「ACUOD by CHANU」2018 S/S TOKYO COLLECTION 着想源は織田信長。甲冑イメージで、ブランドという弾丸を世界に撃ち放つ

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ファッションショーは、衣服だけでなく、当然ながらショーの構成・演出といった発表方法にも、デザイナーの行き方が反映される。

ヒップホップをベースに、衣服だけでなくカルチャーも含めてつないでいくことがコンセプトのアクオド バイ チャヌ(デザイナーの李燦雨)にとって、ショー冒頭のトップレベルのダンスパフォーマンスは、ヒップホップ文化を伝える重要な意味を持っている。

今回は、ランウェイに戦国時代の陣営のごとく軍旗が立てられている。テーマは、武将に関係しているよう。ジップというブランドアイデンティで、どこまで展開可能か。興味と同時に期待を抱きながら、ショーの始まりを待った。

「人生50年...」と謡が流れる。意表を突かれて、日本舞踊の若柳恵華氏による舞からはじまった。演目は、「敦盛」。平家物語の"諸行無常"の世界が広がる。黒沢明監督の「羅生門」か、溝口健二「雨月物語」がテーマかと想像していたら、次に登場したのは、KRUMP界のスターであり、モデルでもあるKTR。鎧を纏っての、キレのあるパワフルなダンス。やはり武将か。パフォーマンスは鉄砲を撃つ姿で終わった。

ファーストルックは、ショルダーにハトメを打ち付けた、着物衿の真っ赤なレザージャケット。ヘアもハトメで埋め尽くされ兜を思わせる。和の要素をベースに、機能性と装飾性の両方を兼ね備えたジップを、縦と横に使用。その開閉を利用し、勇ましい甲冑の要素を取り入れたデザインが繰り広げられる。鎧の草摺(鎧の胴から垂れ下がり太ももを守る部分)は、ジップを開いて表している。輪状に幾重にもジップが並んだ袖。家紋や漢字を刺繍したジップポケットが覆うコートも印象的。今回は、ブランドカラーの黒と白に、赤や黄色が加わった。甲冑がもとになったプリント柄も、現代の"甲冑"表現に一役買っていた。展覧会に通ったり、本物を見せてもらって、甲冑の研究をしたという。

ショーの後に明かされたテーマは、「ZIP OUT TO THE WORLD」。ZIP OUTは、世界に向かって弾丸などが音を立てて進むという意味。世界に向けて、アクオド バイ チャヌという弾丸を打ち放すという意志を表わしている。インスピレーションの源は、戦国時代の織田信長。思えば「人生50年...」は、信長が好んだ舞。リサーチしていく過程で、既成概念にとらわれない革新的な織田信長は、戦国大名の中でも最も"ヒップホップ"な武将だと感じたという。ちなみに、信長が戦で大量に鉄砲を使用してから、甲冑が変化したことも調べていた。

デザイナーの李は、戦国時代の下克上の状況を今のファッション界に重ね合わせる。「実際にものを見てもいないのに想像で評価する人たり、出る杭を打つ風潮、新しい試みを避けようとするマインド、リスクを取らずに守りに徹する人たち、変化を恐れてただ同じことを繰り返す潮流 etc...」に対して、攻めの姿勢で臨むとも。ブランドを立ち上げて、いろいろな人たちと接するなかで、感じたことなのだろう。今回は、そういうことには屈しないという、デザイナーの覚悟を強く表明したショーだった。

こういった若手デザイナーの気概が、ファッション界の濁った"淀み"を払拭するパワーとなる。応援したい。
(取材・文=清水早苗)

Brand : ACUOD by CHANU / アクオド バイ チャヌ
Designer : Chanu / 李 燦雨
Date : October 18th 2017
Start : 10:30
Place : Shibuya Hikarie Hall B
Direction : Takuya Shimoo, Masahiro Okuda
Styling : Hideyuki Sanbongi
Hair : fumi (KIKI inc.)
Makeup : Atsushi Kokawa
Music : Josh Bess
Kouwakamai : Keika Wakayagi
Dance : KTR
Photographs : Josui (B.P.B.)
Text : Sanae Shimizu

ACUOD by CHANU
acuod.com
TEL03-3464-2610

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『装苑』2017年12月号、10月28日発売

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