2018年秋冬東京コレクションに向けて期待すること

afwt180313.jpg 文=清水早苗

2018AWミラノ、パリコレクションも終わり、いよいよ東京でも中核となる「Amazon Fashion Week TOKYO」(以下、AFWT)が、3月19日(月)から24日(土)まで開催される。どのような内容になるのだろうか。期待を込めて先シーズンを思い返してみた。

左 sacai / 右 UNDERCOVER 2018SS collection



改めて振り返る。話題は、サカイ、アンダーカバー、トーガのショー開催

昨年10月に開催された2018春夏AFWTの話題は、なんと言っても、パリコレ参加ブランドである「sacai(サカイ)」と「UNDERCOVER(アンダーカバー)」の合同ショー「10.20 sacai/UNDERCOVER」やロンドンで発表している「TOGA(トーガ)」が、東京を発信するAmazon Fashion "AT TOKYO"のプログラムの一環としてAFWTのカレンダーに連ねていたことだった。

当然ながらすでに発表された作品だったが、やはり海外で評価を得、ショーを継続しているという実績に裏付けられたショーからは、一種"貫禄"のようなものを感じられた。海外で勝負するには、どういったものづくりのレベルが必要なのか。若者たちが直に感じることができる絶好の機会になったと思う。

TOGA 2018SS collection



新境地を切り開く中堅デザイナーたち

他方、東京で発表し続け、定評のあるベテラン・中堅デザイナーは、独自の美意識や世界観を、等身大のデザインに落とし込むという難しさに挑み続けているといえる。2018春夏では、その中堅デザイナーや、だいたい5年以上ショーを行ってきた若手が、新しい境地を切り開くことに挑戦していたことが、強く印象に残った。

AFWTの会期に先駆けて発表した「support surface(サポートサーフェス)」(デザイナー 研壁宣男)のコレクションは、今までの作品を花の蕾に例えれば、その蕾が開き始めたようだった。大き目のチューリップのプリントやメッシュ、マルチカラー・ツイードといったテキスタイルが、立体感を意識したつくりと相まって、エレガントなカジュアル感を創出し、清新な空気感をまとった女性が、闊達に歩き出しはじめていた。

「matohu(まとふ)」流のエネルギッシュな世界を繰り広げたデザイナーの堀畑裕之と関口真希子。テーマは「牡丹」。柄と柄のぶつかり、大柄の鳥の翼や葉のモチーフ、金銀も加わったくどいとさえ感じる色の組み合わせといったテキスタイルは秀逸。これまでの"侘び寂び"のイメージとは真逆の「日光東照宮に極彩色」の装飾文化に挑戦していた。

シュミーズドレスから始まった「DRESSEDUNDRESSED(ドレスドアンドレスド)」(デザイナー 北澤武志・佐藤絵美子)のショー。それもヌードカラーでランジェリーと見紛うデザイン。意表を突かれたというか、少々面食らった。もちろん、静謐で品の良い作風は変わらない。思えば、ブランド名は「着る・脱ぐ」の意味。その脱いだ状態を表現するルックなどを見ていると、ある種の"性の目覚め"のようなものが感じられてきて、テーマの「IN BLOOM」(思春期)と繋がってくる。ショーを終えて、「ブランドのアイデンティを見せたかった」、「自分たちを崩すシーズン」と語った北澤。今シーズンで12回を数えた彼らの思い切った挑戦に拍手を送りたい。

リラックス感のあるデザインによって、女性のセンシュアルな面を見せた「tiit tokyo(ティート トウキョウ)」(デザイナー 岩田翔、滝澤裕史)。「mintdesigns(ミントデザインズ)」(デザイナー 八木奈央、勝井北斗)は、意外なことに「中国」に着目。宣教師が中国で撮影した写真集からインスピレーションを得て、中国と西洋、双方向からの視点をデザインに落とし込んでいた。

オリジナリティを見出し、ブランドイメージを定着させていくことは難しい。だが、その次のステップはもっと難しく思える。ブランドを成長させ、先に前へと進むために、従来のイメージから脱皮し進化することは、容易なことではない。そんなことを改めて痛感したシーズンでもあった。彼らが、今回、どのようにコレクションの展開していくのだろうか。期待がつのる。

