手のひらの映画館。オンライン上で見られる映画・映像作品を映画ライターSYOさんがピックアップ3:国内の動画配信サービスなど10選

text : SYO

 新型コロナウイルスの影響を鑑み、5月6日までだった緊急事態宣言の延長が行われる見込み(5月2日現在)。映画館で映画を観られる日は、まだ少しかかりそうだ。

 そんな中、国内でも新たな動画配信サービスが続々と立ち上がるなど、「映画の届け方」にこれまでにない潮流が生まれつつある。今回は、その中から10点をピックアップしてご紹介しよう。


1、UPLINK Cloud www.uplink.co.jp/cloud/

tenohira200503.png

 日本のミニシアター界の雄として名高いアップリンクが運営する動画配信サービス。現在、「60本以上の映画を3ヶ月見放題」というサービスを行っている。

 通常プランは2,980円で、アレハンドロ・ホドロフスキー監督作『リアリティのダンス』や『エンドレス・ポエトリー』、グザヴィエ・ドラン監督作『わたしはロランス』や『トム・アット・ザ・ファーム』、黒沢清監督作『アカルイミライ』など、過去にアップリンクで上映した傑作が並ぶ。

 また、こちらのプランに寄付込み+3ヶ月視聴継続クーポン付きのパック(5,000円と10,000円の2コース選択可能)や、海外から視聴できる寄付込みパック(5,000円)など様々なユーザーのニーズに合わせたプランが存在する。

 作品単位の配信レンタルも行っており、今泉力哉監督作『退屈な日々にさようならを』や中川駿監督作『カランコエの花』、さらには『ホドロフスキーのサイコマジック』の先行配信上映なども用意。国内外のインディペンデント映画を数多く観たい方にとっては、随一のサービスといえるだろう。

tenohira200504b.jpg
tenohira200504c.jpg

写真は『ホドロフスキーのサイコマジック』より。©SATORI FILMS FRANCE 2019 ©Pascal Montandon-Jodorowsky

Information
映画60本以上見放題 ¥2,980/3ヶ月。このラインナップに寄付込みで+3ヶ月視聴可能な¥5,000、¥10,000コースあり。『ホドロフスキーのサイコマジック』は、¥1,900、¥2,500の2コース/ともに72時間。また、1作品¥500の配信レンタルも用意。

★★★実験的なアート系作品からドキュメンタリー、新作まで、アップリンクならではの刺激的な作品群に注目!


2、仮設の映画館 www.temporary-cinema.jp/

tenohira200503d.jpg
 
 全国の映画館・配給会社が共同で立ち上げた配信サービス。このサービスがユニークな点は、ユーザーが「どの映画館で観るか」を選択できるところだ。ユーザーが支払う鑑賞料金が映画館と配給会社に分配されるシステムになっており、家に居ながらにしてお気に入りの映画館を支援できるという仕組み。

 発起人の一人である想田和弘監督の『精神0』をはじめ、『細い目』を手掛けたヤスミン・アフマドの監督作『タレンタイム~優しい歌』、エコをうたう商品の闇に迫ったドキュメンタリー『グリーン・ライ ~エコの嘘~』など、各配給会社選りすぐりの一作がラインナップされている。6月6日からは、ベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた『タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~』など、映画館に行く感覚で新作を鑑賞できる点も大きい。

 一説によると、日本国内で1年間に1度も映画館を訪れない人の割合は、総人口の約6割にものぼると言われている。さらに年に1回以上映画館に行く人は、10人に4人しかいないというこの国で(しかも、コロナ以前の話だ)、ミニシアターはただでさえ危機に瀕している。そんな状況で、「仮設の映画館」が果たす役割は重要になるだろう。

tenohira_2_200503.png

Information
作品によって配信期間や鑑賞期限などが異なるのでサイトに飛び、気になる作品の「鑑賞方法」項目の確認を。『精神0』(5月22日 21:00まで配信)は、¥1,800/24時間。

★★★自宅鑑賞ならではのマナーCMの効果も手伝い、映画館さながらぐっと作品に集中できる。


3、CINEMA DISCOVERIES cinemadiscoveries.co.jp/

tenohira200503e.png

 インディペンデント映画の定額配信サービス。月額料金は1,100円(収益は、製作者側に還元)。

 無料会員と有料会員の2形態あり、無料であっても「インディペンデント映画」にまつわるトークや制作秘話を収めたインタビュー動画、レビュー等を閲覧可能。ライター・評論家たちをキュレーターとして起用している点も興味深い。

 メインとなる作品ラインナップも充実しており、映画ファンの間で評価の高い、浅野忠信主演作『幼な子われらに生まれ』や『ケンとカズ』、衝撃的な内容が話題となった『先生を流産させる会』など、少数精鋭といえるエッジーな日本映画が揃っている。

Information
見放題 ¥1,100/1ヶ月。 毎月5日、15日、25日に作品が更新され、現在(5月3日時点)は14作品がラインナップ中。

★★★5月4日からは、名古屋のミニシアター「シネマ・スコーレ」製作の6作が配信されるほか、『ハッシュ!』(橋口亮輔監督)『パーマネント野ばら』(吉田大八監督)など、日本映画のマスターピースがどんどん登場!


