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渡部玲

ビューティライター

Akira Watanabe 渡部玲

女性誌の編集部、編集プロダクションに勤務した後に独立。現在は、フリーランスのエディター、ライターとして活動。

パルファム ジバンシイを支えるニコラ·ドゥジェンヌに訊く、6つの質問

色、アイデア、パッケージで新作に出会うたび、いつも嬉しい驚きを与えてくれる、パルファム ジバンシイのメイクアップアイテム。手がけているのは、ジバンシイ メイクアップ アンド カラー アーティスティック ディレクターのニコラ·ドゥジェンヌさん。その重責を担って今年(2019年)で20年が経つ。20年は、長い。その長い年月に、ジバンシイというメゾンで、常に新しいものを生み出し続ける原動力は何であるのかーーニコラさんが教えてくれた6つの答えから探りたい。

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パルファム ジバンシイのエレガンスを伝える、最新作「ルージュ·ジバンシイ No.333 ランテルディ」(全7色 (新6色、数量限定色1色) ¥4,600、2019年8月30日発売)。シグニチャーであり、ビューティアワードにおける名だたる栄誉に浴したブランドの代表作であり、シグネチャーであるルージュが進化。美しい発色を12時間キープする瑞々しい色とセミマットのテクスチャーを贅沢にも上質なラムレザーをあしらったパッケージが包む。配合されているヒアルロン酸マイクロボールの働きで、なめらかなな付け心地でつややかな唇に仕上げるに一本。なお、この新ルージュの発表を祝して、2019年8月23日(金)から9月1日(日)まで、表参道Rスタジオ(表参道ヒルズ)にて体験型ポップアップ「ルージュ·ジバンシイ ファクトリー(GIVENCHY LIP FACTORY)」イベントを開催。このイベントだけで展開する、限定アイテムの発売もある。

----メイクアップ アンド カラー アーティスティック ディレクターという重責を長年に亘ってこられたニコラ·ドゥジェンヌさん、ご就任20周年おめでとうございます! これまで続いてこられた月日の中で、その喜びはもちろんのこと、ご苦労もなくはなかったのではないかと思います。なぜ、これほど長い年月を続けてこられたのだとご自身はお考えですか?

ニコラ·ドゥジェンヌ(以下、ニコラ) 私はパルファム ジバンシイの現在と復活を手助けしてきました。私がローンチを手助けしたブランドを去ることはとても難しいことです。
幸運なことに、私は世界でも有数の研究者たちと仕事を共にすることができています。この贅沢な環境を自分の手で奪うことはできないでしょう。私にとってブランドの個性とは、リサーチと相補的であり、常に新しいリサーチ、新製品、新たな方法を求めることです。

----ニコラさんにとってはもはや人生とも言える、あるいは肉体の一部ではないかと感じるパルファム ジバンシイ。そのフィロソフィーである"普遍のエレガンス"をニコラさんはどのように考えておられますでしょう

ニコラ 美はいたるところにあり、常に存在し、私たちのすべての中にあります。私にとって"普遍的な美"とは心です。それは私たち自身が個性を持って存在することへの嫉妬です。それは自由を尊ぶことです。

----パルファム ジバンシイを支えるメイクアップ アンド カラー アーティスティックディレクターの活動を続けられておられる中で、最も重んじておられているのは何でしょう?

ニコラ 常に製品開発のリサーチしていることです。開発チームと協力して新たな製品を生み出すということに私は魅了されています。リサーチはとても重要なことと考えています。

----この20年で最も印象に残っておられるモノ、コト、ヒトとは?

