前回に続き、「村木るいさんの人に話したくなる革の話」最新更新分に加筆しご紹介します。
レザーファンにお馴染みのイベント「本日は革日和♪」、人気ショップ「レザークラフトフェニックス」(大阪・奥なんば)を通して、ジャパンレザーの情報発信に信頼が寄せられる 村木るいさんの最新まとめ記事が好評! ご了解いただき、当ブログでシェアさせていただきました。
革製品のお手入れって大変そう。でもやってみたい、という人向けの話
そもそも革製品の手入れってなんでやらなきゃいけないの?
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」良い革の定義は難しい・悪い革の定義は簡単 | | JLIA 日本皮革産業連合会
上記blogでも解説していますが、長い年月放置した革は油分・水分が切れてしまいカサカサになります。
人間もお風呂上がりに乳液をパックして保湿しないと、肌はカサカサになっていきます。革の手入れも同じです。
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これ一つで全部の革製品をケア出来る、という魔法の品はない
革製品といっても靴・鞄・財布ではダメージを受ける部分、ダメージの種類などが異なります。そのため「これだけやっていたら十分!」「この製品で全部ケアできます!」ということはありえません。
なにかしらのブランド品ならば、購入店舗で「お手入れはどうしたら良いですか?」と聞くのが一番です。
お手入れ商品が売っているお店で購入しよう!という場合は、実際にケアする品を持っていって店員さんに聞いてください。店員さんいわく「実際の商品なしに~~のブランドの革財布をケアするにはどれを使えば良いんですか、とか、ブーツケアにはどのクリームが良いんですか、と聞かれても実物見ないと判断できないんですよ」とのことです。
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革靴ならば日常でこの程度やっておくだけでも違います
革靴ならば靴用ブラシ(数百円)を購入し、数日に一度ホコリをはらっておくだけでも違います。
靴の場合は、甲部分と底部分の接合部などに汚れが溜まりやすいので重点的にホコリをはらってあげてください。
日本で革製品を使う上で恐れるのはカビです。特にこれからの時期は湿度が高まりカビやすくなります。
除湿剤などを靴に入れておくと、袋から除湿剤が漏れて革に付着すると革にダメージが起こりえますのでお気をつけください。
靴の形をした木製のシューキーパーは、靴の型崩れ防止と湿気取りという役割があります。大事な靴の場合は数日に一度シューキーパーを付けるのも手です。
きちんと手入れをしてみたい!と思ったら下記を見てみてください。スターターセットの宣伝ではあるんですが、コロンブスさんのお手入れ動画などもまとまっています。
【前編】靴をキレイにしてみよう!初心者さんへもオススメのスターターセット。 | phoenix blog
革鞄ならば日常でこの程度やっておくだけでも違います
定期的に中の荷物を出してホコリを払ってあげてください。毎日掃除する必要はないですが、数週間に一度は行ったほうが良いです。
雨で濡れた場合などは、100均で買える洗濯ネットなどに新聞紙を入れたものを革鞄の中に詰めてください。型崩れ防止になります。濡れた革製品は日陰でゆっくりと乾燥させてください。天日干しをしてしまうと革が痛みます。
革の鞄はクリームやオイルでケアしますが、マチ部分などの細かい可動部分のケアを忘れがちです。この部分は一番良く動くのでケアを忘れないようにしましょう。
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革財布ならば日常でこの程度気を使うだけで違います
基本は革の鞄と同じです。財布もマチ部分のケアを忘れられがちですね。
普段革小物作っている立場として言うならば、「カード入れ部分にカード4枚とか入れないでください」です。クレジットカードなどの厚いプラスチックカードはカード入れ部分に3枚以上入れると確実にダメージになります。
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withコロナという時代の革製品手入れ
レザーソムリエ講座で革製品のお手入れ解説をしてくれている いちかわさん、今度JLIAblogで初心者向けの革製品の手入れの話書くけど、なにか他にネタないですか?
