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KITAJIKO

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KITAJIKO

東京藝術大学デザイン科卒業後、7年間のデザイナーとしての企業勤務を経て、2010年、雑誌オフィシャルブロガー・イラストレーターとして活動開始。ファッション・アート・旅・グルメ・映画などに関するものについて独自の審美眼・観察眼でリポート。画業はアナログからデジタルまで対応。個展やコラボレーションなどで活動中。

84 シャネルの裁縫師たちの世界にスポットを当てるオートクチュールコレクション ディティール編

後編はディティールについて。
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コレクション発表と同時に、最新ルックは瞬く間にネット配信され、アーカイヴは纏められディティール情報も開示。

やがて映画祭などの授賞式や格式高いイベントのレッドカーペットでセレブリティが実際に最新のオートクチュールを着用して、各種メディアでもファッションストーリーが展開されるわけなのですが。

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↓こちらはもう二年前、第87回アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞したジュリアン ムーア

彼女のためにカール ラガーフェルドが特別に仕立てたオートクチュール ドレスを着用したのも印象的でした。

オスカーを獲りにいくための勝負ドレスのなかの勝負ドレス。

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80,000個の小さなホワイト レジンのスパンコールが刺繍され27人の職人たちが965時間かけて誕生。
人の手による圧倒的手間隙の結晶のドレス。

世界的セレブリティがこれを纏って相乗効果でオーラ全開。
レッドカーペットはどんだけパワースポットなんだって話ですよ・・・
だがそれがオートクチュールの真髄ですよね、夢あるわ~


びっしり施された刺繍のオートクチュールドレスの重さや、敷き詰められたシークインやビーズが醸しだす吸い込まれそうな密度というのは、たぶん実際に目にしたり手にとってはじめて分かるものもあるような。(着用したらどんな感覚が流れ込んでくるのか考えるのも恐ろしい)

・・・ということで、向こう側の世界のドレスを目の前に手にとって観察できる機会に恵まれたので

しっかりディティールまで見てここに記そうと思います。

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前編にも書きましたが、今回は職人やアトリエにスポットを当てたショー。

4月にパリに滞在した際、カンボン通りのシャネル本店隣のホテルCastille Paris に宿泊したのですが、

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部屋の窓からはシャネルのアトリエが少し望めて
夜遅くまで明かりがついていました。 「も、もしかしたら夜なべで職人さんが刺繍してたのかも!」

などと妄想しながら毎日窓からシャネル本店を眺めてた怪しい日本人は私です。

(↓部屋からはシャネル本社の中庭が見えて、お仕事している風景が少しだけ見える)

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なかなか本題に進まない・・・

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以下、なるべく寄って撮影してみました!お納めください!


まずはモデルのヘアメイクチェック。

高く高く結って軽やかに形成されたカーリーヘアに、サテンのリボンのヘアバンド。シャネルの香り充分。

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お顔はアイメイクに重きをおいてつけまつげも加工してインパクト大。人形っぽくてドレスのイメージを強調してます。

シャネルのヘアメイクは、オートクチュールは特にいつも実験的な気がします。
一見相容れないのでは?というくらい個性のあるヘアメイクと
エレガントなドレスからは予想もできない思わぬ調和が生まれて、

素敵な違和感に酔いしれるということが多いです。
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↓ロンドンのイラストレーター、オーブリー ビアズリーの作風に着想を得て制作されたドレスを纏ったモデルのCHIHARUさん

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ビアズリーの線画は、結構影響された作家も多く、独特の世界観と線の扱いが魅力的な御大。
でも刺繍でビアズリーを再現しようと思うって、かなりなものだと思う・・・
(そもそもビアズリー刺繍しよう!となる発想からして尋常でない)
結果 まるで"異界から来たなにか" の雰囲気を存分に醸す魔刺繍に仕上がっております。

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こちらもハンドペイントとか・・・ どこまで容赦ないんだ。