ニコラ 第一に、それは私がジバンシイでメイクアップラインを再びローンチすることができたということです。私はそれが最も印象的な経験であったと感じています。そして、リヴ・タイラーのような人格、マリアカルラ・ボスコーノのような立派な女性、またはブランカ・パディーヤのような優しい人との出会いです。 最も記憶に残る瞬間は、人と関わる経験だと思います。

----ビューティ以外でご興味のあることがおありでしたら、理由も含めてお聞かせ願えますと嬉しく思います

ニコラ 読書、絵画鑑賞、Netflixを見たりすることが大好きです。それらが、真にリラックスできる唯一の瞬間をくれるからです。

----どのような夢を描いていますか? よろしければお聞かせ願えます嬉しいです

ニコラ また20周年を迎えることです。

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ニコラ·ドゥジェンヌ●Nicolas Degennes
ジバンシイ メイクアップ アンド カラー アーティスティック ディレクター

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ジバンシイのエレガンスと、クリエイティブの自由さに共感し、1999年より現職。2003年、ジバンシイのルーツである"クチュールの精神"と"革新"を見事に融合し、昇華させたメイクアップ ライン「ジバンシイ ル メイクアップ」をクリエイト。その後の活動は周知の通り。マスカラの「フェノメン・アイズ」など名品数多。

https://www.givenchybeauty.com/jp
パルファム ジバンシイ〔LVMHフレグランスブランズ〕03-3264-3941

「dear mayuko」というビューティーブランドを知っていますか?

シンプルでかわいい、それでいて存在感のあるパッケージでケアする楽しさを与えてくれる、「dear mayuko」。そのキュートさもあって、私自身も注目しているブランドの一つだ。一見して記憶に残るほどのキュートさと愛らしさのあるパッケージでありながら、力強いアイテムの数々。その人気はじわじわと上昇中で、リピーターが絶えないという。そんな「dear mayuko」の魅力を探る今回、ブランド広報の柳瀬真紀子さんに話を訊く。

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「dear mayuko」を支えるピュアセリシン™の力

----なぜ、どんなコンセプトで「dear mayuko」というブランドが生まれたのでしょう?

柳瀬真紀子さん(以下、柳瀬) 「dear mayuko」というブランドが生まれたのは、ピュアセリシン™という成分との出会いにほかありません。

ピュアセリシン™は、そもそも福井県にある繊維メーカー、セーレン社の発見した成分で、2015年5月に設立した我々のDear Mayuko社よりもずっと前からこの成分はありました。そんな経緯から、ピュアセリシン™について話をするなら、セーレン社がなぜこの特別な成分を発見するに至ったのかをご説明することから始めないといけないですね。

 繊維メーカーであるセーレン社は、その社名の由来となる精練(せいれん)業からスタートしています。精練とは、絹を水洗いして"セリシン"を取り除く作業のこと。絹職人たちは、冷たい水に長時間手を晒しながらも、驚くほど白くてなめらかな肌をしていたといいます。このことに、なぜ? と疑問を持ったことがセリシンの研究に着手した最初でした。およそ30年前のことです。そこから研究を進めたのですが、繭糸の断面写真を拡大して見ると、絹糸になる素=フィブロインの周りを糊状のものがへばりつくように覆っていました。この謎のものこそが、セリシンです。このセリシンを取り除くことで肌触りのよい、なめらかな美しい絹の糸が生まれるのです。そして、このセリシンが絹職人たちの手を美しくさせ、美肌効果の望める成分ということが研究する中で徐々にわかってきました。

セリシンは、繭に含まれる希少な天然のタンパク質で、様々な外的ストレスから蚕を守るための保護成分です。天然保湿因子(NMF)にとてもよく似ているため、肌馴染みがよく、肌にやさしいのが特徴的です。しかし、採取したままでは、肌への美容効果を最大限に引き出せないことが、研究の結果わかりました。セリシンの大きさにはバラつきがあり、活用するに至るのはなかなかに難しい。大きすぎると肌に入り難く、小さすぎると肌を刺激してしまう畏れもあるです。つまり、セリシンを活用するためには、まず分子の大きさを肌にとって適切なサイズに揃える必要があります。その特殊な技術を開発したのがセーレン社で、粒ぞろいに揃える抽出技術を世界で初めて、1999年12月に取得しています。その技術を用いて精製されたセリシンが、セーレン社のピュアセリシン™なのです。

