大回顧展 「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」 クリエイターが語る石岡瑛子の存在

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映画『落下の王国』ターセム・シン監督、2006年 衣装デザイン
©2006 Googly Films,LLC.All Rights Reserved.


アートディレクターとして、衣装デザイナーとして、時代を切り開いた唯一無二のアーティスト、石岡瑛子さんの世界初の大回顧展が「東京都現代美術館」で開催される。映画、舞台、サーカス、オリンピックなど、世界を舞台に活躍してきた石岡さんの作品展示をはじめ、アートディレクションや衣装デザインに対する数々のプロセスや膨大な資料なども総覧できる絶好の機会となる、この展覧会の見どころをご紹介!


全世界から集めた映画衣装

人間の身体の躍動感を根源にしつつ、「赤」をキーカラーとし、視覚的なインパクトとエモーションを併せ持つ石岡瑛子の衣装デザイン。アカデミー賞を受賞した『ドラキュラ』(1992年)、音楽界で注目を集めたターセム・シン監督とタッグを組んだ『落下の王国』(2006年)や『白雪姫と鏡の女王』(2012年)、また、オランダ国立オペラ『ニーベルングの指環』(1998-1999年)など、ハリウッドをはじめ、世界各国のアーカイブから集められた映画や舞台の衣装を一堂に公開。

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映画『落下の王国』ターセム・シン監督、2006年 衣装デザイン
©2006 Googly Films,LLC.All Rights Reserved.


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映画『白雪姫と鏡の女王』ターセム・シン監督、2012年 衣装デザイン
©2012-2020 UV RML Films dba Rlativity Media.All Rights Reserved


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オペラ『ニーベルングの指環』リヒャルト・ワーグナー作、
ピエール・アウディ演出、オランダ国立オペラ、1998-1999年 衣装デザイン
©ruthwalz


デザインのプロセスに迫る

石岡瑛子の仕事は、マイルス・デイヴィス、レニ・リーフェンシュタール、フランシス・フォード・コッポラ、ビョーク、ターセム・シンなど、名だたる表現者たちとの緊張感に満ちたコラボレーションによって生み出された。そんな出会いによって日本から世界へと活動の場を広げるとともにグラフィック、デザイン、アートディレクション、衣装デザイン、プロダクションデザインまで広げている。集団制作の中で個のクリエイティビティをいかに発揮するかに賭けた「石岡瑛子の方法」を、デザインプロセスを示す膨大な資料とともに紹介し、その秘密に迫る。

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石岡瑛子 ポスター『西洋は東洋を着こなせるか』(パルコ、1979年) アートディレクション


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映画『ミシマ・ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』
ポール・シュレイダー監督、1985年 プロダクションデザイン
Mishima ©Zoetrope Corp.2000.All Rights Reserved./©Sukita


未来をデザインする

オペラや映画、サーカスのコスチュームやオリンピックのユニフォームを通して、身体を拡張し民族、時代、地域などの個別的な属性を乗り越えた、未知の視覚領域をデザイン。永遠性、再生、夢、冒険といった普遍的なテーマを足掛かりに、人間の可能性をどこまでも追及していく後半生の仕事は、常に新たな領域へと果敢に越境し続けた石岡瑛子自身の人生と重ねて感じることができる。

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映画『白雪姫と鏡の女王』ターセム・シン監督、2012年 衣装デザイン
©2012-2020 UV RML Films dba Rlativity Media.All Rights Reserved


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『北京夏季オリンピック開会式』チャン・イーモウ演出、2008年 衣装デザイン
©2008 / Comité International Olimpique(CIO) / HUET,John


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コンテンポラリー・サーカス『ヴァレカイ』
シルク・ドゥ・ソレイユ、2002年 衣装デザイン
Director: Dominic Champagne / Director of creation: Andrew Watson / Set designer: Stéphane Roy / Courtesy of Cirque du Soleil


「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」
会期:11月14日(土)~2021年2月14日(日)
場所:東京都現代美術館
   東京都江東区三好4-1-1
時間:10時~18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
休館日:月曜日(11月23日、2021年1月11日は開館)、11月24日、12月28日~2021年1月1日、1月12日
WEB:www.mot-art-museum.jp


ファッションクリエイターが語る
石岡瑛子が私に与えた影響


飯嶋久美子(スタイリスト・衣装デザイナー)

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 石岡瑛子さんが手がけていたパルコの広告がとても好きでした。ダイナミックなのに繊細で、当時『地球がわたしのスタジオ』と仰っていたスケールの大きさやメッセージ、コピーの強さにも衝撃で、ポジティブなショックを子供ながら受け取っていました。
 