いちかわさん「手入れのこと書くの?それじゃビフォーケアとコロナ対策の話も入れといてよ」
ということで下記からはケアのプロフェッショナル、いちかわたかおさんの解説です。
ビフォーケアという考え方
革製品の手入れは、製品の使用後に行うものと思っている人が多いですが、革製品は使いながら完成させていく製品です。買ったときは、まだ完成してないと考えてください。
ですから、手に入れたら まず 「お手入れ」をしましょう。製品を使う前のケア=ビフォーケア、という考え方ですね。これを行うことで、長く自分だけのより良い持ち物にしましょう。
- 「お手入れ」知識としては、クリーナー(汚れ落とし)の使い方を知ることが一番です。これを知ると持っている革が何に弱いかがわかります。
- 普段の「お手入れ」の目的は、製品の点検です。キズ、色落ち、色剥げは、革の致命傷になることがあります。早く見つけることが必要です。傷を見つけた場合は修理店などに相談してみましょう。
- クリームは、革のサプリです。不足している水分、油を補います。水分、油が適正ですと、革は強さを保てます。
withコロナ時代の革製品のケアの考え方

厚労省と国立感染症研究所の発表ですと、コロナウイルスは表面を油膜で保護されています。この油膜を取ると死にます。
そこで、アルコール(高濃度)、次亜塩素酸ナトリウム、界面活性剤が有効であると推奨されています。
では、革製品にこれらは、使えるでしょうか。
アルコール(高濃度)、次亜塩素酸ナトリウムを革製品に使ってはいけない!
アルコールは、革の塗料を溶かすことがあります。
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/コロナウィルスと革製品の話
次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性です。アルカリはタンパク質に影響します。
この2成分が含まれているものは革に使ってはいけません。
使うならば中性の界面活性剤があるものを
界面活性剤は、石鹸に含まれていますが、これが革につかえます。ただし、石鹸は普通アルカリ性です。今は、中性洗剤ができています。もし汚れ落としに使う、というならば中性のものを使いましょう。
市販されている乳化性クリーム(瓶入り)、革用クリーナー、ローションは中性タイプが多く、界面活性剤を含んでいます。
アルコールのように高濃度でなくても効果があるそうです。また、ニューヨーク病院の報告ですと、靴底がウイルスを運ぶとあります。靴底には、液体のクリーナー、ローションを塗れば良いでしょう。
ブラシのホコリ落としは要注意!
「お手入れ」は、普通ブラッシングから始めますが、ホコリと一緒にコロナも空気中にでるので、ここでは順番を変えて、液体のクリーナーなどを布にとり靴を湿らしてから始めましょう。
水分を与えることでコロナウィルスが空気中に飛散するのを防ぎます。
これだけ気を使っていても必ず換気の良いところで手入れをしましょう。
「お手入れ」中は、必ずマスクをしましょう。メガネ、ゴーグルもできれば。終わりましたら、手は、必ず丁寧に洗いましょう。
コロナウィルスは手に付着しても口目鼻などを触らない限りは安全です。ただこのウィルスがどこにあるかはわかりません。靴は地面に落ちているウィルスが付着している可能性がありますので、手などに付着しないように気をつけましょう。
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いちかわたかおさんから「革製品のお手入れ」についての追加テキストが届きました。どうぞご覧ください。
除菌&消毒が革製品に与える影響は?
コロナの対策で アルコールで手を消毒する回数が多いと思います。アルコールが乾かないうちに革製品に触るのはやめましょう。
特に、ジェルタイプのアルコールは、乾きが遅いので気をつけて。革財布、名刺入れは、直接手で持つことが多いので注意が必要です。
除菌シートなどで拭く機会が増えますが、除菌シートは、アルコールほどではないですが、革によっては問題があります。まず、ちょっと隅の方で試してみるのも一案。革の色が落ちてしまっては大変です。
夏はフレグランスにも注意
夏は、フレグランス、香水、オーデコロンをつける機会が増えますね。これらも、ベースはアルコールなので つけたり、スプレーするときは、革製品を近くに置かないようにしましょう。毎年、事故が起きています。
なお、コロナウイルスについての情報は、厚生省、国立感染症研究所の報告をもとにしています。
いちかわさんは、国内ケア製品のトップメーカー「コロンブス」に長年在籍し、革製品ケアを研鑽。国内の第一人者と称されます。
セミナーや講演、ワークショップのご依頼も、解除後増えているそうです。ご連絡は下記のメールアドレスまで。
LC inst. いちかわ
Lukas.takao.ichikawa@gmail.com
元記事・アーカイブ記事はこちらからご覧ください。
http://www.jlia.or.jp/enjoy/blog/