----絹職人の方たちの美しい手に着想を得て、化粧品の開発に挑み、研究を進め、世界で初めての技術を取得し、その特殊な抽出技術に精製されたのが、ピュアセリシン™なのですね。ということは、セーレン社における化粧品部門を立ち上げたいと、研究を始められた頃から考えられていたのですか

柳瀬 そう聞いています。それまで絹織物を作る過程で捨てていた、繭に含まれる成分だったセリシン。これこそが絹職人たちの手を白く、美しくするものであることと決定づけ、研究を進めた結果、コスメの事業がスタートしたそうです。
 途中でやめることなく、やり続けられたのは、ただ、化粧品に使うことだけが目的ではないと思えたからでしょう。研究を深く深く進めていく中で、繊維や食品の分野から医療の分野にまで幅広い展開を期待できることがわかってきました。そんなピュアセリシン™のマルチな機能性もまた強い後押しとなったのだと思います。

----そのセーレン社と「dear mayuko」の関係なのですが、百貨店の高島屋とセーレンで作られた会社がDear Mayuko社だと聞いていますが

柳瀬 先にお話したように、セーレンは繊維メーカーですので、高島屋との付き合いは昔からありました。企画力や店舗の開発と運営力などを得意とする高島屋と、世界屈指の技術開発力を誇るセーレンがそれぞれのノウハウを生かし、それぞれがそれぞれに補いながら、「dear mayuko」というブランドを誕生させました。

日本の文化を享受する、日本のブランドであり続けるために

----年齢や性別、国籍を問わないブランドだと伺いました。実は、少し驚いたのです。ということは、20代くらいの若い世代にも向けられたものであるのだろうと思います。でも見た目はとてもキュートなのに、価格は、その......

柳瀬 そうですね。「dear mayuko」の商品を安くないと感じる方もいらっしゃるかも知れません。近年ではドラッグストアや通販で化粧品を購入される方が多く、価格や便利さを重視して選ぶ方が増えています。安くてもよい製品を気軽に買える時代になってきました。
私は、最初のマーケティングから関わっていますが、高島屋の店舗をメインに年齢層や価格帯などを設定するのは難しいところではありました。そうした中でまず私たちが考えたのは、デザインやクリエイティブなモノへの関心が高く、自分の感性を大切にしたいと思っている人に向けたブランドであること。そうありたい、と目指してまいりました。毎日の暮らしを大事にしながら、それでいて肩の力を抜いた、自然体であることを重んじる方々を想定して、使っていただきたいと考えています。そして、百貨店の化粧品売り場には、これまでなかったデザインでありながら、本当によいと思えるものを提供するブランドとして必要なプライシング=価格設定を行なっています。

----繊維メーカーの発信するコスメブランドであることは、「dear mayuko」のラインアップを見ても、薄っすらとではありますが、わかるような気がします。

柳瀬 商品バリエーションを多くしたそのラインアップは、スキンケアを始め、ベースメイク、ヘアケア、ボディケア、タオルや雑貨まであります。
大切にしているのは、日本の文化を感じられるブランドであること。そんな思いから、2016年11月に「dear mayuko」はデビューしました。
 ブランドを始めるにあたり、最初に決めたのは、ブランドコンセプトの"Design My Dearest Life"でした。本当によいと思えるものやワクワクすることを通じて、自分らしい生き方や暮らし方、そして五感を満たす日常を創出するライフスタイル提案型のブランドを作りたいという願いを表現しています。また、ピュアセリシン™という高機能成分を採用することで、"一生モノのキレイをつくる"ブランドを目指しています。
"一生モノのキレイ"というのは、非常に強い言葉です。しかし、ピュアセリシン™にはそれをも叶えられる力を持ったものである、と私たちは確信しています。用途も化粧品だけでなく、食べても纏ってもいい。ピュアセリシン™は成分ですから、加工を施したタオルシリーズも用意しています。これは、全身でセリシンの優しさに包まれていただける贅沢なアイテムです。ピュアセリシン™は、熱にも強い成分、その特性を生かしたバス製品はバラエティ豊かに展開しています。