4、STAY HOME MINI-THEATRE powered by mu-mo LIVE THEATER stayhome-minitheater.com/

tenohira200503f.jpg

 株式会社スポッテッドプロダクションズ、エイベックス・エンタテインメント株式会社らによる配信サービス。無観客ライブプラットフォーム「mu-mo LIVE」をカスタマイズしたものだという。

 4月29日から5月1日までのプレオープン期間には、目玉として、俳優・斎藤工による監督作(監督表記は齊藤工)『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』『TOKYO TELEWORKSFILM』などを配信した(生配信を含むトークイベントが閲覧できるサービスも搭載)。

 現在は、5月中旬の本オープンに向け新企画を準備中とのこと。

tenohira200503g.png

プレオープンで特別先行上映された『眉村ちあきのすべて(仮)』より

Information
本オープン準備中!

★★★「MOOSIC LAB」などで知られる映画配給会社が携わる上映+イベント配信の独自性に期待。


5、アジアン・ドキュメンタリーズ asiandocs.co.jp/

tenohira200503h.jpg

 その名の通り、アジアのドキュメンタリーに絞ったユニークなサービス。月額見放題は990円(プログラムガイド郵送付きは1,100円)。作品ごとの単品レンタルも可能だ。

 無料作品も豊富にあり、1月から2月に取材されたという『封鎖された武漢から決死の報告』シリーズは、新型コロナウイルスの恐ろしさをまざまざと伝えている。なお現在、日本初配信の『島の少年騎手 シラとフィルマン』『ボクシング・フォー・フリーダム~差別に立ち向かうアフガニスタンの少女~』という2作も無料で視聴できる(5月6日まで)。

 また、大学教授やジャーナリストなどの専門家を招き、アジア各国の諸問題を解説してもらうオンライン講座「セルフスタディ・ナビ」も。「アジアの過去・現在・そして未来」を包括したサービスといえる。

Information
見放題¥990/1ヶ月。6ヶ月見放題、1年見放題のパッケージプランもある。また、1作品¥495/7日間での視聴も可能。

★★★月ごとに組まれる特集がユニーク。5月は「大自然と人間」をテーマに、特集「遊牧民のくらし」と「海に生きる」で、全6作品。国内初公開・初配信ばかり。


6、配信映画祭 haishineigasai2020.themedia.jp

tenohira200503i.jpg

 森川葵の主演作『おんなのこきらい』を手掛けた映画監督・加藤綾佳が企画したオンライン映画祭(5月20日まで開催)。若手監督たちの作品を一堂に集め、配信を行う。

 全18監督、20本以上の作品を視聴でき、ディスク化されていないものや、未発表作品もあるという。日本の未来の映画界を担う若い才能を発見・発掘する機会にもなることだろう。なお、1作品につき200~500円で3日間視聴でき、本映画祭の利益の一部は、ミニシアターの活動維持の用途で寄付される。作品を観ることが、映画監督の発表の場であるミニシアターを救うことになる、という仕組みだ。

 5月1日の映画祭開始日には、参加監督がこぞって参加したオンライントークイベントも行われた。こちらも、サイト内で視聴できる。

tenohira200503j.jpg

Information
開催中~2020年5月20日 23:59まで。1作品¥200~¥500/3日間。

★★★まだ見ぬ気鋭の映画監督に出会うなら「配信映画祭」へ!5/14より、加藤綾佳監督の未公開最新作品も配信されるので必見。


7、DOKUSO映画館 dokuso.co.jp/home

tenohira200503k.png

「DOKUSO映画館」サイトのキャプチャ画像。

「月額980円でインディーズ映画見放題」を掲げる定額制動画配信サービス。コロナ禍を受けて、4月の売上の100%をクリエイターに還元することを発表した(5月末まで延長中)。

 また、現在では監督・脚本家8人によるリモート映画制作プロジェクト「#おうちで映画制作部」を立ち上げ、クラウドファンディングを実施中。オーディションから公開まで、映画製作の全工程をリモートで行うという。

