiroyuki Horihata, Makiko Sekiguchi / 堀畑裕之、関口真希子
Date : March 21th 2017
Start : 19:00
Place : Zojoji
Director : Hiromasa Tsujii (atom inc.)
Styling : Tetsuro Nagase (UM)
Hair : ABE (MO)
Makeup : Noda Norikata
Music : Masato Hatanaka
Photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
Text : Sanae Shimizu

Esteem Press
www.matohu.com
TEL03-5428-0928

MAGAZINE

『装苑』2020年9月号、7月28日発売!

calendar

-event -promotion -exhibition

Page Top