----この先も、キー成分にピュアセリシン™を据え、その魅力を伝えるアプローチで展開される予定でしょうか

柳瀬 「dear mayuko」は、ピュアセリシン™との出会いをきっかけに生まれたブランドです。私たちには、これ以上の成分はないだろうという自信があります。そして、この成分にはまだまだたくさんの魅力が潜んでいると考えているのです。
化粧品だけに留まらず、タオルなどの雑貨も含めた幅広いアイテムの提案ができることも、この成分の魅力です。現時点では、まだ詳しくはお話できないのですが、みなさまにきっと喜んでいただける商品開発を予定しています。
2019年の春である今の「dear mayuko」のビューティアイテムにおけるシグニチャーと言えるのは「イノセントスキンセラム」という名のプレ美容液です。たくさんの人にピュアセリシン™成分のパワフルさを感じてもらえるアイテムであり、人気もあります。

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イノセントスキンセラム 20ml ¥7,800 dear mayuko

----先日、発売されたばかりの最新作、美白美容液もピュアセリシン™をキー成分に構成されていますね

柳瀬 最新作の「イノセントスキンホワイトセラム」は、2019年4月1日に発売しました。ピュアセリシン™に美白効果を望める成分をプラスした美容液で、できてしまったシミやニキビ跡、糖化による黄ぐすみなどを多角的にアプローチする自信作です。加えて、日焼けによるほてりや肌荒れ、ニキビを未然に防ぐ効果も期待できるよう、探求を重ねました。とろりとしたテクスチャーのこの美白美容液は、肌にすっとなじむつけ心地で、次のスキンケアステップに時間を空けず進むことができるところもポイント。オールシーズンで使えるように設計していますが、これから夏に向かう季節は、紫外線だけでなく、エアコンなどの乾燥も気になる頃でもありますから、今、ぜひ試していただきたいアイテムです。

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イノセントスキンホワイトセラム[医薬部外品]30ml ¥10,000 dear mayuko

----その新作もそうなのですが、シンプルなパッケージが目を引きます。全てのシリーズは一様に楕円をモチーフにデザインされていますね

柳瀬 パッケージのデザインは、日本デザインセンターの大黒大悟さんと佐野真弓さんにアートディレクターとして参加していただきました。
楕円="まる"は、セリシンを育む繭玉の形を表現した、「dear mayuko」のシンボルです。スキンケアしたり、ヘアケアしたりお風呂に入ったりする、日常にある幸せを"まるくつつむ"ことをイメージさせてくれます。この"まるくつつむ"とは、日本のよい伝統や文化を"和する"精神にも通じ、日本らしさをも感じさせてくれます。実は、「dear mayuko」のロゴも楕円をモチーフに形作られているんです。

フェイスケアにボディケア、バスアイテム、そして生活雑貨をラインアップする、「dear mayuko」。2019年5月現在で約80アイテムが揃い、ピュアセリシン™の力が息衝く。「今後も新作の発表を控えている」という柳瀬さん。美しさとは、健やかさがあってこそ成り立ち、それは日常の中から生まれると改めて感じさせてくれる。

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Dear Mayuko 株式会社
セールスプロモーションチーム
柳瀬真紀子●Makiko YANASE

大学卒業後、化粧品メーカー、広告代理店勤務を経て、念願の総合美容メーカーに10数年広報担当として勤務する。その経験を生かし、「dear mayuko」のブランドの立ち上げより参加。以降、マーケティングやセールスプロモーション全般を担当する。


dear mayuko(Dear Mayuko) TEL 0120-115-177
https://dearmayuko.co.jp/

"使いたいと思うものを作る"ということ、その「木村石鹸」の挑戦

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恥を承知で告白する。石鹸だけを見つめ、90年も続くメーカーがあることを私は知らなかった。その歴史の長さだけでも十分興味深かったが、作られているアイテムを見ることで、深く知りたいと思った。