 現在鑑賞できる作品ラインナップは、辻仁成が、原案・脚本・音楽・監督を手掛けた『FILAMENT』、浅野忠信・永作博美の共演作『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』、日本・ポルトガル・アメリカ合作『ポルトの恋人たち 時の記憶』など。大沢たかおや松田龍平など、人気俳優の初期作を鑑賞できる。

Information
見放題¥980/1ヶ月。

★★★多種多様な映画が気になるポップとともにサイトにずらり。作品を選ぶ時間から楽しめる。


8、「ステイホーム 今だけおうち映画館」 www.videomarket.jp/stayhome

tenohira200503l.png

ステイホーム 今だけおうち映画館」サイトのキャプチャ画像。

 「GYAO!ストア」を運営する株式会社GYAOとヤフー株式会社ほか、5社の合同プロジェクト。「映画業界に対し、動画配信の視聴による収益を還元する」を掲げ、5月1日からスタートした。

 このプロジェクトの最大の特長は、「劇場公開中の作品や劇場公開終了直後の作品」を配信するという点。つまり、コロナ以前はなかなか自宅で観られなかった最新作が自宅で楽しめるのだ。

 『エクストリーム・ジョブ』や『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』といった映画ファンから絶賛された人気作、第75回ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した衝撃作『ナイチンゲール』、公開時に大いに話題となった『Fukushima 50』などが視聴できる。

 価格は1,000円~1,900円と劇場公開相当だが、ミニシアターが近隣に存在しない地域の映画ファンには、朗報といえるのではないか。また、「映画業界を救う」貢献にもつながると考えれば、お得かもしれない。

Information
1作品¥1,000~¥1,900(作品によって価格や配信期間が異なる)。作品は今後も増えていく予定。

★★★気になっていたけど見逃してしまった作品や、この期間に映画館で見たかった作品が見つかりそう。


9、ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金「サンクス・シアター」 motion-gallery.net/projects/minitheateraid

tenohira200503n.png

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」キャプチャ画像(5月3日時点 )。

 『淵に立つ』の深田晃司監督、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が発起人を務めるプロジェクト。同団体が行う「ミニシアター・エイド基金」は寄付額が2億円を突破し、ニュースとなった。

 こちらでは、支援額に応じて特別サイト「サンクス・シアター」で自由に作品を選んで鑑賞できるというリターンを行っている。5,000円で4本、10,000円で8本、30,000円で24本の視聴が可能だ。

 ミニシアター・エイドの強みは、各映画監督の協力による、圧倒的な作品数。深田監督・濱口監督はもとより、『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督や『宮本から君へ』の真利子哲也監督、『溺れるナイフ』の山戸結希監督たちの初期作や、片渕須直監督による『この世界の片隅に』の未公開ドキュメンタリー、染谷将太の監督作など100以上のタイトルがラインナップされている。

Information
開催中~2020年5月14日 23:59まで。クラウドファンディングの「未来チケットコース」で4本¥5,000、8本¥10,000、24本¥30,000/いずれも1年間など。

★★★映画ファンなら必ずときめく特別な作品ラインナップ!


10、STAY HOME MOVIE poetry windows
www.facebook.com/tokyocinema2019/photos/a.492080357956360/842097219621337/?type=3&theater

tenohira200503m.png

「東京シネマサロン」Facebookページより。

 最後に、番外編として一風変わった映画コンペを紹介しよう。東京シネマサロン主催「STAY HOME MOVIE poetry windows」だ。

 こちらは、「中原中也、夏目漱石、シェイクスピアなど歴史上の詩人の中から一編の詩を選択し、『窓から見た外の世界』をテーマに、140秒のテレワーク映画を募集」するもの。

 昨今、行定勲監督をはじめ多くの映画人による「テレワーク映画」が制作されているが、こちらでは「多くの作り手を巻き込む」を目指し、「俳優と監督とスタッフが協力して全ての行程をリモートで完成させる」「監督自身が撮影した映像を使用するのはNG」など細かく規則が定められている。(作品提出締切は5月6日0:00)

Information
作品募集中~2020年5月6日 0:00

★★★会えないことを創造性に変える驚きの企画。応募作の発表も楽しみに待ちたい。

 今回挙げたサービス以外にも、次々と有志によるプロジェクトが立ち上がっている。改めて、国内における「映画」が持つ底力を感じずにはいられない。


関連記事:
手のひらの映画館。オンライン上で見られる映画・映像作品を 映画ライターSYOさんがピックアップ:1

手のひらの映画館。オンライン上で見られる映画・映像作品を 映画ライターSYOさんがピックアップ:2


MAGAZINE

『装苑』2020年5月号、3月28日発売!

calendar

-event -promotion -exhibition

Page Top