映画『ターナー、光に愛を求めて』
イギリスロマン主義の画家であるターナーの半生を綴るこの映画。
誉高き絵画の数々は、アートに興味が無い人でもターナーのロマン主義的な大気、光、雲の劇的な表現はどこかで見たことがあるはず。
CGはおろか、写真も浸透していなかった当時の背景を考えると、彼の眼が捉え筆を走らせた絵の驚異的な記憶力や表現力にただただ驚くばかりなわけですが...
映画はターナーの割と影の部分も赤裸々に描写しています。
同時に美術界の光と影も生々しく描いています。
才能と処世術、愛ってなんだろ、老いるってなんだろ・・・
ターナーがスケッチしながら旅した風景とターナーの作品の美しき映像に対して
実に対照的な、どこか生々しい人間模様や制作風景やアートシーンを
淡々と描写しているようでいて、しかしながらジワジワと深いところがザワつく作品でした。
ティモシー・スポールはじめ、女性陣の人生の明暗分かれる迫真の演技も見所です。
ここからはあらすじからちょっと離れた個人的駄文なのですが。
24歳の若さでロイヤルアカデミー準会員、27歳で正会員と順風満帆な画家としては王道をひた歩くターナーでしたが
生い立ちや母親との関係性に起因した事情もあるとはいえ、男性としてはお世辞にも甲斐性があるとは決して言えない...
そんな人物描写がやけにリアルで、
『芸術家とはそういうものだ』としたらどうなんだろ...
と絵を描く人間として女として分かるような分かりたくないような
何とも言えない複雑な心境にもなり
少なからずグッサグッサ突き刺さるものがありましたよ。ええ...
それにしても、何故アーティスト男性は例えダメ男でもモテる人が多いのか、女の人が放っておけず、甲斐甲斐しく支えて貰えるのか。
ピカソ然り、モテる芸術家と惚れた(惚れられた)女が絵のモデルという組み合わせはもはやデフォルト。
女の為に即興で一曲、くらいのステキエピソードと共に 後世に残るような名曲を作っちゃう作曲家がいたり
ステキな逸話はいつの世も男性アーティストが女に宛てるものが多いんですけど。
逆に。
女性アーティストの才能に惚れこんで公私ともに女性アーティストに人生を捧げる男の話は、あまり聞いたことが無いんですけど。
女性アーティストは何かしらを犠牲にして選択を迫られるパターンが多いような気も。
そんな気しません?とブツブツ言いながら目線が斜めになる程に、芸術家の人間描写は鋭かった、秀作だと言える本作なのです。
ぜひ劇場で観てみてください☆
6月20日より、Bunkamuraル・シネマ ほか全国順次上映。
『ターナー、光に愛を求めて』公式ウェブサイト
http://www.cetera.co.jp/turner/
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