 今回は、その長い伝統を支える「木村石鹸」代表の木村祥一郎さんに話を訊く。

----ひとつのブランドが、94年もの歴史を有するということは、それは大変なことなんだろうと想像しています

木村祥一郎さん(以下、木村社長) 「木村石鹸」という会社は1924年に創業していますので、今年で94年目を迎えました。私の曽祖父が起した会社で、私は4代目になります。しかし、その初代の曽祖父は最初から石鹸を扱う会社を営んでいたわけではなく、歯ブラシ屋だったらしいと聞いています。当時の歯ブラシの製造業というのは、家内制手工業のようなものだったようです。

----歯ブラシから石鹸へ、想像するだけでも勝手が大きく違うように思うのですが

木村社長 当然、その時代に僕はまだ生きていませんから、父から聞いたことが全てで、どこまで本当の話なのかはわからないのですがーーある日、銭湯へ行った時に、その場に居合わせた人と石鹸の話になったことが今の生業へと導いたようです。「石鹸ってなんでできているのか知っているのか?」という話をしたことに始まりました。石鹸は油でできています。汚れも同じ油です。油を油で落とす? その人には石鹸会社に知り合いがあり、石鹸会社を見せてもらう機会を得、「木村石鹸」という会社がスタートしたのです。

----思い切った決断と思います

木村社長 感動したそうです。石鹸が作られるところを見せてもらったことで。それですぐに、それまでの歯ブラシ会社を売却して、石鹸の会社として新たなスタートを切ることになりました。

----それが、94年前の1924年のことになるのですね

木村社長 石鹸の何に感動したのかわからないのですが、工場を見せてもらった後、すぐに修行に入り、独立して会社を作り得るほどには情熱を傾けられるものであったようです。油で綺麗になる、汚れが落ちるということに感動したと聞いています。
この94年の間には戦争もありましたから、油が手に入らなくなったことで、実質廃業を余儀なくされたりもしました。

----終戦後はすぐに再開されたのですか?

木村社長 主原料である油が手に入らないため、なかなか再開させることができませんでしたが、どうしても石鹸をやりたい、と決意した祖父と父がなんとか復活させ、現在の「木村石鹸」の礎を築きました。創業から数えると今年で94年になる会社ですが、戦中戦後とその後しばらくは休んでいましたから、ずっと操業できていたわけではないのです。

----戦争によって休業せざるを得なかった会社は少なくなかったんじゃないでしょうか

木村社長 当時、石鹸屋さんは油が手に入らないことにはどうにもなりませんでした。とはいえ、普段の暮らしで手や身体は汚れます。そして、その汚れたままでいられません。そこで国が動き、統制がかかったりもしたそうです。弊社のある大阪には同業が何社かあり、一緒にという話もありましたが、祖父は頑なにそれを拒否したことで、94年前と今日の「木村石鹸」は同じ製法で石鹸を作られています。

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----"釜焚き法"という技術ですね

木村社長 はい、ずっと創業当時から変わることなく、"釜焚き法"を採用しています。
当時は石鹸の種類も多くなく、いわゆる固形石鹸や衣類用の石鹸を同じ製法で作っていました。それらの家庭用石鹸から業務用にシフトしたりしながら続けてきました。
 一般に石鹸といえば、いわゆる固形の、四角だったり円いものだったりする形を想像されると思うのですが、石鹸は一様に化学的には一つの原料で、液体もあれば粉もあり、固形もその一つの形にすぎません。

----その固形の、家庭用の石鹸を作っていたのを業務用にシフトされたのにはどんな理由があるのでしょう?

