昨秋、刊行された、東京都/東京製革業産地振興協議会「TOKYO LEATHER PIGSKIN 2017 東京産の皮革ピッグスキン」の一部、参加企業・事業者さんの取材を「B.A.G.Number」編集長 川崎智枝さんとともに担当いたしました。これまで、展示会などで拝見することは多かったのですが、オフィス、ファクトリーを伺うのははじめてのタンナーさんもあり、貴重な機会でした。ものづくりの現場にご許可いただき、拝見。真摯な姿勢で取り組むつくり手の皆さんの緊張感と集中力がみなぎっていて、とても感激しました。そのテキストを再構成し、当ブログでご紹介します。
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なお、「第96回東京レザーフェア」(2017年5月25日~26日開催)の会場内、東京都/東京製革業産地振興協議会ブースで各社の自信作が出品されますので、こちらもお見逃しなく。
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100点満点を目指す染色技術
社名にあえて<皮革染色工場>と冠している理由は、兼子さんたちの仕事場にうかがって納得。工場内は染色の実験室のようで、おびただしい数のピッチャーや軽量カップが置かれ、革が染められるのを待っています。
ここでは1日10~20色、年間で1,000色もの色を染める、まさに<染めの匠集団>。サンプルで持ち込まれた革に対する再現性、正確性は業界でも屈指。革の出来を見る色評価用蛍光灯も二種類用意し、微妙な職人眼で色彩を見極めて。
持ち込まれる素材はピッグレザーを軸に、シープ、ゴートなどとくに小判ものが中心。用途は婦人靴のほか、財布やパスケースといった革小物が増えてきたそう。バッグ以上に鮮やかさや発色の美しさを要求される革小物には、新しい可能性を感じる、とのこと。
「染色というのは、一旦染めると薄く戻せないんです。なので、染料を薄めに調合して少しずつ濃くするというプロセスが必要です。我々のベースになっているのは"データ"と"経験"。90点までは届くのですが、100点がなかなか達しない。この10点の差が大きく、自分たちでも試行錯誤の連続です。けれどここがピタッと決まった時は本当に嬉しい」と兼子社長は顔をほころばせます。

四代目とともに技術力を磨きつづける
現在の社長は三代目で、四代目の息子たちがこの工場にすでに入社。2007年に入った兼子洋之さんは、バルセロナへとタンナーの修行にも出ているプロフェッショナル。「中高生の頃から部活が終わったらこの工場に手伝いに来ていたので、とっても馴染み深い場所です。工場を新しく変えていく気持ちよりも、まだ社長の染めの技術まで達していないので、一つ一つの仕事をただ誠実にこなしていきたいという想いです」と洋之さん。この先も、新しい染めの技術が膨らんでいくと思うと楽しみですね。
≪MEMO≫
◆現在、少なくなってきたメノウやガラス棒で革を磨く"グレージング加工"も得意
◆同じ黒でも<青みの黒><赤みの黒>など微妙なニュアンスを再現する技術力
◆インポート革の<色落ち止め><染め直し><裏処理>といった加工も
有限会社 兼子皮革染色工場
東京都墨田区東墨田3-14-25
TEL: 03-3612-3710
FAX: 03-3612-3665
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東京都/東京製革業産地振興協議会「TOKYO LEATHER PIGSKIN 2017 東京産の皮革ピッグスキン」を再構成
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東京都/東京製革業産地振興協議会「TOKYO LEATHER PIGSKIN 2017 東京産の皮革ピッグスキン」
平成28年度 東京レザーファッションフェア2016(ピギーズ・スペシャル)に係る都内皮革鞣製業の広報・宣伝事業
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企画:株式会社ソーシャルデザイン研究所
撮影:康 澤民
取材担当:川崎智枝(「B.A.G.Number」)
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ブックレット「TOKYO LEATHER PIGSKIN 2017 東京産の皮革ピッグスキン」は、「第96回東京レザーフェア」(2017年5月25日~26日開催)の会場内、東京都/東京製革業産地振興協議会ブースで設置・配布予定。