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↓こちらはドレスの装飾のガイドラインを仮置きして、その指示をもとに職人さんがビジューを刺繍するといった工程を覗けます。

既に左の仮の装飾がカッコイイ。

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毎回個別に展示されている、実際に使用されたボタンも、ひとつひとつが見事。

↓シークイン縦に重ねてるボタン。。。折って重ねて積み上げて...
シークインひとつで、どれだけの表現があるのか。この小さなアイテムに小宇宙が~。

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実際にランウェイで発表されたルックが、会場では手にとって観察できます。
裏地まで見ることも可能。

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ツイードも手織りで素材や色組み合わせはその時のコレクションのテーマに沿って展開されます。
ブランドを象徴するツイード生地は、どんどん新陳代謝を繰り返し
新たな細胞が誕生するようにアイデアがふんだんに盛り込まれて、
シーズン毎に設定されるテーマに則した装飾と相まってとっても芸術的。

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毎回、そのコレクションを象徴するキールックというのがしっかりある(しかもひと目でわかる)のも凄い。


今回は下図右奥のブラックのドレスにみる繊細なプリーツやドレープが複雑に共存する不思議な存在感のドレスが印象的でした。

繊細な素材で軽やかだけど
高密度で複雑に重なり合って秋冬らしい重厚な雰囲気も。不思議。

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↓こちらも甘すぎないピンクで。独特の表情。

素材の加工による表情の幅広さ...衣服の可能性は無限なのだなあ。

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↓こちらはマトラッセをモザイクに。シークインで。鬼気迫る美しさ(だらけ)。
オートクチュールだけで年に二回もあるんですけど・・・
職人の皆さんも一年中刺繍しても終わらないのでは...

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こちらも毎回戦慄を覚える西洋的立体感覚を如何なく発揮した刺繍。

異素材を纏め上げ調和させるすごい技に いつも膝から崩れ落ちそうになるわけです。
ちなみに、確認できるだけでリボンテープ(縦に使用)、ゴールドの装飾プレートにビジューのアクセサリーと各種ビーズを配置してます。
とんでもない話です。

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このZ軸デコレーションの感覚っていうのは、何なんでしょうか。異文化素晴らしい。

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美。

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この情報量のドレスと装飾を延々観察できるのですが、体調万全のときが望ましいです。
そのくらい何か放ってました

こうして並んでいるさまも本当に迫力。

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↓おそらく、この展示でいちばんの重量だったドレス。毎回述べていますが、重いものは10キロを超えます。

当然、重さに比例して刺繍が、とてつもないです。

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ゴクリ

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こちらはいちばん高額と紹介いただいたルック。
刺繍がフェザーとレザー+ハンドペイント。熟練技巧の工芸作品だな。

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コレクションを通じて共通する素材を使用した装飾のバリエーションも豊富でとっても面白い。

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胸がくるしい程の密度。 切なくなるくらい美しい。
美も神も細部に宿るって本当だわ。

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ミニマルがもてはやされ、無駄をそぎ落としシンプルこそが美しいという流れもたしかに理解はできますが

最高の素材を最高の職人さん達が膨大な時間を注ぎ込み、次々と想像を超えてくるシャネルの装飾技術の数々を目の当たりにしてしまうと
「私が見たいのはこういうものだ...!」と心から思ってしまいます。


ものすごい密度と情報量だけど、ゴテゴテと盛りすぎな過剰装飾ではないかんじ。
混沌ではない調和した装飾美というか。上手くいえないのですが。
これだけの刺繍や飾りを見事に纏め上げ、
前衛や悪趣味なカオスではなく、
あくまで美に転じるバランス感覚こそが、シャネルの底力なのでしょうか。

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ファッションはもとより装飾の未来を明るく照らすようなシャネルのスピリットと
アトリエの技術者・職人さんの弛まぬ精進に毎回胸いっぱいになります。
これからもたくさんの驚きと感動を提供してくれるに違いないと確信しました。

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83 シャネルの裁縫師たちの世界にスポットを当てるオートクチュールコレクション 前編

