革問屋各社 個展(2019年-20年秋冬)レポートの後編をお届けします。
【タテマツ】
シューズ向けを中心に多様な皮革素材がそろうタテマツではトレンドの色柄が充実。有力企業の担当者たちが次々と訪れていました。
ブラウン~レッドにかけてのレンジでシックなトーンがズラリ。秋冬らしい色合いをテーマにしているそう。
注目素材は、さまざまな加工を施したヌバック。高級感があり、好評です。
根強い人気のピンク系は、トレンドを超えたロングセラーですね。甘さがなく、自立した女性からの支持を感じさせます。
エナメル調をはじめ、ツヤ感もフィーチャー。
クロコダイル調型押し、アニマル柄、パイソン調のプリントなどエレガントな素材感をクールなニュアンスでまとめて。
このほか、同社では、クリエイター向けの展開や新たな加工ほか、精力的に準備なさっています。正式な発表が楽しみです。
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【富田興業】
レポートの締めくくりはリーディングカンパニー 富田興業。
百貨店でヒット中のレディスシューズブランドを手がけ活躍中のクリエイター 吉添真千子さんほか、業界関係者が数多く来場。とても賑やかでした。
同社の今季のテーマは、ニッポンルネッサンス「革ならではの素材感」
「東京レザーフェア」を主催する協同組合 資材連の理事長を兼務する富田常一社長が発信する「素材からニッポンを元気に」とのメッセージが。

そんな熱い想いは、新素材にも込められて。「第99回 東京レザーフェア」でも発表され大きな話題になった「オリーブヌメ」。
国産牛×植物タンニン鞣しのヌメ革を用い、仕上げにオリーブオイルを手作業で塗布。水を弾き、厚みと弾力性もしっかり。新しい切り口が目をひきます。
「フレンチキップ」は、同じく「第99回 東京レザーフェア」<極めのいち素材>一般投票で2位にランクイン。
牛革では世界最高と言われるフランス産のカーフ(キップ)をグレージングで仕上げた本格的なボックスカーフ。最高の原料を日本の職人が熟練の技が光ります。紳士靴にベストマッチ。ディスプレイがひと際存在感を放ちます。
国内産の豚原皮を使ったナッパレザー「とろけるピッグスキン」(<極めのいち素材>入賞作品)。
極薄に鞣した豚革をトロトロになるまで繊維をほぐすことで、ソフトな風合いと軽さを表現しています。人気復活傾向のブーツでプレゼンテーション。素足でその秀逸な感触を楽しみたいですね。
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もうひとつのテーマは、アーカイブ。歴代のサンプル帳を本棚のようにディスプレイ。
1992年「バルセロナ オリンピック」開会式で選手団が身につけたユニフォーム(赤いポシェット)に採用されたレザーも同社によるもの。
デザインを担当した森英恵さんは「赤の使い方でパターンを崩す」と語ったとのことです。
そんなポイントとなるアイテムに採用された記念すべきレザー。日本の国旗、日の丸をイメージする美しい色ですね。
これまでのDMもシャッフルしてコーディネート。カラーリングやフォント、グラフィックデザインに時代性があらわれていて興味深い展示でした。
富田興業では増加する個人間売買の潮流をとらえ、ハンドメイドマーケットプレイス<クリーマ>にEC店舗<富田常八郎商店>をオープン。クリエイターたちのアクセスが続々。さらには台湾から女性スタッフを招聘して海外展開に向けたトライアルも準備中。中華圏、アジアマーケットを見据えたビジネスモデルに期待が寄せられます。
日EU EPAが2月1日に発効され、日本製革製品をとりまく環境が大きく変わるなか、知恵と情熱で、可能性を切り拓く、企業トップの姿に感激しました。
ピンチをチャンスに変える好機に! 浅草から発信される前向きなエナジー、新しいジャパンレザーがたくさんのかたに届きますように。
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