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2016年で創刊80周年を迎えるファッション誌『装苑』編集部によるブログ。ファッション、音楽、アート、漫画、フード、イケメン、デートスポットなどなど、それぞれの編集スタッフが好きなテーマを掲げて、いつもよりちょっと軽いタッチで日替わりコラムを更新していきます。たまに、お知らせも!

まんが大スキ!! vol.1 一条ゆかり『女ともだち』

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時代もジャンルも世間の評価も隅に置いて、きっと誰かのマスターピースになる漫画を、絶対評価で紹介していきます。

一条ゆかり『女ともだち』(集英社)

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 「男の友情」とは良く言いますが「女の友情」ってあまり聞かないですよね。「男の友情」というと大抵体育会系のイメージで「同じ目標に向かって努力した!」みたいな安直な感じがありますが、それを魅力的に描いた名作は古今東西たくさんあります。では「女の友情」とは?今日の漫画は『女ともだち』です。

 一条ゆかりの名前は、少女漫画を読んできた人なら知らない人はいないでしょう。『りぼん』全盛期を支えた漫画家の一人で、代表作『有閑倶楽部』は今でも『コーラス』(現『Cocohana』)に舞台を移して不定期連載するほど、長きに渡りファンを虜にしています。ドラマ化された『砂の城』『デザイナー』や、映画化された『プライド』など、漫画をあまり読まない人でもその名前を知っている人は多いのでは?

 一条ゆかりは「女の友情」を描くのが抜群に上手な作家です。例えば、代表作『有閑倶楽部』の主役となる6人のメンバーのうちの2人の女の子、悠理と野梨子。悠里は運動神経抜群の男勝り、野梨子は舞踊茶道を極める文化系と、正反対の性格ですが、互いの領分をわきまえながら嫌みを言ったり褒め合ったりする2人の関係性に、たまらなく理想的な女同士の友情を感じます。

 今回取り上げる『女ともだち』も、映画役者として四苦八苦しながら成長する2人の女の子の友情をメインに、それをとりまく人々の群像を照らし出す作品です。

 主人公菜乃は幼い頃に両親を亡くしてから、落ち目の30代女優である叔母の世話をしながら暮らしています。菜乃は、はっきりとものを言い、可愛げないなどと男子に言われてしまうような女の子、叔母のように女優の道に進むなどちっとも思っていません。一方、菜乃の親友のこずえは、女優を目指している女の子。いつも自信なさげですが、とても優しく気遣いができ、お嫁さんにしたいとみんなに言われるような女の子です。正反対の性格の2人ですが、互いの自分にない部分に惹かれあう、親友同士です。

 2人はひょんなことから、同じ映画に役者として出ることになってしまいます。この映画の撮影を通じて、お互いに恋愛をしながら、時に決裂し、時に和解し、思い悩みながら、友情を紡いでいきます。

 ここまでの解説で展開は予想がつくかもしれませんが、菜乃とこずえの親友同士は、ともに同じ役者の男の子を好きになってしまいます。「女同士の友情は血よりも濃くて恋よりも薄いのが常識よ」という本作屈指の名ゼリフがありますが、2人がこのセリフをいかに乗り越えていけるかが、作品を盛りあげます。

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 でも、この作品に描かれているのはこの2人の友情だけではありません。「母娘の友情」という複雑なテーマをポップに描くのがこの作品の見どころ。今はどうしようもなく見えるこの母も、かつては思い悩む若い自分のように、恋と友情に苦しみながらも決断を続けてきたということ。それを受け入れられたときに、母と娘の関係は友情に変わるのではないでしょうか。

 登場人物全員が、今にも飲みに行きたくなるほど生き生きと描かれます。彼ら彼女らの感情の起伏がありありと読み手に伝わってきますし、だからこそ困難を乗り越えた友情に、心が動かされます。

 同じ目標に向かっていくことで深まる友情はありますが、同じ相手を好きになってしまうと友情は大きな危機を迎えます。そこで思い悩み、成長して、大人になる。この作品には大人になったからこそ大切にしたい友情が描かれています。

 出会いと別れの季節に一条ゆかり『女ともだち』、いかがでしょう。


一条ゆかり『女ともだち』(集英社文庫・全2巻)




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Editor profile

安原まひろ
1987年神奈川県生まれ。学校では文学や芸術などお金にならないことを学ぶ。食とカルチャーを愛でつつ『装苑』編集部で女子力を磨く日々。



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