「ANREALAGE」2016 S/S COLLECTION パリで3回目の挑戦「リスクを背負ってでも新しく実験的なことを仕掛ける」:デザイナー森永邦彦さんインタビュー

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「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の2016年春夏の新作が発表された。パリコレクションへの参加は3回目。毎回、明確なコンセプトをもとに、インパクトのあるショーを発表しているデザイナーの森永邦彦は、「一回一回が勝負なので、リスクを背負ってでも新しく実験的なことを仕掛けようと思っています」と話す。今回の試みは、観客全員がヘッドホンで音楽を聞きながら、スマートフォンの画面越しに服を見るというもの。前代未聞のショーである。

 コレクションのテーマは"REFLECT(反射する)"。再帰性反射素材(道路標識や安全服などに使われる光を反射させる素材)を進化させた特殊な生地が核となり、観客がスマートフォンでフラッシュ撮影すると画面上では服の色や模様が変化しているという演出だ。鏡に映したような左右・上下対象の形も特徴で、ここにも"反射"のコンセプトが表れている。「この3シーズンで、1回目のテーマが"影"、2回目が"光"でしたので、今回は光が反射する現象を取り上げてみようと思ったんです。映し出された世界、非日常の世界は、ずっと意識してきた題材でもあります。それで、形を反射することと、光を反射することの両方を掛け合わせてコレクションを作ることにしました」
 サウンド・ディレクションは、「サカナクション」の山口一郎が担当し、楽曲の一部には、録音時と同じ音場を感じることができるというバイノーラル録音された音源が使われた。

Show movie by TOKYO FASHION FILM

「サカナクションの山口一郎さんとは、業界は違うのですが、年齢が同じこともあり、僕はファッションの中でもがいていて、彼も音楽業界の中でもがいているタイプなので、話が合うんです。僕から、日本のロックバンドがパリに行くのは面白い、一緒にやろうって誘いました。そうやってかき乱していくとパリコレクションに興味を持っていない日本の多くの若い子たちがパリコレってなんだろうって考えてくれたり、逆にファッションしか知らない人たちがバイノーラル録音に興味を持ってくれたり、クロスオーバーできると思ったので。服のテーマとスマートフォンを使うことを話したら『じゃあ、聴覚もヘッドホンでいきましょう!』って言ってくれたんです」

 パリ進出から1年半、フランスの権威あるファッションコンクールANDAMのファイナリストにノミネートされるなど、手応えを感じつつ、日本とのギャップにも気づいたという。
「パリが求めているものを意識するようになりました。女性の体をどう美しく見せるか、エレガンスにどう向き合うか、ということなのですが、自分たちはそういった軸とは違う戦いかたをしているので、評価を受けるのは難しいと1回目のショーで感じたんです。東京では体のプロポーションというのではなく、それを超越したところでファンを獲得し、土壌を作ってきました。パリには同じ土壌がありません。ですが、自分たちの思想のもとに、いかにプロポーションを作っていくかを重視し、2回目、3回目とやっていったら、オーダーも格段に変わっていきましたね。王道で勝負しても勝てないので、人が作れない服を作ることです。ファッションデザイナーとテキスタイルデザイナーは分かれていますが、ファッションデザイナーがやるべき領域が今は狭いので、自分はテキスタイルにとことんこだわっていきたいと思っています。自身の表現のために、新しい素材が必ず必要になるので、それを作っていかないと本当に新しいものが出てこないと思います。」

 10年間の東京でも活動を経て、世界を視野に邁進するアンリアレイジ。およそ100のブランドがコレクションを披露するパリのファッションウィークの中、その型破りなショーは飛び抜けて好奇心を駆り立てるものだった。
「会場まで来て、自分の目で見て、自分の耳で聞こうとする人たちに対して、不自由な環境を作ってショーをしたのです。そこにもファッションは存在する、と伝えることにすごくリスクがありました。不安もありました。誰もヘッドホンもつけず、誰もフラッシュをたかなかったらどうしようって。でも、みんなやってくれたんで、ホッとしましたね(笑)」

森永邦彦
1980年生れ。アンリアレイジデザイナー。2003年より活動開始。'05-'06年秋冬より東京コレクションに参加し、'15年春夏の「SHADOW / 光」で、パリ高級服飾組合(通称サンディカ)の正式登録を受けてパリ・コレクションデビュー。今季、ケイスケカンダとともに共同プロジェクトを行なうことを発表した。

コレクション画像は、同じルックを2枚ずつ掲載している。左側がフラッシュ撮影、右側が通常撮影した写真。
ルック1列目と2列目左側は、「逆さ富士」にインスピレーションを得て、天地反転したスカートを繋げたドレス。映画『スター・ウォーズ』とのコラボレーションアイテム。
ルック2列目右側〜7列目左側、8列目は、再帰性反射糸が織り込まれた生地を使用。フラッシュ撮影で、無地が千鳥柄に、グレンチェックがタータンチェックに、ストライプが千鳥柄になるなど、柄が変化するのがユニーク。
ルック7列目右側は、ファッションブランド「keisuke kanda(ケイスケカンダ)」との共作。フラッシュ撮影をすると、千人針を彷彿とさせる無数の刺し子が現れるドレス。
ルック9列目は、天地反転したスカートを繋げたドレス。
ルック10〜13列目は、上下左右が反転したトップスで構成したドレス。フラッシュ撮影をすると、万華鏡のようなカラフルな色彩が浮き上がる。

*『装苑』12月号特集「デザイナーがこだわる、理由がある。テキスタイルとデザイン」の「テクノロジーが変えるテキスタイルの未来」でもアンリアレイジの2016 S/Sコレクションを紹介(p51)。このページでは「再帰性反射素材」にフォーカス。

Brand : ANREALAGE / アンリアレイジ
Designer : Kunihiko Morinaga / 森永邦彦
Date : September 29th 2015
Start : 17:00
Place : Palais de Tokyo, Galerie Haute
Director : Shige Kaneko
Sound Director : Ichiro Yamaguchi (Sakanaction)
Sound : Takamasa Aoki
Hair&Makeup : Katsuya Kamo (KAMO HEAD)
Styling : Sota Yamaguchi
Photographs : Seiji Ishigaki (BLOCKBUSTER)
Text : Mariko Mito (B.P.B. Paris)

ANREALAGE
www.anrealage.com
TEL03-6416-0096


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