 2001年にリリースされたビョークのアルバム『cocoon』のミュージッククリップを監修されているのですが、私はその作品がいちばん好きです。裸で歌うビョークの口から赤い糸がでてくる映像演出が、彼女自身や楽曲に見事にフィットしていて、今でも鮮明に映像と音楽がよみがえります。石岡さんがディレクションすることのパワーを感じた作品です。敢えて衣装がないのもカッコいいです。
 

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《コクーンのための絵コンテ(ビョーク:コクーン、2001年)》
Collection of Margaret Herrick Library, Academy of Motion Picture Arts and Sciences


 衣装デザインという面でお話すると、私が文化服装学院の学生時代に石岡さんが映画『ドラキュラ』(1992)でアカデミー賞(衣装デザイン賞)を受賞されたニュースを見ました。それから、衣装デザイナーとしての石岡さんに憧れるようになりました。衣装のあり方が物質的ではなく、魂が宿っているように見える、どの作品にも石岡さんを感じることが出来るというところがシンプルに魅力です。また、一貫したデザインはもとより、時代や価値観を変えていくパワーがみなぎっていること、妥協しない姿勢が感じ取れるところにもいつも刺激を受けていました。
 
 10年前くらいになりますが、女優の桃井かおりさん、スタイリストで衣装デザイナーの伊藤佐智子さんと食事をしていた際に石岡さんの話題になり(桃井)かおりさんが私たちに「あなたたちが石岡瑛子に続いていかないと!」と言われて、私は憧れるだけではなく、自分なりの方法で目指すのだと決心しました。
 
 日本で開催される回顧展は必ず見に行きます。作品を直接見られることも嬉しいですが、石岡さんのクリエイションに対する信念や美学を感じられたらという期待があります。


●Kumiko Iijima
文化服装学院アパレル技術科を卒業後、スタイリストおよび「VOGUE JAPAN」でのアシスタントを経て、2000年にスタイリストとして独立。エディトリアル、広告、映画、音楽、舞台など国内外で多岐にわたり活躍。現在、POTESALA主宰。



成田 久 (SHISEIDOアートディレクター・アーティスト)

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 石岡瑛子さんは、実は僕の大・大先輩となる存在です。SHISEIDOにいらした60年代に手掛けられた、サマーキャンペーンのポスターは今でも語り継がれるインパクトある作品です。"BEAUTY CAKE 太陽に愛されよう"太陽の光が降り注ぐ青い空の下、褐色の肌と白い水着を着た前田美波里さんが熱い視線を向けて横たわる姿は、凛として強く美しい。信念を持って突き進む創り手、また開拓者として学ぶべきことは本当に多くあります。
 
 世に発信してきたものの多くを知らないだけで、自然と目に触れていたはずだとは思いますが、僕が初めて石岡さんの存在を知ることができたのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ドラキュラ』(1992)の衣装で第6回アカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞されたときでした。以降、石岡さんが衣装やディレクションを手掛ける作品に注目していくようになりました。
 


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映画『ドラキュラ』フランシス・F・コッポラ監督、1992年 衣装デザイン
©David Seidner / International Center of Photography


 中でもいちばん大好きな作品は映画『THE CELL』(2000)。映画館へ観に行きました。監督のターセム・シンの初の映画作品であり、初めて石岡さんとタッグを組んだ作品という。まさにART映像。恐ろしく美しく、格調高いコスチューム群やその美学に圧倒されました。そして何よりコスチュームを纏うジェニファー・ロペスが美しい!!!
 
 石岡さんの衣装デザインは、作品に対するコンセプトだけでなく、ゆるぎない意思や威力のようなものを感じて見入ってしまう。誰も見たことのない享楽で驚愕の世界を創るKINGの世界のような力強さです。それは世界遺産のようでありながら、現代でも最先端のように色褪せないPOWERでもある。
 
 回顧展は僕にとって、パラレルワールドに入るようなワクワクした気分!関わった映像作品も全部上映してほしいくらいです。そして、これまでの石岡さんのクリエイティブをどのように展示演出されるのかも、とても気になっています。まさにご本人の演出で見たかった!


●Hisashi Narita
資生堂アートディレクター、アーティスト。愛称はCUE。自身のギャラリー「キュキュキュカンパニー」の運営やアート活動、舞台衣装制作など幅広いクリエイションで活躍。装苑でカルチャーコラム「CUEの勝手に舞台ソムリエ」を連載中。

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