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渡部玲

ビューティライター

Akira Watanabe 渡部玲

女性誌の編集部、編集プロダクションに勤務した後に独立。現在は、フリーランスのエディター、ライターとして活動。

ヘアスタイリスト 光崎邦生の新たな挑戦

Kuniさんこと、ヘアスタイリスト 光崎邦生さんに初めてお会いしたのは、氏が英国留学から帰国してすぐの頃だったから、確か2010年くらいだろう。当時、写真家の蓮井元彦さんとのユニットSICKSNINEを本格的に始動されようと考えておられ、そのお話を伺ったのが最初だった。そのユニット名を聞いた時、「下品だね......」などとうっかり言ってしまったことを猶、恥じているくらいには憶えている。そして、その活動も実に衝撃的で、圧倒されたことを今、こうして書きながら往事を懐かしむ。

 その時からKuniさんは、兎に角丁寧で、そんなに気を遣わなくても......と心配するほど微に入り細を穿つ言動であり、雑な私は猛省しきりだった残念な記憶すらあったりもする。そんなKuniさんのクリエーションは、ダイナミックで繊細。そう、感じる作品が多かった印象。これからどんな作品を見られるのだろう、と楽しみにしていた頃の2011年に、ニューヨークへと活躍の場を移された----そして今年2015年の春、異国の地でキャリアと研鑽を積まれて帰国。自身の手によって生み出された、新しいブランド『KUNIO KOHZAKI PINS』を手に。

----2015年6月6日のブランドのデビュー、おめでとうございます! 

光崎さん「自分のブランドを作りたい! そのブランドのファーストシーズンは、ヘアに関するものがいい。そう考え始めたのは、未だニューヨークに住んでいた頃。しかし、これまでプロダクトを作ったことのない僕にとっては、何もわからなかったのです。そこからのスタートであったから、構想から2年ほどの時間を要してしまいました。

 作りたいけど、どうしてよいのかわからなかったのです。しかし、その状況から救ってくれたのは、近しい人たちでした。彼らに話し、相談しました。それから、ソーシャルネットワークにも"こういうのを作りたい!"と投稿したりもしました。そうして出合ったのが、東京で活動されている職人さんでした。僕自身でも、つくることを想像しながら調べましたが、多くの方々にアドバイスを頂いたことで今回のブランドの発表に至れていると思えます」

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光崎さん「これは、2015年6月のCANDY/FAKE TOKYOのポップアップストアのために作ったアートワークです。以前より親交があり、リスペクトしているYoshirottenに、僕のデザインしたものを使って、一生残るモノを作って頂きました」

----しかし、なぜご自身のブランドを作りたいと思われたのですか?

光崎さん「僕のクリエーションには、自作のヘッドピースを用いています。SICKSNINEの作品でもそう。僕なりのクリエーションツールの一つとして早い段階から表現手段として用いてきました。しかし、近年では多く見られるようになり、ヘッドピースではない別の何かを......と考えるようになったのです。元来、日常的に使用するものではないことも、そう思い始めた理由の一つにあります、撮影の時にだけ使うものですから。

 ヘッドピースを作る時、常に考えるのは、誰も使ったことのない素材を如何にかっこよく見せられるかであり、今まで見た事の無いバランスとデザインにどのようにもっていくのか。そんなことを考え、問いかけながら作ってきました。

 しかし、"やるかやらないか"というものであろうヘッドピースは、最初に使うことに意味がある、とも思うのです。更に、一度使ったら最後、過去のものになってしまうことも、僕に、自身のブランドについて考えるきっかけをくれました。

----いくつかの疑問が重なり、『KUNIO KOHZAKI PINS』の誕生に至ったのですね

光崎さん「ヘッドピースを使える場所は、限られています。ファッション誌の撮影(=エディトリアル)で使われるかアーティストの衣装の一部のためのものか、はたまたファッションショーか。つまり、ファッションに興味のある人という極めて限られた人たち以外の、大勢の人にはなかなかに届き難いもの。また、ヘッドピースの多くは当然ながら、アーティストやブランドに添えるものであることがそれに与えられた使命であり、僕の100%のクリエーティビティとは違うものになる場合もなくはない。もちろん、それに対する疑問や違和感があるのではありません。作品やショーなどに参加できることは、とても大きな歓びです。しかし、いつか僕のつくりたいことの100%を注ぎ込める何かをつくりたい、と考えるようになっていました。見ることで終わることのない、先に広がる何かを----それは、ファッションへの興味が深くない人たちの目にも触れるものでありたかったのです」

----それがブランドだったのですね

光崎さん「その何かは、ヘッドピースに求めることではありません。だからこそ、僕の望みを満たす何かを探しました。それが、僕の創ったブランド『KUNIO KOHZAKI PINS』であり、ヘッドアクセサリーです」

----それぞれの創り方に違いはありますか?

