≪WEB連載第十二弾!≫今月の「能町みね子の 雑誌の人格」で取り上げるのは、伊達ワル男たちのためのファッション誌『メンズ・ナックル』です!

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『装苑』は2018年3月28日(水)発売の4・5月合併号より、奇数月28日発売の隔月刊となりました。ですが、本誌の人気連載「能町みね子の雑誌の人格」は、今まで通り毎月読者の皆様に楽しんでもらえるよう、『装苑』が刊行しない月は「装苑ONLINE」でも連載をスタートしました!

「装苑ONLINE」連載十二弾は、伊達ワル男たちのためのメンズファッション誌、『メンズ・ナックル』です! 能町さんが描き出したメンナクさんってどんな人?


「雑誌の人格」とは?
イラストや文筆の活動に加えTVやラジオ等でも活躍中の、今注目の漫画家、能町みね子さんの連載企画。2010年1月号より連載を開始し、2013年に書籍の第1弾『雑誌の人格』、2017年12月22日に待望の第二弾『雑誌の人格 2冊目』が発売された『装苑』の人気連載です。
能町さんが独自の視点で選んだ、今面白い雑誌と、その雑誌を取り巻く読者や周辺カルチャーを、独断と偏見でプロファイリング。イラストと文章で紹介します。



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今月取り上げる雑誌
『メンズ・ナックル』


¥630 発行・発売:大洋図書

2003年に「men's egg」の増刊として誕生し、翌'04年に雑誌名を「メンズ・ナックル」に変更して本格的にスタートを切った、伊達ワル男たちのためのメンズファッション誌。モデルにはホストクラブでも人気の高い有名ホストたちが名を連ね、オリジナリティあふれるアウトローなスタイルを披露する。ストリートスナップのキャッチコピーがユニークなことからネットでも話題になり、一躍「メンズ・ナックル」をメジャータイトルに押し上げた。毎月24日発行。


能町みね子=文 text & illustration : Mineko Nomachi


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「ガイアが俺にもっと輝けと囁いている」などの衝撃的コピーで、ネット上で一世を風靡した「メンズ・ナックル」(以下、メンナク)。あれからすでに、12年! 今しっかり読んでみたい。
 
メンナクの全体を通じてのテーマは「香り立つセンスを持つ男達」。このコピーからしてまだまだ「香り立つ」ものは感じます。表紙でまず驚くのは文字のすさまじい多さ、というか細かさ。ある号では、表紙上の文字数が600字弱。細かい字で、記事内容をおおまかに説明した「リード」まで載っているのです。珍しい。
 
表紙を読む限り、メンナクさんはシンプルに「モテたい」ようです。そして「成功、勝ち上がる」などの言葉もよく見られます。本文に登場する読モにあたる人はほぼホスト。読者に成り上がり欲が強いのは当然でしょう。
 
さて、例の強烈なコピー以前に、この雑誌にはそもそも独特の用語が多い。読モの肩書き代わりに掲げられるのは「年間1億2500万プレイヤー」などの数字。ホストとしての売り上げが最も他のオスを威嚇できるわけです。そのわりに源氏名は「越前リョーマ」とか「江戸川コナン」とか、キャラクター名そのままだったり、「伝説の頭(ヘッド)翔」なんてものであったり、少々脱力系。
 
そして意外なのは、文章のおじさん臭です。読者を「諸君」と呼んだり、文末が「~なのであ~る!!」だったり。本文の記事中には「香る男の知恵袋」としてやたら注釈が入るのですが、「ジトジト不快な季節」というごく普通の言葉にもなぜか注釈があり、それを読むと「7月から9月後半までの暑さが辛い時季を指す。(略)意識の差が秋モテの勝敗を分けるカギになるのであ~る!!」と、当然すぎて拍子抜けすることが書いてある。この雑誌、ものすごく不思議なバランスの上に立っている!
 
紹介されるファッションもバランスが独特。よく出てくるブランドがJURY BLACK、BACKSIDE OF TOKYO......あまり聞いたことがないけれど、全体的に黒い。価格帯はどんなものでもせいぜい1万円前後で、比較的安価です。時計に至っては紹介されるショップリストがほとんどドン・キホーテ。その一方で、モデル私物にはシャネルやエルメスなどハイブランドのロゴがバーンと出ている数百万の時計やアクセサリー類が平気で登場します。落差がとんでもない。

さて、メンナクの中でも少々毛色の違うコーナーが「オールモスト モノクローム」です。ここのファッションはホストよりビジュアル系的で、価格帯もやや高め。
 
いや、しかし、もしかしたら読者にはこの2つの区別がつかないのかも?
 
そういえば誌面のホストたちも、正統派、アニメから抜け出してきたようなアイドルっぽい子、ギラギラした黒い顔の兄貴(レア)など実に様々です。メンナクさん、もしかして「ホストっぽい、成功者っぽい感じ」に漠然と憧れているだけで、ファッションの方向性は意識していないのかな。
 
ということでメンナクさんは、価格的にもセンス的にも、地方の「ちょいワル中高生」がメインターゲットであろうと思われる。ファッションはよく分からない、漠然と「都会的な成功者」としてホスト的なるものに憧れを抱いている青年たち。
 
ところで、例の「名コピー」群は今、「四世紀中頃の某古墳には俺が描かれている。全ての起源だと」「アラブの国ってどこもかしこもスタンスタン言ってるよな」「最近俺のドッペルゲンガーがパプリカ畑でLemon食べてピースサイン」など、だいぶ暴走しています。もう少し原点回帰してもいいんじゃないでしょうか......(笑)。

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能町みね子
Mineko Nomachi


能町みね子 Mineko Nomachi 文章やイラストの仕事のほうが多い漫画家。雑誌やネット媒体で、コラムなどの連載多数。著書に『私以外みんな不潔』(幻冬舎)、『文字通り激震が走りました』(文春文庫)、『中野の森BAND』(ロフトブックス)など。この連載を書籍化した『雑誌の人格』の第2弾、『雑誌の人格 2冊目』も発売中!
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※次回の「能町みね子の雑誌の人格」は、2019年11月28日(木)発売の『装苑』2020年1月号にて掲載です!お楽しみに!

関連記事:「能町みね子の雑誌の人格」第一弾第二弾第三弾第四弾第五弾第六弾第七弾第八弾第九弾第十弾第十一弾




書籍も好評発売中!
『装苑』の連載をまとめた『雑誌の人格』シリーズも好評発売中!!書籍だけの特別付録や手の込んだ装丁も魅力です。ぜひお手に取ってご覧ください。

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『雑誌の人格 2冊目』
能町みね子著
¥1500+税 文化出版局刊

2013年6月号~2016年8月号までに『装苑』に掲載された39媒体に加え、2014年5月号の特別編、「渋谷パルコの人格VSラフォーレ原宿の人格」を収録。書籍化にあたり、新たに雑誌ごとのプロフィールやバロメーター、描き下ろし「もし雑誌の人格たちが同じ高校の同じ教室にいたら...」も収録!

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『雑誌の人格』
能町みね子著
¥1500+税 文化出版局刊

2010年1月号~2013年5月号までに掲載された40媒体に加え、特別編として、『装苑』の人格と「女性誌の勢力図」を収録。書籍化にあたり、新たに「プロフィール」や雑誌ごとの「人格マップ」も加筆、収録!

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『装苑』2019年11月号、9月28日発売!

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