クリストの最新作「フローティング・ピアーズ」イタリアの湖上に出現! From Milan

 北イタリア・イゼオ湖の湖上に出現したジオメトリックな黄色の浮き橋!裸足で渡りはじめると、ふんわり沈み込みながら上下左右に揺れる不思議かつ初めての感覚を覚える。
 この浮き橋は、ブルガリア出身の芸術家クリストの最新ランドアート「フローティング・ピアーズ(浮かぶ桟橋)」。クリストとその妻でフランス人芸術家のジャンヌ・クロード(2009年没)が、1970年から構想していたというから、その長期の計画に脱帽だ。浮き橋には、22万個の高密度ポリエチレン製の浮きと、約7万平方メートルの黄色の布地を使用。湖畔の町スルツァーノと、普段は歩いて渡ることができない二つの島(モンテ・イーゾラ島、サン・パオロ島)の間の約3キロメートルを結ぶ。布地は湖畔の町の小道の上にも約1.5キロメートルつながり、全長は約4.5キロメートルになる、摩訶不思議な散歩コースになっている。
 6月18日から7月3日の期間限定のプロジェクトとあって約150万人が訪れた。途中の乗換え駅からのローカル列車は、湖畔近くの駅に人があふれているために出発できず遅延し放題。湖畔に着けば炎天下で2、3時間待ちはあたりまえ。それなのに来場者たちは口をそろえ、「待ったかいがあった。大満足!」とニコニコ顔だった。クリストは「ほかの我々のプロジェクトと同じように入場無料。悪天候時以外は24時間アクセスが可能だ。チケットも開幕式も予約も必要ない。オーナーもいない。フローティング・ピアーズは、町の道の延長であり、みんなのものだ」と語る。
 湖面とほぼ同じ高さをゆらゆら揺れながらゆっくりと歩く。黄色の布がぬれ、みかん色になって輝くのを見て「きれいだな」と思う。街中のようにスマートフォンの画面だけを見つめている人はいない。クリスト、ありがとう!いまだ実現していないプロジェクトもいくつかあるというが、次の作品もとても楽しみになった。

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イゼオ湖に出現した「フローティング・ピアーズ」。


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連日大にぎわい、16日間で約150万人が訪れた。


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左 湖畔の町の小道も布で覆われた。右 昨年行なわれた実験で、浮き橋の揺れを体感してはしゃぐクリスト。
Photo: Wolfgang Volz © 2016 Christo


『装苑』2016年9月号掲載
text : Megumi Takahashi
高橋 恵●ミラノ在住ジャーナリスト。
日本とイタリアの新聞・雑誌にファッションとライフスタイルに関する記事を寄稿。
イタリア国立ジャーナリスト協会会員。繊研新聞ミラノ通信員。

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