光崎さん「ヘッドピースは思考や視点を捻っていますが、ブランドのプロダクトはよりストレートであり、日常的な視点を意識して創っていると思います。僕の場合は、改良に改良を重ね、足しながら作るのがヘッドピースであり、初期のアイデアを大切にしながら、削ぎ落とすのがプロダクトです。『KUNIO KOHZAKI PINS』は、ミニマムでシンプルに創っています。それが。商品であろうと思います」

----20代の頃にはロンドンに、そして30代の前半にはNYへ----グローバルな視点と豊かな経験が育んだ、Kuniさんの創られたブランドを拝見できる時を楽しみにしていました

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光崎さん「このヘッドアクセサリーは、ヘアピンでできています。どれくらい前だったろう、すぐには思い出せないくらい前から、時間がある時などには、ヘアピンを積み木のように重ねたりして遊ぶのが好きでした。星型にしてみたりして。でも、それを今回の僕のブランドのプロダクトすることを最初は考えませんでした。でも、僕らしいものを作りたいと思い、その気持ちを大事にした時、これしかない! と思えたのです。そうして出来上がったのがこのヘッドアクセサリーです。

 しかし、ヘッドアクセサリーのブランドを作ると決めたものの、出来上がるまでは実に大変でした。モノをつくるとなると信頼できる作り手が不可欠。2014年に一時帰国し、友人や知人に紹介して貰った東京で活動されている職人さんを訪ね、お願いすることにしたのです。その後、NYに戻ってからはスカイプを使ってやり取りを重ね、進めて行きましたが、NY-東京間ではどうしても距離を感じてしまうこともありました。色を決めること一つとっても、難儀しました。

 今回、僕はデザイン画を書かず、試作品を作って工場に送り、"こういうもの"という形で見せるという方法しか考えませんでした。しかし、このやり取りが途轍もなく大変な作業でした。それはきっと東京とNYという距離の隔たりもあるとは思いますが、感覚は人によって様々なのだ、と改めて感じさせられました。本当はこうしたいのだけど、という微妙な"ズレ"のようなものを伝えるのがどうしても伝えるのに難しいのです。もしかすると、スカイプではなく会って、直接話して伝えられれば違ったのかも知れません。しかし、工場の担当者と納得のいくまで話し、試作を重ねました。何度も何度も。その甲斐もあって、僕の想う通りのモノに仕上がりになっていると思い得ます」

----目を引くのがリボンの赤。この色についても伝えるのが難しそうですね、主観によるところが大きいものですから

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"ribbon" RED ¥22,000

光崎さん「リボンは、ヘアアクセサリーの代表的なものだと考えています。かのキティちゃんも赤いリボンを着けていますし、昔の少女漫画もそう、女の子はリボンを髪に飾っています。ずっと、僕にとって、女の子を象徴するものがリボンだったのです。完璧な造形であり、無敵の可愛さだろう、と僕は考えています。

 振り返ってみると、今回に限らず、僕の作るヘアスタイルやヘッドピースはリボンを連想させるものが多かったように思います。シルエットに感じさせるものであるなど」

----男性にもリボンはカワイイと思えるものですか?

光崎さん「カワイイ!(笑) 普遍的な可愛さと思います。それも赤のリボン! だから、今回のプロダクトには、絶対に赤のリボンを入れたいと考えていました。

 他のアイテムに関しては、色や形を自在に組み合わせて楽しんでもらえたら......という願いもあってたくさんのバリエーションを作りました。例えば、十字架や蝶々など。後ろ姿に、自分だけの

楽しみ方----かっこよさを内包させる可愛さ----を見つけてほしいです」

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----赤だけでなく群青(ネイビーブルー)や金(ゴールド)の色も展開されているのですね

光崎さん「3色あります。ピン本来の色にメッキした後にピンと同じ色を塗装し、更にその上から群青以外の色には着色していますから、日常生活で楽しむのであれば大丈夫です!

 今回、3つの色で展開していますが、実は最も拘ったのはネイビーブルーでした。この色はピン本来の色で、メッキなどを重ねていますから二度手間です(笑) しかし、どうしてもこのネイビーブルーの色で作りたいと思いました。

 金は、気品や存在感のある色。僕自身も、アクセサリーはシルバーよりもゴールドのものを好んで使っていることもその理由です。

 赤は最初、リボンだけの色として考えていたのです。しかし、ネイビーブルーとゴールドと同じように、赤もレギュラーとして展開することにしました。それは、赤という色に、僕の思う東京らしさ、つまり原宿ファッション=ポップと感じているから。恐らく、外国人の抱く東京のイメージもそうだと思います。東京のファッションとは原宿であり、"カワイイ"であると」

----ここまで、凡そ90分ほどお話を伺い、妥協することなく、作りたいものを作られたことがKuniさんらしさだろうと思います

光崎さん「僕のブランドですから。作りたいものを作りました。これからもそれは変わりません。そして、これまでのヘアスタイリストの仕事を大切にしながら、常に新しいものを見つけて、発信していきたい」

去年、クリエーターとしてウィンドディスプレーを手がけた、CANDYに続いてXANADU TOKYOでも『KUNIO KOHZAKI PINS』の取り扱いがスタートした。光崎邦生さんの、ヘアスタイリストの枠を越えた活動は、まだ始まったばかりだ。

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ヘアスタイリスト / ヘッドピースデザイナー

光崎邦生●Kunio Kohzaki

W TOKYO所属。VOGUE,i-D,DAZED&CONFUSED などのファッション誌や、CHRISTIAN DADA の東京 / パリコレクションなどのヘアスタイリング、Food creation やミュージシャンにヘッドピースを提供するなど、幅広く活動する。また、アートユニットSICKSNINE のメンバーとして、アートディレクションとしても携わったエキシビジョンを開催。2015 年、NY でヘッドアクセサリー ブランド「KUNIO KOHZAKI PINS」を設立した。

KUNIO KOHZAKI PINS
http://kuniokohzaki.com/work-post/accessory/

CANDY/FAKE TOKYO
http://www.faketokyo.com/
tel : 03-5456-9891

XANADU TOKYO
http://xanadutokyo.jp/
tel : 03-6459-2826

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