【From パリ支局】フランス版ミシュランガイド2020、日本人初の三つ星シェフが誕生!

--文化出版局パリ支局より、イベントや展覧会、ショップなど、パリで日々見つけたものを発信。

2020年のフランス版「ミシュランガイド」で、小林圭(こばやし・けい)シェフのレストラン「ケイ(KEI)」が格付け最高位の三つ星に輝いた。日本人シェフでは初の快挙だ。

小林シェフは1999年に渡仏。地方とパリの有名店で修業を積み、アラン・デュカスの三つ星レストランでスーシェフを務めた経験を持つ。自身の店をオープンしたのは2011年。翌年には一つ星を獲得し、'17年に二つ星に昇格した。

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1月27日に行われたミシュランガイド2020年のセレモニーの様子。この時の格付け発表で、小林シェフは初めて三つ星獲得を知ることになった。写真は担ぎ上げられる新たな三つ星のシェフたち。

発表後、小林シェフのもとにフランス料理界の重鎮や仲間たちが次々に歩み寄り祝いの言葉をかけ、抱きしめ合う姿が印象的だった。
そんな感動の余韻が残る会場で、小林シェフに話をうかがった。

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大勢のプレス陣が押し寄せる中、それぞれのインタビューに丁寧に応じてくれた小林圭シェフ。

Q:3年前に二つ星を獲得した時に比べると、早いペースで三つ星に昇格されましたね。
小林シェフ(以下K):二つ星を取るまでは長かったですね。その時に自分の進むべき道をよく考えました。それをもっともっと突き詰めれば三つ星に近づくと思ったんです。二つ星を取るまでの5年間、ずっと待っていたので、自分のディレクションが定まりました。

Q:あなたのディレクションとは?
K:世界一のレストランにすることです。世界一というと、ミシュランの3つ星などを思いますよね。でも自分は「今まで食べた中で一番おいしかった」と、すべてのお客さんに言ってもらえたら世界一になれると思うんです。

Q:今日、三つ星を取ると予想されていましたか?
K:予想していた、とは言えないですよね。欲しいとはいつも思っていましたが。まずやらなくてはいけないのはスタッフが同じ方向を向くようにすることです。いつもお客さんがいて、レストランが生きていることが一番重要なんです。たぶん、そんなところをミシュランも評価してくれたんではないかと。絶対に手を抜かない、お客さんの前で自分が作りましたと言える仕事をするようにと、いつもスタッフに言っています。

Q:今のお気持ちは?
K:単に嬉しい、ではないですね。ほっとしている、かな。フランスのミシュランで星を取ることはすごい重圧なんです。今は三つ星が最高でも、来年、四つ星ができる可能性もあるんですよね。今より上を目指していくしかない。ミシュランの三つ星を取ったから終わりではなくて、今からが始まりなんです。

Q:ここへ辿り着くまで、たいへんな道のりだったと思いますが。
K:店をオープンした時から三つ星を取りたいとずっと言っていたのですが、スタッフ全員が三つ星のレストランに勤めた経験があるわけではないので、三つ星の仕事を求めても無理なんです。一人一人が目標を持って、そこへ到達したら次はさらに上を目指すようにする、そうして全員で登っていくしかない。その毎日でしたね。ミシュランは調査員が一度だけ来て評価するのではなく、一年を通しての評価です。いつ来ているかなんてわかりません。だから日々プレッシャーなんです。

Q:苦しかったですか?
K:苦しいだけですよ、楽しいなんてことはありません。でも嬉しさがあるんです。お客さんが「おいしい」と言ってくださる、それが嬉しい。その嬉しさがなければこの仕事はできないですよ。

Kei オフィシャルサイト


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セレモニーに集まった星を持つレストランのシェフたち。


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小林シェフは「あなたたちのお陰です。今フランスには多くの日本人シェフがいますが、外国人である僕たちを受け入れてくれて感謝しています。フランス、ありがとう」とスピーチ。会場から大きな祝福の拍手が送られた。


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三つ星のシェフが集合して記念撮影。


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今回、新たに三つ星に輝いたレストランは3店舗。写真は、その中の一つ「クリストファー・クータンソー(Christopher Coutanceau)」のクータンソー・シェフ(中央)。

Christopher Coutanceau オフィシャルサイト


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同じく三つ星に輝いた「ルストー・ドゥ・ボーマニエール(L'Oustau de Baumanière)」のグレン・ヴィエル(Glenn Viel)シェフ。「これからも僕のチームと一緒に、できる限り成長し続けていきたい。多くの人に喜びを与えていけたらと願っています。それが、僕たちにとっては大切なことなので。日本人の活躍はすばらしいです。国境はないと思います。カルチャーのミックスはとてもいいことだし、何よりも一番の目的は顧客に喜んでもらうことですよ」

L'Oustau de Baumanière オフィシャルサイト


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他にも日本人シェフの目覚ましい活躍が。ランスにある田中一行(たなか・かずゆき)シェフのラシーヌ(Racine)は二つ星に昇格。「ずっとやってきて色々たいへんでしたが、ここがスタートラインなので、これからもっとレベルを上げて行けるところまで行こうと思います。自分の店は15席しかないんですが、すべて同じように料理を提供するようにやってきました。ミリ単位できれいに仕上げることに注意しています」

Racine オフィシャルサイト


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オーナー・シェフのヤニック・アレノ(Yannick Alleno)氏が、フレンチの殿堂「パヴィヨン・ルドワイヤン」内に開いた鮨バー「ラビス(L'Abysse)」も二つ星に。左は寿司職人の岡崎泰成(おかざき・やすなり)氏。右は一つ星に輝いた同じくアレノ氏のレストランの「パヴィヨン(Pavyllon)」で腕をふるう廻神大地(めぐりかみ・たいち)氏。

L'Abysse オフィシャルサイト

Pavyllon オフィシャルサイト


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今回の結果を受け、アレノ・シェフは「日本の人たちは誇らしいでしょうね、本当にすばらしい!『アビス』は少しクレイジーな冒険でしたが、岡崎は私を信頼してくれて感謝しています。日本を離れて働くのは簡単なことではないですからね。今夜は最高に幸せな気分です」とコメント。


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フランス版ミシュランガイド。2020年に加わったのは、三つ星が3、二つ星が11、一つ星が49。星付きレストランの数は合計で628店舗となった。

restaurant.michelin.fr


Photographs:濱 千恵子 Chieko HAMA
Text:水戸 真理子 Mariko MITO (B.P.B. Paris)

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