【From パリ支局】「SUGIMOTO VERSAILLES」展、ヴェルサイユ宮殿に杉本博司が挑む!

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今年で11回目を数えるヴェルサイユ宮殿の現代美術プロジェクトに日本を代表する現代アーティストの杉本博司が選ばれ「スギモト・ヴェルサイユ(SUGIMOTO VERSAILLES - Surface of Revolution)」展が開催されている。

実は、宮殿で現代アートの展覧会を開催することに反対する声も多いのだ。「宮殿そのものが既にアート作品であるのに、その他のものは鑑賞の邪魔になるだけ」というのがその理由。また、カトリーヌ・ぺガール(ヴェルサイユ宮殿・博物館館長)も「うわべだけの張りぼては一切受けつけられない。ヴェルサイユの持つ強い力は、時には私たちの意向などお構いなしにそれを拒絶するだろう」と語っている。そんなヴェルサイユ宮殿での個展開催のプロポーズを受けた時に、杉本は「よし、やってやろうじゃないか!」と決心したという。

ヴェルサイユ宮殿の広大な敷地の中から杉本が展示場所として選んだのはトリアノン区域。ルイ14世の私邸であった大トリアノン、ルイ16世が妻のマリー・アントワネットに贈った小トリアノンなどの離宮があり、ベルヴェデール亭、王妃の劇場、フランス館などが立つ、王族がプライベートな時間を過ごした空間だ。

その空間で杉本は作品をどのように紹介しているのだろうか?彼自身の言葉を通して観ていこう。

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小トリアノン宮殿


「私は日本の中世以来の演劇形式である『能』が、舞台上に死者の魂を亡霊として呼び出し語らせるように、この小トリアノン宮殿を能舞台に見立てて、ヴェルサイユを訪れた過ぎ去りし人々の霊を蝋人形として呼び寄せてみることにした」

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エリザベス2世(左)とプリンセス・ダイアナ


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ルイ14世(写真)


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亡くなる10年前に、ルイ14世から直接型を取り制作された蝋のレリーフを撮影した作品


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サルバドール・ダリ


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ヴィクトリア女王


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昭和天皇


「(ベルヴェデール亭の)床面に施されたモザイクのタイルには双曲線や楕円が散りばめられ、古代ギリシャに始まったユークリッド幾何学の精髄が表わされている。・・・私はこの部屋に双曲線関数で示される数理模型を最新の工作精度で削りあげ、非ユークリッド幾何学側の ものとして展示してみることにした。革命(Revolution)とは回転を意味する数学的概念でもある」

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『Surface of Revolution』


この小劇場はマリー・アントワネットの発案、建築家リシャール・ミークの設計により1780年に完成している。革命までの5年間に彼女はこの劇場の為の作品を何人かの作曲家にコミッションしている。「私は私自身にこの劇場の為のコミッションを出すこととした」

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王妃の劇場。ここでマリー・アントワネットは自ら芝居を演じた


杉本は「王妃の劇場」の舞台に設置したスクリーンに、ソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』(2006年)を映し、上映中のスクリーンを撮影。その作品は「王妃の劇場」のロビーに展示される。

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『王妃の小劇場』


「私はこのヴェルサイユ宮に仕えていた蝋人形師、マリー・グロシュルツとは浅からぬ因縁で結ばれている。彼女はルイ16世の妹、皇女エリザベート付きのアートチューター(絵や造形の家庭教師)として仕え、後にロンドンに移りマダム・タッソーとして知られるようになる。マリー・グロシュルツは蝋人形師としてヴェルサイユ宮に仕え、革命政権にも奉仕し、ナポレオンにも重用されて、当時の著名人の蝋人形を、時には生きた人物から型を取り、時にはギロチンで撥ねられた生首から型をとって生き写しの蝋人形を作った。私は当時この宮殿に立ったであろう3人の人物をこの場に呼び戻すことにした」

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フランス館


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ナポレオン・ボナパルト


「(マリー・アントワネットが)羨望、嫉妬、誹謗、中傷の渦巻く宮廷社会の中で心の安らぎを得られる場、それはロココ趣味の宮殿ではなく、彼女が自ら望んで建てさせたMaison de la Reine(王妃の家)と呼ばれる田舎家だった。・・・堺で商人の子として生まれた千利休も、権勢と豪奢の極みの中で生き、そんな生き方に疑問を呈した芸術家だった。・・・私はマリー・アントワネットの住んだ田舎家の近くに、利休の意を受けて作った私の現代のミニマル茶室を据えてみようと思った」

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プラ・フォン池の茶室『聞鳥庵/モンドリアン』


他にも、フランス人ダンサー、オレリー・デュポン(パリ・オペラ座のエトワール、バレエ芸術監督)が杉本が設立した「小田原文化財団 江之浦測候所」で、日の出と共に踊るパフォーマンスビデオを大トリアノン宮殿で上映。

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『Breathing』


「スギモト・ヴェルサイユ」と、二つの名が対等に並んだ展覧会。そのタイトルが示す通りに杉本の作品はヴェルサイユ宮殿という入れ物の中で、一歩も引くことなく対話をし、観る者を力強く惹きつけている。


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杉本博司


杉本博司(SUGIMOTO HIROSHI)
世界的な現代美術家、1974 年よりニューヨーク在住。活動分野は写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理と多岐に渡る。代表作に『海景』、『劇場』、『建築』シリーズなどがある。構想から10年の歳月をかけた文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を2017年10月に設立。


SUGIMOTO VERSAILLES - Surface of Revolution
期間:〜2019年2月17日(日)まで
場所:ヴェルサイユ宮殿内トリアノン区域
   Château de Versailles Domaine de Trianon
会館時間:12:00〜17:30
休館日:月曜
トリアノン区域及び展覧会入場料:12 ユーロ
TEL:+33 (0)1 30 83 78 00
HP:www.chateauversailles.fr/actualites/expositions/sugimoto-versailles#lexposition

Photographs:濱 千恵子(Chieko HAMA)
Text:B.P.B. Paris

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