2016 S/S COLLECTION REPORT 2015年の東京コレクションと海外進出の新しい関係

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text : Mariko Nishitani / 西谷真理子

2014年秋から発表の場をパリに移したアンリアレイジが、昨年6月に、パリのアンダム(ANDAM=Association Nationale pour le Developpement des Arts de la Mode=ファッションの芸術性の発展のための国立協会)・ファッションアワードという権威ある賞の5人のファイナリストの一人に選ばれたことは記憶に新しい。グランプリは逃したものの、世界の新進気鋭の若手たちに混じって、アンリアレイジの創造性が評価されたということに注目したい。この評価によって、パリや欧米での知名度は格段に上がり、それは当然ビジネスにも良い影響を及ぼす。今回審査員に名を連ねていたのは、デザイナーのハイダー・アッカーマンのほか、かのピエール・ベルジェ(ピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団理事長)にフランソワ・アンリ・ピノー(PPRグループ会長)、ニコル・フェルプス(ヴォーグ・ランウェイディレクター)とそうそうたる顔ぶれだ。ここ数年日本人の欧米への憧れは減速していて、ファッションで海外留学を希望する若者の数も大幅に減っているし、パリコレも必ずしも目標ではなくなってきている。だいたいファストファッション以外の海外ブランドが売れない。などの話をしばしば耳にしてきたが、ここに来て風向きが少し変わったのだろうか。アンリアレイジのアンダム・ファイナリストに加えて、サカイがバレンシアガのデザイナーの候補に挙がっていた(らしい)こと、ファセッタズムがアルマーニに招待されてミラノでメンズコレクションを開催したことなどの2015年のトピックによって、ヨーロッパのリアルさを再認識した人も少なくなかったのではないだろうか。


アンリアレイジ


ファセッタズム

すでに2000年以降ショーを開催しているアンダーカバー、ユリウス、トーガ、カラー、N.ハリウッド(ニューヨーク)などと広げて見ていくと、ジャパンファッションとひとくくりにできないほど多彩だし、展示会のみの参加も加えると、欧米で発表しているブランドは相当な数に上る。

毎日新聞でも、上記のファセッタズムに加えて、ファクトタム、ミントデザインズ、クリスチャン ダダ、ビューティフルピープルなどが次回以降、海外進出に関心を示していると報じ、「中堅相次ぐ卒業」と題した記事を掲載した(10月31日)。サカイの阿部千登勢が、2015年度の毎日ファッション大賞を受賞したことも忘れてはならない大きなトピックだ。


ファクトタム


ミントデザインズ


クリスチャン ダダ


ビューティフル ピープル

1970年代のケンゾーやイッセイミヤケ、'80年代のコム デ ギャルソンやヨウジヤマモト以来パリを中心とした欧米に発表の場を求めるデザイナーは後を絶たないが、2015年の傾向をあえて言うなら、パリに合わせなくなったこと、と言えるかもしれない。写真家の鈴木親が、「SCHOOL」というバイリンガルのインディーズマガジンの3号(2015/9)に書いているように、日本では、ドレスアップしてパーティに出かける習慣がないことが、「普段でも着られる服を極限までに洗練することに長けたデザイナーを多く生むことの一因になっている。また、この洗練された日常着は、今までモードの蚊帳の外にいた欧米の人達や他のアジア地域の人達にも受け入れられ、スニーカー等のストリートファッションの流れとも合い、世界的な流れになったのである。」という指摘は的確だと思う。

「日本のデザイナー達がこのことをより意識的に理解して強みとして発信できるようになった時、きっと、川久保玲のような才能とビジネスセンスを持ち得たデザイナーが育つと信じている」という結び方には思わず頷いてしまう。

東京ニューエイジ

パリに行くことは、パリに近付けることではなく、日本のファッションの基準を見せることだろう。日本でしか生まれないストリート感、細やかなスタイリング、特筆すべき素材、サブカルの不思議な引用など、日本発のファッションにはまだまだ独自のパワーがある。それを海外に発見されるのもいいが、むしろ送り出す戦略を持った場として東コレが機能してほしい。今シーズンで言えば、東京ニューエイジをプロデュースした山縣良和+坂部三樹郎のような継続した支援がやっぱり必要だと思う。

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