木村社長 その背景には、大手が大量生産を行っていく中で、価格はどんどん下がって行ったことがあります。早い段階で家庭用だけでなく、業務用の掃除用洗剤で、つまり液体や粉の石鹸を作ってはいたのですが、それを衣類用に改良して作ったりしました。それから生協の安心安全経営の裏方で、OEMを作るということも行ないました。これは、現在も続けて行っています。

----そして、木村さんが2013年に4代目として指揮を取り、オリジナルブランドを提案提供し始めたのが3年前なのですよね

木村社長 はい、91年間のほとんどは、社名の出ているものも一部にはありはするものの、家庭用製品のOEMの売り上げがそのほとんどを占めていました。それは今も変わりません。そんなこともあり、自社ブランドのシリーズを始めることにしたのです。そう決断させるに至らせたのは、原料費の値上がりなどもあり、OEMビジネスで利益を得るのが困難になってきたからということがあります。僕が「木村石鹸」に戻ってきたのが2013年ですが、その7〜8年前から営業利益が下がり続けていて、とうとうゼロになってしまいました。打開策を打つ必要があったわけです。そうして出した答えが、新たな販路を見出すことでした。

----木村社長が考案されたオリジナル商品は「SOMALI(そまり)」シリーズから始まったと聞きました

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木村社長 台所用のアイテムが最初に出し、ハンドやボディ用ソープなどを出して行きました。このシリーズ「SOMALI」を作ろうと思ったのは、自分自身が使いたいと思える洗剤がなかったからです。ドラッグストアやホームセンターなどに並んでいるアイテムには、部屋の中に置きたいと思えるものを見つけられませんでした。家人も同様で、彼女はラベルを外したり、容器を詰め替えたりして使っていました。トイレ用やバス用などのものは、そのまま置いていると生活臭が出てしまいます。結果、隠して使うことになってしまいます。本来、空間を美しくするためのものであるのに、そのアイテムはそこにあるだけで場所や空間を乱してしまうのはどうにも納得がいかないですよね? どんなに美しくしている空間やキッチン周辺であっても、それらを置いた瞬間に残念なことになるのがものすごく嫌でした。海外製品の中には、デザイン的にいいなと思えるものがありますが、日本製では良いと思えるものを僕は見つけられなかったのです。

----こだわりはデザイン面だけではないはずだろうと想像しています

木村社長 石鹸というものの安全性は、究極だろうと考えています。歴史がとても長いからもその安全性は証明されているように、これ以上、安全なものはあるだろうか、と思えるほどに安全なものだと考えています。
石鹸好きと言われる方々はある一定層いらっしゃるのですが、使いたいと思わせてくれるものかと考えた時、先ほどのデザイン性の問題がどうしても出てきてしまいます。概ね、見た目がよろしくない。はっきり言えば、ダサいものがそのほとんどです(笑) 尤も、安全安心の商品は、エコであることを強調したものが多く、素朴さを前面に出しているのも一因だからでしょう。それゆえ、一部の、石鹸を愛して止まないマニアにしか受けないものになってしまっています。もっと気軽に使えるものを、石鹸の安全性はそのままにどうにか届けることはできないのか、と考えた末にこの「SOMALI」シリーズが誕生しました。

----「SOMALI」シリーズへの愛が伝わってきます

木村社長 いわゆる化粧品のように、「○○ようなものを使わない」などとルールはしっかりと定めました。それでいて、手にとっていただきやすいデザインであること。つまり、デザイン面を重視している方々にも届くアイテムにしたかったのです。

----社長のこだわりにこだわられたデザインについてはどのようにして決められたのでしょう?

