≪WEB連載第十弾!≫今月の「能町みね子の 雑誌の人格」で取り上げるのは、25歳以上のためのビューティ&生き方雑誌『姉ageha(お姉さんアゲハ)』です!

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『装苑』は2018年3月28日(水)発売の4・5月合併号より、奇数月28日発売の隔月刊となりました。ですが、本誌の人気連載「能町みね子の雑誌の人格」は、今まで通り毎月読者の皆様に楽しんでもらえるよう、『装苑』が刊行しない月は「装苑ONLINE」でも連載をスタートしました!

「装苑ONLINE」連載第十弾は、能町さんが「雑誌の人格」の連載第1回目で取り上げた『小悪魔ageha』の姉妹誌、『姉ageha(お姉さんアゲハ)』です!能町さんが描き出した姉アゲハさんってどんな人?


「雑誌の人格」とは?
イラストや文筆の活動に加えTVやラジオ等でも活躍中の、今注目の漫画家、能町みね子さんの連載企画。2010年1月号より連載を開始し、2013年に書籍の第1弾『雑誌の人格』、2017年12月22日に待望の第二弾『雑誌の人格 2冊目』が発売された『装苑』の人気連載です。
能町さんが独自の視点で選んだ、今面白い雑誌と、その雑誌を取り巻く読者や周辺カルチャーを、独断と偏見でプロファイリング。イラストと文章で紹介します。



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今月取り上げる雑誌
『姉ageha(お姉さんアゲハ)』


¥722 発行:medias 発売:主婦の友社 WEB: mediasjp.com/aneageha

2010年に創刊の「小悪魔ageha」の姉妹雑誌「姉ageha(お姉さんアゲハ)」。ʼ14年に一時休刊の後、復刊。専属モデルには「小悪魔ageha」でも活躍した荒木さやかを筆頭に、華やかでタフで美しい女性たちが集結。誌面では、磨き上げたビューティを披露するとともに、奥底に秘める様々な悩みや壮絶な人生経験を赤裸々に開放することで、迷える読者たちに「わたしたちはもっと自由でいい」というメッセージを発信する。女性の生き方を考える雑誌。偶数月7日発売。


能町みね子=文 text & illustration : Mineko Nomachi

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『姉ageha(お姉さんアゲハ)』は、肝心の雑誌名すら誌面であまり統一されていないという自由な雑誌です。「若くもないけどおばさんでもない!25歳以上のお姉さん世代のためのビューティ&生き方雑誌です♡」と、長文ですが、ここまでが固定のキャッチフレーズです。

表紙には、不安定な心を表すかのようにさまざまな大きさで文字が躍っています。この長文コピーが非常にターゲット世代の心を刺すと言うことで、最近話題になりました。今年1月号では「私はかわいい、私はかわいい。誰がなんと言おうと私は絶対にかわいいから大丈夫」。3月号では「『もう○○歳だから』この言葉で、今までどれだけの心が殺されてきたんだろう?」――他人からの偏見に満ちた目に負けない女の子の強い気持ちを常に語っています。自らが言うように、この雑誌はファッション誌というより「生き方雑誌」なのです。

姉agehaは、外見も中身もぎゅうぎゅう。本文には「♡」がたくさん登場し、メイクのページでも顔の周りにふんだんにキラキラが散らされています。文字はかなり小さく、時には可読性が微妙なほどですが、きっと若者の視力なら問題なし。ノンブルにも毎ページ異なる指輪のデザインが施されているなど、隅まで抜かりがありません。ファッションに関して特徴的なのは、価格帯に異様に幅があること。服に関してはプチプラが多いのに、バッグや時計は一点豪華主義でハイブランド、という例がよく見られます。かつての小悪魔agehaの流れを汲んで、夜のお仕事の方も多いのでしょう。 整形手術のハードルは非常に低く、記事も豊富です。「整形は恥ずかしいこと」という観念はすでにダサいものとなっており、かなり背中を押されそうです。アンケートによれば、整形をしたメリットはかわいくなれたことよりもメイクが楽になったことのほうが大きく、整形の目的はもはや「効率」。カラコン装着率もほぼ100%です。

ところで、姉agehaは、文字要素以上に「実際例・具体例」でぎゅうぎゅうの雑誌です。お姉さん(本誌では、読者層をこの言葉で呼びます)たちのファッションやバッグの中身はもちろんのこと、整形の術前・術後写真、恋愛や結婚・出産の経験談(浮気やDV含む)、はたまた「好きな箱ティッシュ」ランキングまで、「実際」の宝庫です。専属モデルには既婚/未婚や子供の有無が明記され、帰宅してから寝るまで5分ごとに何をしているか、動画のごとき詳しさで説明されています。これらはアンケートやインタビューを基にして、膨大に、詳細に語られています。

さらには、表紙の自己肯定感たっぷりのメッセージから考えれば意外ですが、姉agehaは保守的な一面もよく見せてきます。アンケートによれば結婚願望は強く、子供がたくさんいる古典的かつ漠然とした幸せな家庭像に憧れているようです。読モの中には、家では座ったら動かない彼のために歯まで磨いてあげるという、すさまじい「尽くし体質」の女性も登場します。

つまり、姉アゲハさんは、世間からの漠然とした「女性・母親はこうあるべき」という偏見や圧力に対しては抵抗したいけれど、恋愛に関してはわりと古典的なふるまいをしてしまうというジレンマの中にいます。一人の女として強くありたいし、基本的にはフェミニストなのに、個人的な話となると彼氏・夫には夢中になって依存しちゃう。そんな自分がやや不安定なことも分かっているから、ほかの「お姉さん」たちの大量の具体例を見て参考にし、安心したいんですよね。


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能町みね子
Mineko Nomachi


能町みね子 Mineko Nomachi 文章やイラストの仕事のほうが多い漫画家。雑誌やネット媒体で、コラムなどの連載多数。著書に『私以外みんな不潔』(幻冬舎)、『文字通り激震が走りました』(文春文庫)、『中野の森BAND』(ロフトブックス)など。この連載を書籍化した『雑誌の人格』の第2弾、『雑誌の人格 2冊目』も発売中!
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※次回の「能町みね子の雑誌の人格」は、2019年7月26日(金)発売の『装苑』2019年9月号にて掲載です!お楽しみに!

関連記事:「能町みね子の雑誌の人格」第一弾第二弾第三弾第四弾第五弾第六弾第七弾第八弾第九弾




書籍も好評発売中!
『装苑』の連載をまとめた『雑誌の人格』シリーズも好評発売中!!書籍だけの特別付録や手の込んだ装丁も魅力です。ぜひお手に取ってご覧ください。

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『雑誌の人格 2冊目』
能町みね子著
¥1500+税 文化出版局刊

2013年6月号~2016年8月号までに『装苑』に掲載された39媒体に加え、2014年5月号の特別編、「渋谷パルコの人格VSラフォーレ原宿の人格」を収録。書籍化にあたり、新たに雑誌ごとのプロフィールやバロメーター、描き下ろし「もし雑誌の人格たちが同じ高校の同じ教室にいたら...」も収録!

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『雑誌の人格』
能町みね子著
¥1500+税 文化出版局刊

2010年1月号~2013年5月号までに掲載された40媒体に加え、特別編として、『装苑』の人格と「女性誌の勢力図」を収録。書籍化にあたり、新たに「プロフィール」や雑誌ごとの「人格マップ」も加筆、収録!

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