手のひらの映画館。オンライン上で見られる映画・映像作品を 映画ライターSYOさんがピックアップ:2

長らく続く外出制限によって、映画館や劇場、美術館はその扉を閉ざしたまま。作品鑑賞のための場所で好きな芸術に触れられる日を心待ちにしながら、今、オンライン上で楽しむことができる映画・映像作品に的を絞り、映画ライターのSYOさんが見どころとともにご紹介します。2回目は、4月26日(日)19:30より、配信上映にて日本初公開される噂の映画について。

The Green Fog(2017年)

movie200424a.jpg

text : SYO

 『めまい』以外の作品で『めまい』を作る――。そんな奇抜な発想で、映画の神様アルフレッド・ヒッチコックに挑んだ映画がある。カナダの映画監督ガイ・マディンらが2017年に作り上げた『The Green Fog』だ。


 The Green Fog、つまり「緑の霧」と題されたこの作品、サンフランシスコで撮影された98本の映画と3本のテレビシリーズの本編映像を使用したものらしい。同じサンフランシスコを舞台にした『めまい』を、同地域で作られた他の映画をサンプリングし、コラージュして再構築するという試み。聞いているだけで胸が躍るようだ。

movie200424_b.jpg

『The Green Fog』より

 そもそも『めまい』は、ヒッチコック作品の中でも非常に有名な1本。冒頭の屋上での追跡シーン、要所要所で挟まれる「人が落下する」ショッキングな描写、「ドリー・ズーム」と呼ばれる空間がゆがむような撮影法等々、後世に与えた影響は数知れない。アカデミー賞を席巻した『パラサイト 半地下の家族』('19年)に顕著な「階段」「高低差」の演出も、本作の影響があると言われている(劇中に、ポン・ジュノ監督の遊び心か、ヒッチコックの作品集が登場する)。

 それをどうやって「リ・イマジネーション」するというのか。興味がそそられるところだが、これが非常に面白い。冒頭の屋上シーンでは『夜の大捜査線』シリーズ('67年、'70年、'71年)などの映像を用い、主人公が雨どいに掴まって難を逃れるシーンに至るまで、他作品から合致するシーンを抜き出して見事に表現している。本作に顕著な運転シーンの"再現"に使われているのは、『男が女を愛する時』('94年)等だろうか。全編に不気味に響く音楽も相まって、ある種パラレルワールド的な『めまい』に見えてくるから不思議だ。

 最も有名な教会のシーンでは、「階段を走って追いかける」から「美女が落下する」まで、複数の映像作品シーンを小気味よく繋いでいる。登場人物も場所も時代も、カラーとモノクロといった映像表現さえバラバラだが、一貫した物語に見えるのはマディン監督の才気と、やはりヒッチコックの『めまい』が観る者の記憶にこびりついているが故であろう。ちなみに本作は、『ピンク・フラミンゴ』('72年)や『ヘアスプレー』('88年)のジョン・ウォーターズ監督による、2018年のベスト10映画にも選出された。

movie200424_c.jpg
movie200424_d.jpg

『The Green Fog』より

『The Green Fog』は、来たる4月26日に日本での初上映を迎える。元々は東京・渋谷のユーロライブにて上映される予定だったが、新型コロナウイルスの影響によりオンライン上映と相成った。オンラインチケットについては、現在特設サイトにて発売中だ。

 およそ経験したことのない、斬新な映像体験をぜひ、ご自宅で楽しんでいただきたい。


movie200424e.jpg

映画『The Green Fog』(1時間3分)
監督 ガイ・マディン、エヴァン・ジョンソン、ガレン・ジョンソン
期日:2020年 4 月 26 日(日) 19:30~21:30 (映画上映+中原昌也と結城秀勇による事前収録のトークも配信)
料金:¥1,500 下記サイトでチケットを購入すると、4月26日(日)19:00頃より限定公開用視聴リンクがメール で送信され、翌4月27日(月)19:00まで視聴することができる。 チケット購入サイト: green-fog-0426.peatix.com/


SYO:1987年福井県生まれ。映画雑誌の編集プロダクション・映画WEBメディアの勤務を経て、ライター/編集者に。Twitter: @syocinema


関連記事:手のひらの映画館。オンライン上で見られる映画・映像作品を 映画ライターSYOさんがピックアップ:1


MAGAZINE

『装苑』2020年5月号、3月28日発売!

calendar

-event -promotion -exhibition

Page Top