オートクチュールは技巧の限りを尽くした職人技の集合体。
もはや纏うことのできる優れた芸術作品だと思って拝見しております。
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シャネルのオートクチュールコレクションの取材をさせて頂くようになって、

妥協なき最高の装飾技術で繰り広げられる
驚くべきアイデアと 遊び心がふんだんに盛り込まれた装飾を見るにつけ

技術者の育成と保護体制、

そして「伝統の継承」と「新素材・新技術の開発」の両立

常に高度な水準を求め、それに応え続ける
メゾンと職人のモチベーションの高い関係性をビシビシ感じずにはおれません。


例外なく毎回です。

アイデアや創造性は枯れることを知らないのでしょうか。
この飛びぬけて高い次元で長い間続くクリエイションに何から何まで驚くばかりです。


今回は、職人やアトリエにスポットを当てたショー。
グラン パレ はシャネルのアトリエ仕様。調度もスタッフももちろんホンモノ。

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数十分のショーの為に、当たり前のようにアトリエ丸ごと持ってきちゃうその気概...そこにも痺れて憧れるんですがね...
アトリエで働くプティ マン(=裁縫師の意味)へのオマージュさながら。裏方への敬意と誇りが凄く伝わる。

ショーでは各アトリエのプルミエール(主任)・副主任、そして120名を超えるシャネルの裁縫師のうち実に78人がランウェイに。

カール ラガーフェルド氏は「今時、彼女達もショーに参加して表舞台に出るべきだよ」

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カール様 ほんとに粋だよ~

ということで、届いたインビテーションもトルソーが描いてあって。

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そしてシャネル銀座ビルの会場。
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細部の設えもアトリエ仕様。お道具もこんなかんじなのか・・・
服つくりって、独特ですよね
アート作品の制作風景より建築的。

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つい先日発表されたばかりのオートクチュールドレスが並びます。

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デザイン画の一部も展示されていました。
カールラガーフェルドのドローイングには、各担当者の職人さんの名前があり、指示など。生々しくて素敵。

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どちらかというと私はメゾンの顧客やユーザーというより職人寄りなので、

今回のプレゼンテーションは全体的に興味しんしん。
トップメゾンのバックヤードやメイキングなんて、大大大好物。
こういう特別なものを見たいがためにブログやってる感すらある。

細かいディティールの観察は次回リポートします。

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顧客のプロポーションを細かく採寸して、モック制作のような仮の試作を作成するみたい。↓
試作の服には細かいメモのような指示のような書き込みがたくさん。
大量生産の既製服にはないパーソナルな手間隙がなんとも贅沢。

この上にあの凄い刺繍や絢爛装飾を施して...となると
そんなじぶんだけの一点もの、というのはどうしたってとても高級になるのはもう当然だわ。

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普段は見ることの出来ない制作過程を見せてくれる
これって本当に凄いこと。

技術やノウハウが流出してしまうのでは?と思いますが
長いメゾンの歴史と精進の結晶のような技巧の蓄積を
そう簡単に真似できるわけないレベルの技術力だからね...

シャネルのオートクチュールをこうして手にとれる距離で展示することそのものが文化の育成と保護だと思うし、本当に尊い。
業界を牽引して未来に繋げる強い自負自覚が感じられます。

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オフィシャルムービーも。メイキングも毎回しっかり作りこまれて、装飾のテーマをスタッフが共有して膨大な時間をかけてドレスを作り上げる様子を伝えてくれる。本当に細部まできめ細かいというか完璧主義というか。

実際に今回のオートクチュールコレクションルックを纏ったモデルも会場を優雅にまわっていました。

カメラを向けると立ち止まってくれて、素材など360度チェックさせてくれます。

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繊細なフェザーやオーガンザの表情、シークインのきらめきなんかは、着用でさらに質感が高まってやっぱりイイ。

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そんなかんじで、次回後編はさらに寄ってディティール編です。

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