左 matohu / 右 DRESSEDUNDRESSED 2018SS collection



「日本文化=着物」への多様なアプローチ

もう一つ、印象に残ったことは、世界に誇る日本文化の一つである「和服・着物」からインスパアされたショーが見受けられたことだった。

若々しいジャポニズムを見せた「GROWING PAINS(グローイング ペインズ)」(デザイナー ユリア)。戦国時代の下克上を今のファッション界の現状と重ね合わせ、自らの攻めの姿勢を提示した「ACUOD by CHANU(アクオド バイ チャヌ)」(デザイナー 李燦雨)。「着物を作ろうと思ったが難しかった」と正直に語った「MIKIOSAKBE(ミキオサカベ)」のデザイナー坂部三樹郎。日本をテーマに「日本の昔と現代のミックス」を、ユニークなアプローチによって洋服にしていた。「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」(デザイナー 山縣良和)は、写真家、石内都の代表作「ひろしま」をインスピレーション源の一つとして、「After Wars」(戦後)をテーマに、日本におけるファッションと時代の関係性を表現した。

今日、西欧で発達した服がグローバルスタンダートの衣服となり、当然のように受け入れているが、各国各地域には、土地や風土に根ざし、進化してきた伝統的な服である"民族服"がある。若手デザイナーが、アイデンティティでもある伝統的な服と、どのように向き合うのか、興味深いところである。

左 GROWING PAINS / 右 MIKIOSAKABE 2018SS collection



2018AWに向けて、ワールドコレクションにおける東コレの位置

今シーズンのAFWTの参加は、主催する一般社団法人日本ファッションウイーク推進機構の発表によると、59ブランド。そのうち、初参加は20ブランド、海外からは7ブランドということだ。毎回、初参加が多く、全体数はあまり変わっていない。つまり、入れ替わりが激しいことを物語っている。継続しない、あるいは、継続できないブランドが目立つのは残念だ。それも、東京コレクションの特徴の一つなのだろうか。

東京の若者ファッションは、アニメや漫画のコスチュームやストリートが混じり合い、"おもしろい"と評され、世界からしばしば注目されている。だが、東京コレクションが、表層的に見られるのではなく、文化レベルでの影響を与えられるようになるためには、中堅、あるいは中堅になりつつあるデザイナーたちの"脱皮と進化"にかかっているのかもしれない。つまり、彼らが、ワールドコレクションにおける東コレの位置を形づくっていくということになるからだ。

最後に、AFWT初参加の中から、注目したいデザイナーを2人あげたい。PVCのバッグで実力が認められ、独自のテキスタイル表現が特徴の「Mame Kurogouchi(マメ)」の黒河内真衣子。展示会ベースで発表し着実にファンを増やしてきた。Fashion Prize of Tokyoに選出され、その助成によりすでにパリで発表したコレクション(下の写真)は、東京ではどのような形式になるのだろうか。そして、2016年に「WEWILL(ウィーウィル)」を立ち上げた福薗英貴。若く小粋な男性像を表現した「WHEREABOUTS(ウェアラバウツ)」のデザイナーとしての最後のショーは、今でも印象に強く残っている。2人とも、デザイナーとしての実力やキャリアは周知のところ。東コレを担うデザイナーとして、活躍を期待したい。


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mame 2018AW collection




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清水早苗 Sanae Shimizu
ジャーナリスト・エディター・クリエイティブディレクター
文化ファッション大学院大学 非常勤講師

スタイリストを経て、ファッション雑誌の構成、カタログ制作のディレクターとして活躍。その一方で、パリ・東京コレクション、デザイナー等の取材を通して、衣服デザインに関する記事を、デザイン誌、新聞に多数寄稿。代表的な仕事として、「新・日曜美術館」(NHK)における「三宅一生展」監修(2000)。川久保玲に焦点をあてた「NHKスペシャル」では企画からインタビュー、制作まで携わる(2002)。「アンリミティッド;コム デ ギャルソン」(平凡社)編者。「プリーツ プリーズ イッセイミヤケ10周年記念」冊子(エル・ジャポン)の編集(2002)など。また、日本の繊維・ファッションの創造性を発信する情報誌の編集や展示会、セミナー等のディレクションに従事する。
最近では、大手量販店の衣服・雑貨のデザイン及びデザインディレクター。カタログ通販の創刊にあたり、商品企画、デザインディレクション、カタログ制作に携わる。2010年より2013年まで毎日ファッション大賞選考委員。

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