木村社長 SNSの"Instagram"で2013年からリサーチを始めました。掃除や家事、水周りなどの写真を上げている投稿を参考にしたのですが、市販の洗剤を置いた写真を見ることはまずありませんでした。おしゃれな水周りの写真のほとんどは海外製品が置かれていましたね。雑誌でいえば、「天然生活」(地球丸 刊)や「ku:nel」(マガジンハウス 刊)などのいわゆるライフスタイル誌におけるキッチン特集も同様で、普段使うものなのに写真で見せるのは嫌だと考えている人の多さを改めて感じたのです。空間において主張がなく、馴染むものを作りたい、と。中身=洗剤には自信がありましたから、デザインはただただ手にとっていただけるきっかけになるものになるといいなぁと思っていました。
とはいえ、石鹸ブランドの提案する製品ゆえ、中身にも妥協できないために作る工程が複雑であり、手間もかかるのがネックでした。原価がかかってしまいますから。200ml、250mlのアイテムの相場は100円、200円といったところが主流。ところが、私たちがやろうとしているものを実現させれば、とてもじゃないけれどその価格帯では提供できません。ではどうするかーー製品の安全性を高め、デザイン面でもいいと思えるものを作るという結論に達したのです。

----安全性を高め得るのは、「木村石鹸」ブランドを作り上げたこれまでの歴史とそのノウハウによるものですか?

木村社長 石鹸というものの素晴らしさです。紀元前より続き得る石鹸というものは、つくづくよくできたものだと感じます。繰り返しになりますが、安全性は最上と言えるものですから。まずはその素晴らしい能力を最大限に引き出せるものにしたいと思いましたし、そのクオリティについては自信がありました。世の中に「洗剤」と言えるものは多くありますが、別の洗浄成分を補って仕上げられているものもたくさんあります。しかし弊社は、油を炊いて石鹸を作り、洗浄する場所に合わせたアイテムに仕上げて提供するというスタイルを貫いています。つまり石鹸なのですが、ひとくちに石鹸といってもそれぞれ個性があるのですが、要は脂肪酸の配合率によって異なってくるのです。例えば、泡立ちがいいけれど洗浄力が弱い、洗浄力は高いが泡切れは悪い、などはこの脂肪酸の構成の仕方によって変わってきます。これを石鹸ではない別の成分と組み合わせると安価で安定したものが作れるのですが......。

----「木村石鹸」では新しいシリーズも含めた全てのアイテムで、石鹸の素晴らしさがわかる作り方を続けていらっしゃるのですね

木村社長 石鹸にこだわって作る理由は、ひとえに究極に安全だからです。この安全性は他のものとは比較になりません。昨今では石鹸に代わる新しい成分も続々と開発され、またそれがどんどん進化していることもわかっているのですが、その新しい成分の歴史は100年ほどです。それを使った先については、まだ誰もわからないのです。遺伝的にどうなるのか、アレルギーはどうだ? などを考えた場合、少なくとも僕は、石鹸以外の選択肢は考えられないのです。そこに天然素材を組み合わせて作っています。

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新しいシリーズでありながらも、石鹸のDNAをしっかりと継承している「SOMALI」シリーズは、その発表の場であった展示会で多くの注目を集めたという。シンプルなデザインが包んだ"石鹸"の高いクオリティは、今の時代にマッチし、暮らしに寄り添うものだったからだろう。
  "そざいのかたまり"を表現した「SOMALI」という名は、ウェブを通して一般に広く募り、決めたという。「創業時より受け継がれる『小さくてもキラリと光る会社になれ』という言葉を大事に愛され続ける会社にしたい」と木村社長は言い、「自身が信じられるものを使う方が心地いい。その気持ちを大事にしたい」と続けた。

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使い込まれたタンクの温度計

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工場内に並ぶタンク

木村石鹸工業株式会社
代表取締役社長
木村祥一郎●Shoichiro KIMURA

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1995年大学時代の仲間数名と有限会社ジャパンサーチエンジン(現 イー・エージェンシー)を立ち上げる。以来18年間、商品開発やマーケティングなどを担当。2013年6月にイー・エージェンシーの取締役を退任し、家業である木村石鹸工業株式会社へ。2016年9月、4代目社長に就任。


木村石鹸
072-994-7333

https://www.kimurasoap.co.jp/
https://www.kimurasoap.co.jp/somali/

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