【From パリ支局】建築家・石上純也、一人ひとりの理想をかたちに

―文化出版局パリ支局より、イベントや展覧会、ショップなど、パリで日々見つけたものを発信。

パリのカルティエ現代美術財団で、石上純也の個展「Freeing Architecture(自由な建築)」がスタートした。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞を受賞するなど、輝かしい経歴を持つ石上は、世界が注目する若き日本の建築家だ。

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カルティエ現代美術財団。ひとりの建築家に焦点を当てた展覧会が開かれるのは今回が初めて。


これまで石上は、神奈川工科大学「KAIT工房」をはじめ、オランダの歴史ある公園のビジターセンターや中国・山東省の谷底に立つ教会「谷のチャペル」など、国内外のプロジェクトを手がけている。いずれも周囲の環境をいかし、使う人の目線でデザインされた空間や建物である。本展で紹介されるのは、これらを含む20のプロジェクト。その中にはすでに完成しているものと、2〜3年後に竣工を迎えるものがある。

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手前は、オランダのビジターセンター「PARK GROOT VIJVERSBURG」(2012 - '17)の模型。奥の巨大な白い柱は、中国・山東省で建設中の教会「谷のチャペル(CHAPEL OF VALLEY)」(2016 - )。


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Vijversburg公園を上から見たデッサン(上)とビジターセンターの完成写真。昔からの自然の風景を壊さないために散策路をそのまま使い、柱のないガラスの建物が造られた。


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高さ45m、コンクリートの壁がそびえ立つ「谷のチャペル」。幅1.3mの入り口から奥へ進むと天井から降り注ぐ光の量が徐々に増えていく幻想的なデザインである。


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山東省の湖の上に立つ文化施設の模型(上)とデッサン。1キロの散歩道が向こう岸まで続く。(2016 - )


ガラスを隔て庭園が見渡せるカルティエ財団の建築は、巨匠ジャン・ヌーヴェルによるものだが、そこで行われる展覧会にあたり、石上はひとつのプロジェクトに取り組むように、空間の使い方を考えたという。

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海に浮かんでいるような礼拝堂「平和の家(HOUSE OF PEACE)」(2014 - )。訪れる人たちは小舟に乗ったまま祈ったり、瞑想したりする。コペンハーゲンの港エリアに建築中で、夏は窓を開けて風を取り込み、冬は太陽で温められた海水が内部を暖める構造になっている。


建築の展覧会というと堅いイメージに寄りがちだが、ここから感じられたのは、どこか温もりのある夢やファンタジー。会場には展示のために特別に作られた大小の模型が並び、石上自身の手書きによるポエティックな解説文と共にプロジェクトのひとつひとつが紹介される。ものがたりを語りかけるようなデッサンも魅力だ。

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"昔からあるような"というクライアントからの要望に応えて構想された洞窟のような住居兼レストラン(2013 - )。


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隣の森を移した水田のような庭「BOTANICAL FARM GARDEN ART - BIOTOP / WATER GARDEN」(2013 - '18)。プロジェクトのイメージを伝える手書きの文(下)は、石上さんによるもの。味のある文字が印象的。


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神奈川工科大学「KAIT工房」(2004 - '08)。


現在関わっているプロジェクトの8〜9割が海外という石上は、展覧会の開催に際し次のように語っている。

「誰もが簡単に繋がることができて、どこへでも行ける今の時代、スタイルや潮流を作るというのが建築家の役割ではないと僕は思っています。多くの価値観に対応できる建築をどうゆう風に作っていけるのかを考えたい。例えば100年前の近代建築の時代は、できるだけ多くの人へ提供するためにプロトタイプ(見本)を作ることが重要でした。マスプロダクト的な建築のあり方を考えていた時代です。当時は、皆が理想とする未来像や夢の方向性がある程度似ていたのだと思いますが、現代においては理想とするものが個々で違っています。田舎に住みたい人、都会に住みたい人、火星に行きたい人もいるくらい様々なバリエーションの価値観がある。その中で、単にひとつの理想を掲げて、プロトタイプ的なものを作るだけでは、今の建築家としての役割を果たせないのでは、ということから、できるだけ多くの種類の建築を多くの方法で作っていくべきではないかと考えています。その幾つかの例として、この展覧会を見てもらえたらと思います」

壮大なプロジェクトをぐるりと見渡せる空間は、たくさんの理想が集まる石上建築の小宇宙のようである。

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ファッションセンスも抜群な石上純也さん。「今回の展覧会では、できるだけ多くの価値観に対して、どうゆうリアリティを提供できるかを見せたい、ということが目的のひとつになりました」


石上純也(いしがみ・じゅんや)
1974年生まれ、神奈川県出身。東京藝術大学大学院修士課程修了後、妹島和世建築設計事務所を経て、2004年に石上純也建築設計事務所を設立。2009年に日本建築学会賞(作品)、BCS賞(建築業協会賞特別賞)を、2010年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞、毎日デザイン賞を受賞するなど、数々の賞を受賞。


Junya Ishigami
Freeing Architecture

期間:開催中〜2018年6月10日(日)
会場:カルティエ現代美術財団(Fondation Cartier pour l'art contemporain)
   261 Boulevard Raspail, 75014 Paris
時間:11:00〜20:00(火曜〜22:00) 月曜休
入場料:10.50ユーロ
TEL:+33 1 42 18 56 67
WEB:www.fondationcartier.com
*4月12日(木)20:30〜21:30のサイン会情報あり。是非チェックを!

Text&Photographs: B.P.B. Paris

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